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電子受発注の中で、消費者の重大な過失とはどの程度までのことを指すのでしょうか?

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:知的財産権

Q:電子受発注の中で、消費者の重大な過失とはどの程度までのことを指すのでしょうか?

A:例えば商品を「1個」買うつもりだった消費者が、パソコンの操作ミスにより「11個」 買うとウェブの申込ページに打ち込み、その間違いに気づかないまま 申込み(送信)し、商品が発送されて誤りに気づいたとします。 
 電子契約法(電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律)が無い頃は、この消費者は、民法95条により、錯誤による契約無効が主張できますが、同条には但し書きで例外があり、この消費者のミスに重大な過失があれば契約無効の主張はできません。この場合、契約を有効としたい事業者側は「重大な過失があり契約は有効だ」と主張できます。
ここで、「重大な過失」とは、「重い不注意」つまり「通常ちょっと注意すれば間違いに気づく程度だった状態」をいいます。 実際、「重大な過失」かどうかは、個別事情によってケースバイケースで判断されるため、例で記載したパターンが一律「重大な過失」とはいえません。しかし、クリックミスや数字の打ち間違いが重大な過失と認められるケースも従来あり、事業者側の立場としては「重大な過失があった」と主張することになるため、法的に不安定な状態でした。
 電子契約法施行後 前述のような特に消費者側にとっての不安定な状況を払拭するため、電子契約法が制定されました。この法律は、事業者側が消費者の申し込み内容など意思を確認するための適切な措置を設けていない場合には消費者側を保護するもので(電子契約法3条)、仮にこの場合、消費者側に「重大な過失」があっても、民法95条ただし書の例外が適用されず、事業者側は消費者側の重過失を問えないことになりました。
 逆にいうと、事業者側が消費者の申し込み内容などの意思を確認するための適切な措置を設けていれば、従来どおり、契約有効を主張する事業者側は錯誤無効を主張する消費者に「重大な過失」を主張することになります。
この場合、事業者側が主張する「重大な過失」としては、例えば「システムで申し込み内容の確認を求めており、ちょっと注意すれば誤りに気づくようになっているのに、これに気づかなかった」点等と考えます。

※民法95条
 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重  大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

※電子契約法3条 民法第九十五条 ただし書の規定は、消費者が行う電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示について、その電子消費者契約の要素に錯誤があった場合であって、当該錯誤が次のいずれかに該当するときは、適用しない。ただし、当該電子消費者契約の相手方である事業者(その委託を受けた者を含む。以下同じ。)が、当該申込み又はその承諾の意思表示に際して、電磁的方法によりその映像面を介して、その消費者の申込み若しくはその承諾の意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置を講じた場合又はその消費者から当該事業者に対して当該措置を講ずる必要がない旨の意思の表明があった場合は、この限りでない。
   一  消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該事業者との間で電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を行う意思がなかったとき。
  二  消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示と異なる内容の意思表示を行う意思があったとき。

 

(2007年10月1日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

ノーカーボン紙に減感インキを印刷すると給水ローラに絡みやすくなりますが、対策はありますか

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:オフセット印刷

Q:ノーカーボン紙に減感インキを印刷すると給水ローラに絡みやすくなりますが、対策はありますか

A:減感インキは絡みやすいインキです。乳化したインキは粘りが無くボソボソした感じになり、ツボから出たインキはローラ上で粘りがないためインツボに戻ろうとする力が無くなります。インキローラ上で新しいインキとの交換がやりずらく、さらにインキ乳化が進みます。それがローラ上のインキ余りになって給水ローラの端に溜まり、またブランケットの端についてしまいます。 
 対策として版面の水上がり量をできる限り少なくすることですが、版面の水上がり量が見ずらくて調整が困難です。水量を減らして版面が乾いて汚れを発生させます。次に水量を徐々にあげて版面から汚れが取れたところが水上がり量の最適量と考えます。
また、エッチ液の入れ過ぎも考えられます。エッチ液には親水性高分子が入っておりエッチ液を増やすことは、更にインキ乳化を促進します。減感インキの印刷時は通常のエッチ液量を少なめにすることです。または、エッチ液を他の種類に換えてみるのも一つの方法です。

 

(2008年3月24日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

マンガ雑誌の本文の紙に色々な色が使われていますが,何か意味がありますか?

