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アルミ蒸着紙とはどういうものですか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:その他

Q:アルミ蒸着紙とはどういうものですか。

A:紙をベースに金属の蒸着膜を堆積させたものをいい、金属箔と同等の外観を有しながら紙の特性をもつことが特徴です。 
 この蒸着膜は薄膜製造技術の一つであり、その製法は塗工、メッキなどのウェット法ではなく真空薄膜形成法のドライ法によって形成されます。
 アルミ蒸着の基本原理は、真空容器の中でアルミニウムを加熱蒸発させ、あらかじめその容器内に置いた基材の表面に凝結させて薄膜が得られます。この基材に紙やフィルムを用いたとき、これをアルミ蒸着紙またはアルミ蒸着フィルムとなります。

 アルミ蒸着紙は、四六判・L判等のサイズがあり連量も55kg~300kgまでのものがあります。印刷は平版印刷又はグラビア印刷がなされます。シート状のものには平版で印刷され、速乾性が求められるので合成樹脂インキやUVインキが使用されます。ラベルの印刷にはグラビア印刷が多くおこなわれます。

 用途としては、まず酒類ビンのラベルに多く使われています。ビール瓶用に最初にアルミ蒸着紙が採用されたのは、昭和60年ころといわれています。その後、各ビール会社もアルミ蒸着紙を採用ことにより、アルミ蒸着紙が貼られたビール瓶が増えています。ビール以外のラベル用蒸着紙としては、ドリンク剤などのラベルにも採用されています。
 包装用としては、冷菓用カップ蓋、冷菓用胴部貼り、高級和洋菓子の一部に使用されています。
 商業印刷として、ポスター、カレンダー、CDジャケット、表紙、ブックカバーなど印刷を行って装飾効果を高めている雑品用途などに使用されるものである。
 その他、カップ麺の蓋材や木工製品用、壁紙、屏風などにも使用されています。

資料提供:㈱竹尾

 

(2004年8月2日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

可食性インキとはどういうものでしょうか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:その他

Q:可食性インキとはどういうものでしょうか。

A:可食性のインキとは食品衛生法に基づいて食用色素(通常のインキでいうと顔料にあたる)を色材として使用し、原材料はすべて食品または食品添加物だけで構成・製造されたインキです。可食性インキの構成は以下のようになっています。

☆着色料(天然色素系)
   赤色系:紅花赤、赤ビート、赤麹、アントシアニン
 黄色系:クチナシ、紅花黄、ウコン、アナトー
  茶色系:カカオ、コウリャン
 青色系:クチナシ青
  緑色系:クチナシ青+クチナシ黄調色、クロロフィル
 黒色系:イカ墨
  着色料としてはユーザーや用途によって合成着色料を使用する場合もあります。
☆樹脂他
  食品用シェラック樹脂、多糖類、安定剤、乳化材、強化剤 他
☆溶剤
  水、エチルアルコール、プロピレングリコール、食用油脂 他

  印刷方法は被印刷体や用途によって違ってきますが、グラビア印刷、パッド印刷、スクリーン印刷等あります。またタマゴに賞味期限やトレサビリティ用のコードを印字しているのはコンティニアスタイプのインクジェットシステムです。タマゴへの賞味期限を印字するインキの着色料にはイカ墨が使われています。

  印刷設備は被印刷体が食品の場合には、当該食品メーカーが自社の工場の中に設置されていることがほとんどです。
  食品に印刷される場合には食品衛生法という法律に合致した食品メーカーの工場内に印刷設備が設置され、衛生環境が守られているところで印刷されています。ですから印刷機も可食性インキ印刷の用途のみという環境のもとで使われているようです。またインキも食品と同様に、保管方法や使用方法に十分留意しなければなりません。
  最近は食品以外のものに印刷したいというご要望も増えてきています。このような場合、可食性インキの使用方法や表示について法律に明記されているわけではないため、インキメーカーとしては現状は保健所や官公庁へひとつひとつ確認し、指導を受けながら製品開発が進められています。
  インキの乾燥は基本的に常温乾燥です。速乾性は比較的ありますが、被印刷体や印刷方法によって乾燥工程を入れている場合もあります。印刷を行う会社が独自で使いやすいようカスタマイズされていることが多いです。