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:後加工

Q:マンガ雑誌の本文の紙に色々な色が使われていますが,何か意味がありますか?

A:週刊のマンガ雑誌に使われている表面がザラザラした用紙のことを印刷せんか紙といいます。白だけでなくオレンジやグリーン、イエローといった色のついた紙が多く使われています。
この印刷せんか紙は非塗工紙の中でもグレードは低い部類に入ります。
この印刷せんか紙は、古紙から作られており新聞古紙を30~40%と、印刷工場や製本工場から出る裁落としを原料とするのが一般的です。印刷せんか紙には色がついているものが、殆どです。
色がついている理由は大きく二つあります。
第一に製紙メーカーの側の事情があります。印刷せんか紙は新聞古紙を多く含んでできていますが、脱墨技術が進歩したとはいえ、完全に脱墨することは困難であり、どうしても黒ずんでしまいます。真白にはできないということです。これをカバーするために用紙に色をつけるようになりました。
第二に、出版社側のコストの面です。以前はマンガ本もすべて白い紙を使い、何種類かの色インキで印刷していたようです。しかし、色数が多いと制作コストが膨らみます。そこで、墨インキ一色で何色かの印刷せんか紙を組み合わせることにより本に変化をつける工夫をしました。
ここで、製紙メーカー、出版社のメリットが一致した結果マンガ雑誌は殆どのページが色用紙で占められています。
また読者にとっても、同じ色の用紙だと中間まで読んでいくと飽きてくるかもしれません。読んでいるうちに、このモノクロのワンパターンがもたらすマンネリを緩和する、メリハリをつけるといった意味があるようです。

 

(2001年11月19日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

縦目のA4広報誌を発注していますが,横目にしてもよいかのでしょうか?

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:後加工

Q:縦目のA4広報誌を発注していますが,横目にしてもよいかのでしょうか?

A:縦目のA4広報誌を発注していますが,印刷会社から横目にしてもよいか,と聞かれたという質問がありました。 用紙は木材の中の植物繊維からできています。紙の目とは、木材の中にある植物繊維の流れている方向のことをいい、日本工業規格で定められた用紙の長辺に平行に目が流れているものを縦目、短辺に平行に目が流れているものを横目の紙といっています。
書籍にしたときには、左右に開きますから紙の流れ目は上下に流れていなければなりません。つまり必ず本のノドに平行になっていなければなりません。
上記の質問の場合、おそらく今までクライアントの方はA4仕上がりの広報誌が縦長の状態で、その結果として縦目になっている、だから「従来は縦目で」といっていると思います。
逆に、もしその広報誌の仕上がりが横長の状態であるなら、その紙は横目の状態になっていなければなりません。
印刷業者が「横目でやってもいいか」といったのは、あくまで製造上での話しだと思います。発注側としては仕上がりが横長でも縦長でも結果として書籍のノドに平行に目が流れていれば問題ありません。
例えば仕上がりがA4版縦置きの広報誌の場合、その広報誌を印刷するには、菊全の印刷機(A全版でもいい)で印刷する場合は菊全横目の用紙を使用しなければなりません。また、菊半裁(A半裁でもいい)の印刷機で印刷する場合は菊半裁縦目の用紙を使用しなければなりません。
印刷業者は、全版の原紙寸法の状態で紙の目のことをよくいいますが、印刷業者以外の方は仕上がりの状態で目のことをいう傾向があると思います。
上記の場合は、印刷業者とクライアントとの、紙の目に対する考え方の違いの表れだと思います。こういう場合、印刷業者はあくまでお客さんの考えを理解することを心がける事がトラブル回避へもつながると思います。
ちなみに、紙の目がノドに直角の状態(逆目)の場合、最初のページは開けても中のページは開けなくなり本の機能を果たすことはできません。

 

(2001年11月19日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

無線綴じ本の小口に凹凸ができますが、どうしてでしょう?

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:後加工

Q:無線綴じ本の小口に凹凸ができますが、どうしてでしょう?

A:無線綴じの本ですから、製本してから三方断ちします。三方断ちした直後は当然に小口部は揃っています。しかし、その後の保管の仕方によっては、少々波打つこともありえます。原因は、湿度の具合によることが考えられます。
 印刷工場では、用紙のゆがみを防ぐために常に、湿度を55~60%前後に保っています。それは、用紙が55~60%前後の水分を含んでいるため、それよりも少なくなると用紙は縮み、多くなると広がります。
 本の保管も、湿度の変化が大きい情況におかないことが大切でしょう。
用紙がゆがむ方向は、目に平行に広がりが大きく、目の方向には広がりが小さいです。したがって、マニュアル本は小口に平行に目が走っていますから小口部分が波打ちが大きく、天地方向は少なくなります。

 

(2001年11月26日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

抗菌コートとは何ですか?

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:後加工

Q:抗菌コートとは何ですか?

A:抗菌コートとは、各種の抗菌剤を、オーバープリント用インキまたは染料に分散させ、印刷加工製品にコートすることによって、低コストで抗菌効果機能を付加させる技術です。 
 従来の抗菌処理製品は、プラスチックに抗菌剤を練り込んだものが多く、小ロットものへの対応はコスト高になっている。この技術は、印刷後のオーバープリントや、塗料のコートで抗菌効果をださせるものなので、プラスチック製品だけでなく紙製品にも応用可能です。
 製作方法:通常のオフセットやグラビアで印刷されたものの表面に、抗菌ニスをオーバープリントまたはコーティングで加工処理します。

 

(2001年12月24日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

中とじ製本のホッチキスの間の寸法には規格があるのでしょうか?

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:後加工

Q:中とじ製本のホッチキスの間の寸法には規格があるのでしょうか?

A:特に決まった規格はありません。しかし、ランダムに綴じているわけではなく一応の目安はあります。
 一つの考え方をご紹介します。上のホッチキスの中央から下のホッチキスの中央までの距離が、書籍の天地寸法の2分の1になるようにして、天から上のホッチキスの中央までが天地の4分の1、下のホッチキスの中央から地までの距離が天地の4分の1となるように機械を設定することが多いです。この寸法で綴じれば可も無く不可も無く、バランスよく製本できます。 
 これは、あくまでも基本的な考え方であり、この寸法に拘る必要はありません。多くの場合は、出版社から製本会社へ具体的な指示がなされています。

 

(2002年1月21日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

ラミネートとはどんなものですか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

Q:ラミネートとはどんなものですか。

A:ラミネートとは、印刷物やデジタル出力紙等の保存性を高めるため、ラミネートフィルムを印刷物の両面、又は片面に貼ることです。使用する基材フィルムの光沢性により、付加的に高級感がえられます。頁物、表紙のPP貼りは良く知られるところです。 

 【ラミネート加工するための目的】
  まず出力紙の染料、顔料トナーインキの退色を防止することです。変退色要因の酸素(オゾン)、湿度、光をラミネートフィルムが遮断します。次に、ラミネートフィルムの光沢性により、インキ等では出すことができない高級感を付与することができます。また、紙や印刷インキの耐衝撃性や引裂強度を向上させ基材の補強をはかるという表面保護の役割があります。
  また、紙面とインキ面との接着力が弱い出力紙で、ラミネートフィルムを貼ることにより、耐磨耗性を向上させることができます。