  用途目的は、お煎餅やチョコレート、ガムなどの食品に文字や図柄などを印刷されていることが多いです。健康食品のカプセルにも可食性インキが使われており、他社品と差別化するためにブランドの名前を入れたり識別やトレサビリティのためにコードを入れたりしたいという目的で印字されています。この場合、薬事法に規制されている医療用薬品へ印字するインキとは違います。
  また、コーヒーや紅茶のティーバッグなどへの印字にも使われています。これは直接口の中に入ってしまうわけではありませんが、食品と直接触れたり、食品の中に溶け出してしまう可能性もあるということで可食性インキが使われています。
  日用品では、無くなりかけたときに線のついたものが出てくるティッシュペーパーがあります。青やピンクなどの色がついていますが、その部分に可食性のインキを使っています。それまでは蛍光染料等を使っていたようですが、子供の口や肌を拭いたり、場合によっては口の中に直接入る可能性もありますので安全なインキをということで使われています。

   取材協力:東洋インキ製造㈱グリーンケミカル事業推進部
        http://www.toyoink.co.jp/products/eco2005/natural.html

 

(2006年6月26日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

紙の目の見分け方はありますか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:その他

Q:紙の目の見分け方はありますか。

A:紙は木材の植物繊維からできています。長網抄紙機の回転する網の上に紙料液を流して紙の層を作りますが、この紙料液の流れ方向に平行して木材の繊維が並びます。この一定方向に並んだ繊維の方向を紙の流れ目といいます。そこで漉き網の上を紙料が流れた方向に沿って長く裁たれたものを縦目といい、その反対に機械幅の方向に長く裁たれたものを横目といいます。 

 紙の目は肉眼で見ても分かりません。見分ける主な考え方はには、
①用紙の端を細長く切り取って片側の面に水を軽く付けると内側にカールします。カールの軸になった方向が紙の目の方向となります。
②手で破くと、目に沿ったときはそのまま平行に、目に逆らった場合は平行には破けませ ん。
③寸法表示で短辺×長辺は縦目、長辺×短辺は横目を示しています。
④ワンプの短辺側に表示ラベルが貼られている紙が縦目、ワンプの長辺側に表示ラベルが貼られている紙が横目です。

枚葉印刷紙の目の基準は全紙寸法の長辺に繊維が平行に流れている紙を縦目、短辺に平行に流れている紙を横目といいます。

 本に使われる用紙の目は、本の天地(ノド)の方向に平行になるようにします。紙は湿度の変化によって目と直角になる方向に伸縮するため、本は開閉が柔軟で扱いやすくなり、長期間の使用や保存に耐えられます。反対にノドに直角になる目の紙を使った場合、紙の伸縮が逆方向になるため、背固めされた本の背が弓なりに反り、ノド際にシワが出たり、本の開閉も硬くなって本の背が壊れやすくなります。

 

(2007年7月16日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

インキのハードタイプとソフトタイプの違いはなんでしょうか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:その他

Q:インキのハードタイプとソフトタイプの違いはなんでしょうか。

A:インキには色の元の顔料(15~20%)を紙面まで運ぶビヒクル(70~80%)乾燥促進剤、裏移り防止剤などの補助剤(2~4%)で成り立っています。ハードタイプとソフトタイプはビヒクリによって変わってきます。 
 ビヒクルは固形樹脂(ロジン変性フェノール樹脂)乾性油(アマニ油・桐油・大豆油)石油系溶剤(レジュウサ・灯油・洗い油)等で成り立っています。レジュウサは灯油より粘りが高く・灯油は洗い油より粘りが高い・洗い油は他の油より粘りが少ないものです。 インキの硬さを調整するのは石油系溶剤です。
 ハードタイプのインキはレジュウサ(石油系溶剤)が15~20%入っていて、印刷速度が7,000枚/時以下のときに使用されます。セミハードタイプのインキは灯油のような石油溶剤が20~25%入っていて、印刷速度10,000枚/時前後の時に使用します。ソフトタイプのインキは洗い油のような石油溶剤が25~30%入っていて印刷速度13,000枚/時前後の時に使用します。
 インキの缶のラベルに、ハード-タイプのインキには「H」のマーク、セミハードのインキには「N・M」のマーク、ソフトタイプのインキには「S・L」のマークが付いています。印刷速度とインキのタイプが違っていると色ムラの原因にもなります。
 現在の印刷会社の工場の湿度・温度は管理されていますが、冬場の寒い時期にはすり出しに「S」タイプを、ローラが温まったら「N・M」タイプを使用するのも一つの方法です。しかし、工場内の空調管理は一年中、温度25℃・湿度60%にしておくことが重要です。 

 