 【ラミネートフィルムの種類】
  ラミネートフィルムの基本構成は、基材フィルムA/接着層Bで構成されます。
(1)Aが12μ/Bが20μ、トータル32μのラミネートフィルムを薄手フィルムと呼び、ポスター等展 示用に使用されています。
(2)Aが50μ/Bが50μ、トータル100μのラミネートフィルムを中手(なかて)フィルムと呼び、メ ニュー等に使用されています。
(3)Aが75μ/Bが75μ、トータル150μのラミネートフィルムを厚手フィルムと呼び、下敷き等に使 用されています。
(4)光沢加工用のPPフィルムは、AがOPP15μマットと光沢の2種類、Bが12μ、トータル27μが標準 的です。

 【加工方式】
  ロール式とパック式の2種類のラミネーター(ラミネートフィルムと印刷物を貼り合わせる装置)があります。ロール式はラミネートフィルムが巻物状となっていて、被ラミネート物は、枚葉・長尺物でもラミネート可能で大量生産型です。使用できるフィルムは薄手、中手、厚手、PPフィルム何れも可能です。
  パック式は、枚葉専用で使用フィルムは中手のみで、枚葉のフィルムの接着面を2枚重ね合わせて、ラミネート時に被ラミネートのズレを防ぐために間にシールを挟んでから被ラミネート物を中に入れてラミネーターに通す方法です。この作業は手動で行ないます。最大A3判迄ラミネート可能で、少量生産型のラミネーターです。

 【環境問題】
  印刷物は、いずれは廃棄物として焼却されますが、その際にダイオキシンが発生するかどうかが問題になります。
  ラミネートメーカーは、官庁のグリーン調達が進む以前からこの問題にいち早く取組んできており、オレフィン系樹脂などのエチレン共重合体等を原料としたフィルムを開発・使用しています。したがって、オレフィン系樹脂を使用したラミネートに関してはダイオキシンが発生することはありません。
  ダイオキシンを発生させる物質は、塩素・臭素・フッ素・ヨウ素などのハロゲン化合物です。例えば、塩素系の製品である塩ビ包材などを可燃ゴミとして焼却すると塩化水素ガスが発生します。それに生ゴミから出る水蒸気と混ざることで、可燃性物質も不燃性の塩化水素ガスの中で不完全燃焼しダイオキシンが発生しやすくなりますので、塩化ビニール、塩化ビニリデン等の塩素系有機化合物を原料にしなければ、ダイオキシンは発生しません。

 資料提供:東京ラミネックス(株)

(2002年7月1日)
(印刷情報サイトPrint-better・「ナンデモQ&A:後加工」より転載)

 

>>よりわかりやすい(初心者向け)の説明はこちら
高級感や保存性をアップする「ラミネート加工」とは【印刷基本のき】

製本用接着剤の種類と今後の動向はどうでしょうか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:後加工

Q:製本用接着剤の種類と今後の動向はどうでしょうか。

A:【製本用接着剤】 
  製本用接着剤として使用されているホットメルト(hot melt)接着剤は、通常はチップ状の固体です。一般的には、約180℃の熱を加えて溶解させて、本の背の部分に塗布します。そこに表紙を貼り付けて、プレスによって形を整えて製本します。熱を加えると解けて流動性が発現し、熱が冷めることにより固化する即硬化型の接着剤です。 ホットメルト接着剤の成分には、ベース樹脂として熱可塑性ポリマーのEVA(エチレン酢酸ビニール共重合体)樹脂が使用されています。その他に、粘着付与剤やワックスや安定剤が配合されています。