(2008年1月21日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

インキにはどんな耐性がありますか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:その他

Q:インキにはどんな耐性がありますか。

A:雑誌や単行本・文庫本、さらにDVDのパッケージや酒のラベル、食品のパッケージなど平版インキで印刷された印刷物がたくさんあります。これらを印刷するときにはそれぞれの目的にあったインキの耐性が必要です。 
 例えば、ポスターを印刷して外に置いておくと色が褪せてしまいます。またベニヤの掲示板に貼られた選挙ポスターの色が非常に変色しているのがありますが、これは印刷するときに適当なインキを選択しなかったために発生するトラブルです。
  耐光性・耐熱性は印刷物が光(主に紫外線)や熱に曝されたときにどの程度変褪色するかを表す指標です。顔料の資料にはブルースケールという形で1~8段階で表示されており、各インキメーカーではそれぞれの基準を設けて評価しています。日本には四季があるので、夏と冬では紫外線の強さが違います。あるインキメーカーではカーボンアークフェードメーターで30時間の場合は夏の30日間に相当すると決めています。
  耐薬品性とは印刷物が酸やアルカリなどの薬品に接触したときにどの程度変褪色するかを表す指標です。代表的なものとしては苛性ソーダ・アルコールがある。特に薬品のラベルに使う場合には苛性ソーダの試験をしてから使うほうがいいでしょう。また、ビールやお酒に貼るラベルでは使った後にアルコールが垂れると色が変わるので、それを防ぐためにアルコール耐性のあるインキを使うことが薦められています。
  耐後加工性とは印刷物がどのような加工をされるかによって与える耐性です。耐パラフィン性、耐石鹸性、耐ビニールコート性などがあります。
  耐石鹸性は石鹸に対する耐性です。固形石鹸は紙の箱に入っているものもあります。そのときに石鹸の成分により箱の表面の印刷が滲むことがありますので、石鹸の箱に使うインキには耐石鹸性を持ったものを使用しなければならなりません。
ノンカーボン紙等の印刷にも耐石鹸性のインキを使います。ノンカーボン紙は上から圧力をかけても下に写らないように減感インキで印刷されている部分があります。減感インキはアルカリ性です。ノンカーボン紙は、圧がかかったところのカプセルが壊れ酸性になって発色するので酸性を抑えるためにアルカリ性のインキを刷っています。石鹸もアルカリ性なので、耐石鹸性が下の絵柄に使われるインキの仕様ということになります。
  耐ビニールコート性とは印刷物がPP貼りやビニール貼りされると裏側には必ず接着剤が着いていますが、その接着剤によってインキが滲んでしまうのを防ぐためのものです。
  Non Impact Print System(以下NIPS)適性はプリンターに使う帳票用紙のインキに使われる適性です。漢字プリンターIBM3800は、印字の際に200℃前後の熱がかかっていました。そのために紙の上に印刷されたインキが軟化したり熱ローラーに付着しりインキ皮膜中の溶剤分が蒸散しその蒸気でヘッドを傷めるという問題が発生しました。この問題を解決するために作られたのが、NIPS適性のインキです。

 

(2008年1月28日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

出版業界でのICタグへの取り組みはどうなっていますか

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:その他

Q:出版業界でのICタグへの取り組みはどうなっていますか

A:出版業界では過去にも様々なかたちで議論・検証されています。製本工程でもICタグを装着しやすいものやしにくいものがあり、すべての本に均等に装着するのが難しい状況は変わっていません。また、コスト面からもその運用にはまだ課題があるようです。
そうした中で最近の検証例では2007年2月に経産省からの委託を受けて業界団体が流通実験をしました。内容は店頭での立ち読みが実際の販売に繋がるかた流通システムの中での検証がおこなわれました。 
  立ち読みの検証はいくつかの大手書店で実施されました。棚にアンテナを仕込み本にICタグを付けて、陳列場所によって立ち読みの回数がどう変わるのか、タイトルによって立ち読みの回数と実際の売れ行きの関係がどう違うのかなど客が手に取った回数がわかるという実験を行ない、ここでは手に取った回数が多いから必ずしも売れるとは限らなかったという結果が出ています。
  ある雑誌に10万部のICタグを装着したときに製本作業上の問題は特になかったようです。流通は、多様な販売/取引条件ということで、同じ本でも買取か返品可能かといった条件をICタグに入れられるので、書店や流通にとしては便利です。
ある新聞に掲載されていた記事の中で、ドイツでは返品が10%だが日本は40%とありました。これはどの業種でも同じだが、返品するには伝票で確認するという手間がかかります。返品を減らせるだけでも手間やコストを減らせる。結果として、業界の課題である返品率の減少へも繋がります。
  万引き防止への期待も大きい。万引きは年間400億円あり、国内売上の約2%に達します。普通の小売だと2%万引きされると利益がなくなることもあります。日本の小売のロスは1兆1,000億円あり、そのうち57%は万引きだという。比率からでは世界1位です。

  出版業界でのICタグの本格導入はまだまだのようですが、確実に進捗しているようです。これからもより多くの実証実験を繰り返し、何らかのかたちで実用化に向けていくことが期待されます。

  

(2008年6月9日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

インクジェットインクの種類と用途について教えてください。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:その他

Q:インクジェットインクの種類と用途について教えてください。

A:インクジェットインクは大きく液体と固体に分けられます。一般的にインクジェットのインクの多くは液体タイプです。液体の中には、インクジェットの色材である染料や顔料がどんな溶媒に溶けているかで水性インクか溶剤インクに分かれます。それ以外にUVランプを照射することによって硬化する特性を持つUV硬化インクもあります。固体インクは、ホットメルトインクと呼ばれることが多く、熱によって溶かされてインクのヘッドから吐出されて被印刷体に定着して固まるタイプです。
  主な色材には顔料と染料があり、水性インクでは顔料のタイプと染料のタイプがあります。水性インクはほとんどが水でできており、その中に顔料と樹脂と助剤が含まれています。一般家庭用プリンターの多くは水性インクタイプで染料タイプがほとんどです。水性の顔料インクは印刷会社でもよく使われており、プルーフで使われる大判のインクジェットプリンターは多くが紙に浸透して乾燥定着をさせる水性の顔料タイプです。顔料は、家庭用のプリンターではあまり使われていません。
  溶剤インクの用途は屋外や屋内のサインに使われるタイプで、あくまでも業務用途で顔料の色材を使ったものがほとんどです。これは溶剤が蒸発して乾燥することで定着する乾燥方式をとっていますが、最近では少なくなってきました。
UV硬化インクは大判プリンターでもUVタイプのプリンターが各メーカーから出ています。これは溶剤を蒸発させて乾燥させるのではなく、インクジェットで印字した後に UV光を照射して乾燥させます。これも顔料タイプです。屋外用看板にも使用されることがあり増えつつあります。
  固体インクはいったん熱で溶けて液体になり、また冷めて固体に戻るもので相変換定着させる方式です。これは少なくなっていますが、ダンボールへのマーキング用として一部メーカーが採用しています。

 

(2009年2月16日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

奥付けは書籍を出版する際に必要なものなのでしょうか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:その他

Q:奥付けは書籍を出版する際に必要なものなのでしょうか。

A:戦前は出版法により奥付けは義務づけられていました。出版法とは、明治時代に出版物の取締りを目的として制定された法律です。検閲などを政府が行えることを定め、明治憲法下で政府による言論統制を推し進める根拠の一つとなっていました。 
 終戦後、GHQが言論の取締りを禁じたこと、日本国憲法第21条において表現の自由と検閲の禁止が定められたことに伴い、本法は有名無実となり、1949年に廃止されました。 それ以降、奥付けは戦前からの名残として習慣的にいれるようになりました。したがって、奥付けは法律的にはなくても問題はありません。
 しかし、実質的には読者にとって、いつ誰が出版し、執筆者は誰でどこの印刷会社で印刷されたのか等、分からないと困ることもあります。したがって、読者のことを考えると奥付けは出版する上では必要な掲載事項と考えてもいいでしょう。特に初版の発行に際して年月日は重要です。これは、本の著作権が発生した期日が表記によって明確なものになるからです。英語でcolophoneといわれており、諸外国でも習慣的に付けられています。

 

(2009年3月2日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

インクジェットインクの耐性にはどんなものがありますか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:その他