  もともと紙器関連で使用される接着剤は、デンプンを水に溶かしたデンプン糊が主流でした。その後、デンプンに代わって、合成樹脂を主成分にしたエマルジョン型接着剤が開発されました。エマルジョン型接着剤によって、デンプン糊に比べて乾燥性を向上させることが可能になり、製造ラインのスピード追随性の要求される工業用途で普及しました。更に、ホットメルト接着剤の開発により高速接着が可能になりました。合成樹脂を水に分散させたエマルジョン型接着剤に比べ、ホットメルト接着剤は冷却により接着性が発現するため、スピード追随性は向上します。 製本用としても、かつてはデンプン系接着剤が使用されていました。その後、スピード化によりエマルジョン型接着剤に置き換わり、更に一部の製本を除いてホットメルト接着剤を使用することによって、ラインスピードの向上を実現してます。

 【ホットメルト接着剤の種類】
1. 反応性ポリウレタン系ホットメルト接着剤(PUR-FECT Lok MR95S)
  反応性ポリウレタン系ホットメルト接着剤は、ポリウレタン系の樹脂をベースにしています。Poly Urethane Reactiveの略で『PUR』と呼ばれています。この接着剤は、空気中の湿気や被着体(紙)の中に含まれる水分と反応して硬化します。この反応は不可逆的架橋反応であるため、通常のホットメルト接着剤とは異なり、反応終了後は加熱しても溶剤に浸しても、再び溶解することはありません。PURは建築用パネル、流し台など耐熱性を要求される用途で使用されていましたが、ウレタン樹脂が非常に柔軟であることから、製本用途にも使用されるようになりました。ヨーロッパやアメリカではEVA系のホットメルトに代わって、PURの普及が急速に進んでいます。日本の製本分野においては、10年程前から無線製本にPURが使用されています。日本の市場では、無線製本以外に、独特のアジロ製本があり、アジロ製本への対応が難しいとされておりましたが、最近ではPURの開発も順調に進み、7000冊/時程度のスピードでPURのアジロ製本が行われております。

  2. エマルジョン&ホットメルト 2ショットシステム(TWINFLEX R)
  ヨーロッパで開発したシステムで、第一ショットとしてエマルジョン型接着剤を塗布し、第二ショットとしてホットメルトを塗布する2ショットの製本方法です。
  エマルジョン型接着剤とEVA系ホットメルト接着剤の相性は悪く、一時的に接着しても、その界面で剥離が発生しやすいものであります。しかしながら、このシステムに使用されるエマルジョン型接着剤は特殊なものであり、ホットメルト接着剤と反応することにより強靭な仕上がりが得られます。ヨーロッパでは無線製本だけでなく、上製本の下固め用にも使用されております。上製本に使用する場合は、この接着剤が強靭であるため、糸かがりをなくして無線上製で製本することが可能であり、トータルコストダウンに寄与しております。
  エマルジョン型接着剤による下固めは、エマルジョンの初期強度発現に合わせて低速のラインスピードで生産し、養生時間も必要です。この2ショットシステムを使うとホットメルトの固化速度での生産が可能で、養生時間も不要です。無線ラインでの下固めから直結で丸み出しラインに本を流すことができるので、工程時間を極端に短縮することが可能です。残念ながら日本での実績はまだありません。

3. 低温塗布型ホットメルト接着剤(クールバインド234-1304)
  低温塗布型ホットメルト接着剤は、120℃で塗布できる接着剤です。塗布温度が低温のため、ホットメルトの固化スピードが早く、揮発成分が少ないため機械の汚れが減少し作業環境が改善につながり、低温により安全性も向上します。
  従来の180℃で溶解するホットメルトを刷本に塗布すると紙の中の水分が急速に蒸発して、紙にしわが発生したり、ホットメルト接着剤の皮膜の中に気泡が入り込み、皮膜に巣が発生しやすくなります。120℃という低温で接着剤を塗布することにより、このようなトラブルを抑制することができます。また、機械周りの臭気、汚れも低減できますし、機械のメンテナンスの点でも利点があります、低温塗布型ホットメルト接着剤は、今では製本分野だけでなく、包装用ホットメルトを含めて、世界的なトレンドになっております。専用の塗布装置も不要で、現行の生産ラインのままで180℃塗布のホットメルト接着剤からの置き換えが可能です。