Q:インクジェットインクの耐性にはどんなものがありますか。

A:インクジェットインクに求められる代表的な耐性には耐水性、耐マーカー性、耐光性、耐ガス性、耐擦過性があげられます。 
 耐水性とは印字面の水に対する耐性のことをいいます。出始め頃のインクジェットでは、印字物を屋外に置いていたときに小雨が降ってくると印字物が流れて読めなくなることがありました。その他、会議資料に冷たいペットボトルを乗せただけで、その部分が読めないようでは、使用に耐えないことになります。そこで各メーカーでの研究開発が進んで基本染料の改良がなされてきたこと、顔料インクが採用されてきたことなどさまざまな改良がなされて今日に至っています。今では滲むことは少ないようです。(電子写真ではお茶をこぼしてもシミは残りますが読めなくなることはないです。)
 耐光性は印刷物の同じように光によって退色しにくい性質です。文字中心の印字物ではあまり気にされませんが、特に写真品質プリントで耐光性の低いものは避けられる傾向にあります。
 耐ガス性とは色あせの原因となるガスとしてオゾン、窒素酸化物、硫黄酸化物が家庭やオフィスに存在しているとされていますが、これらのガスに対する耐性です。
 耐マーカー性とは印字面に蛍光ペンでマークをしたときの耐性です。印字物の重要ポイントにマーカーで印をつけることは日常的なことです。このときに重要ポイントを蛍光マークしたおかげで読めなくなるのでは使い物になりません。ちなみに日本で販売されている蛍光ペンより欧米で使用される蛍光ペンのほうがインクジェット印字物に対するアタックが強い傾向があるようです。
 耐擦過性とは印字表面の「こすり」に対する耐性です。用紙表面に顔料を残すことで画像形成している顔料インクジェットでは、何の工夫もしないと表面を「こする」だけで簡単に表面の顔料が取れてしまいます。後加工時のこすれや使用時のこすれに対する耐性を持つことが、文書印字ではとくに要求されます。また、写真印刷においても大きなイン事物を丸めて搬送するような場合にこすれに対する要求があります。
 耐ガス性、耐マーカー性、耐擦過性については搭載インクの改良は続けられています。出版・商印などの印刷インキであれば用途ごとにインキの種類が異なり必要なものを選ぶことができますが、インクジェットでは用途別インクはありません。 

 

(2009年3月2日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

電子写真方式の印刷でのトナーの耐性について

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:その他

Q:電子写真方式の印刷でのトナーの耐性について

A:トナー1粒の大きさは数ミクロンあり。このうち印刷インキは顔料が全体の約20%を占めていますが、接着樹脂というバインダーが80~90%を占めています。電子写真の場合、顔料は5~10%で接着樹脂が多いことがトナーの特長です。その他に裏移りを防止するために離型剤も入っていますが、ワックスが入っているものと入っていないものもあります。 
  電子写真方式は静電気を利用して画像を形成する方式のため、帯電が大きな特性要因となります。それを達成するためにいろいろな工夫がされており、例えば帯電制御剤なども入っている場合もあります。最近は流動性や転写性・ドラムのクリーニング性を確保するために外部の添加剤が入れられており表面に細かいチタン等が着いています。

  平版インキはいろいろな分野で使われ様々な耐性がありますが、電子写真方式では主に社内利用と普通の文書等を想定しているため様々な耐性には対応していません。電子写真のトナー像を保つには耐光性と可塑性とドキュメントオフセット性の3つの要因があります。
  耐光性とは、オフセットインキと同じように紫外線で劣化することをいい、通常のトナーよりも劣化しにくいものをいいます。トナーの耐光性はインクジェットのそれより性能が良く、オフセットインキのそれと同等以上です。これはポリマーが入っているためです。しかし、長期間、外に出しておいて使えるというものではありません。例えば、屋外に放置しても数ヵ月は褪色しないことをメーカーでも試験していますが、これはあくまでも実績ベースです。
  可塑性とは、塩化ビニールやアクリル樹脂に含まれている可塑剤とトナーの大部分を占めているバインダーの樹脂がミクロに混ざり合うことによりトナーの樹脂が軟化することです。トナーが軟化すると、トナー像が接触している物質に付着して汚くなってしまうことがあります。可塑剤は、主に塩ビを中心としたプラスチックを軟らかくするために用いられ、大部分の可塑剤は酸とアルコールを合成したエステル化合物です。塩ビの書類フォルダーやデスクマットにも使われていて、これらとトナーで作られたプリントが直接触れるとトナー像が軟化して付着してしまいます。
したがって、トナーを使ったプリントは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等、可塑剤を含まないものや塩化ビニールでも可塑剤を制限して付着を防止した製品を使うことが勧められています。
 可塑剤の他に、有機溶剤がトナー像を溶かすことがある。もともとバインダーがポリマーのため溶かすおそれがあり有機溶剤で出力物を擦ったり有機溶剤にさらしておくと、同じようなことが起こる。保存するときには、可塑剤や有機溶剤など化学的な影響に注意しなければなりません。
  ドキュメントオフセット性とは、何枚も重ねて荷重をかけていたり暑いところに置いておくと、トナーが軟化して色移りすることです。例えば車の中などは夏場になると60℃とか70℃になります。そうした場所に放置すると、ばりばりと音がしてトナーが移ることがあります。最近では電子写真で写真アルバムを作ることがありますが、そうした負担に注意しないとドキュメントオフセットが発生することがあります。長期保存するためには、高温多湿を避けて荷重がかからないようにするということが必要です。

 

(2009年6月1日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)