4. 耐溶剤ホットメルト接着剤(インスタントロック MV152)
  印刷に使用されるインキには溶剤が使用されています。最近の短納期の流れの中で、その溶剤を揮発させるに十分な養生時間が得られず、印刷物の中に溶剤が潜んだ状態で製本されるケースがあります。この場合、製本した後に印刷物の中に潜む溶剤がホットメルト接着剤を劣化させて本が壊れるというトラブルを引き起こします。最近では、環境対応のため大豆インキが使用されるケースが増えましたが、大豆インキに使用される溶剤が揮発しにくい性質をもっており、ホットメルトの劣化のトラブルが起こりやすくなったと言われております。
 耐溶剤ホットメルト接着剤とは、溶剤に強い原料を使用することにより、溶剤の影響を受けにくい性質を付加した接着剤です。しかしながら、100%の耐久性があるのではなく、劣化に至るまでの良好な状態を長期間維持することができるというレベルのものです。いずれ劣化して壊れる可能性があることは否定できません。100%の耐久性を求めるのであれば前述のPURを使用するしかないです。

5. 汎用ホットメルト
 これは通常のホットメルトの総称であります。約30年も前から使われているものです。ベースが熱可塑性ポリマーで、その中でEVA(エチレン酢酸ビニール共重合体)が主成分です。

 【今後の動向】
  世界的にみると、反応性ポリウエタン系ホットメルト接着剤(PUR)、低温塗布型ホットメルト接着剤への移行の動きが顕著にみられます。  
  しかし、日本では現在使用されているホットメルトのほとんどが一般的な汎用のホットメルトのままです。その理由は汎用のホットメルトの方が当然のことながら価格が安いということです。日本では出版不況の流れの中で製本単価も下落を続け、製本関連業で利益を上げてゆくことは年々難しくなってきております。結果的に、ホットメルトについても見かけの価格を追い求める傾向が続きました。しかしながら、本当に単価の安いホットメルトを使う方が低コストなのかどうかを考えると、そのやり方は必ずしも正しいとは言えない場合もあります。それは、一冊あたりに使用する接着剤費用や接着剤が関わる部分の経費を計算すると、ホットメルトの見かけの値段だけで判断するのは必ずしも正解とは言えないからです。
  欧米ではユーザーだけでなく、接着剤メーカーもユーザーでのトータルコストダウンを試算・提案するのに積極的であります。汎用のホットメルトと比べて、1冊あたりの塗布量がいくらになるのかということから、ホットメルト関連部分でのコスト試算を細部に渡って数値化して比較しています。塗布量の計測もただ単に塗布厚で比較するのではなく、1冊あたりに使用するホットメルトの重量を計測して数値化しています。ホットメルトによっては紙に染み込むような性質のものもあるため、このようなホットメルトを使用すると単価は安くても使用量は多くなるので結果的にコストアップになります。更に、反応性ポリウレタン系ホットメルトの場合、それによって得られる付加価値や回避できる損失を数値化します。低温塗布型ホットメルトの場合も、エネルギーコストだけではなく、熱安定性に起因する汎用ホットメルトのマイナス点、低温塗布によって得られる紙のシワ、ホットメルト層の気泡などのメリット、機械汚れや機械のメンテナンスなど具体的な点を加味して比較しています。

  こらからの日本の方向としては、紙のリサイクルに適した難細劣化ホットメルトとしての条件を兼ね備えているということを前提として、付加価値の高いものが導入されてゆくことになると思われます。
  難細劣化ホットメルトは、古紙再生の時に脱墨原料の離解に使用されるパルパーというミキサーの中で、ホットメルト接着剤が細劣化せず除去できるという条件を満たしたホットメルト接着剤のことです。PURは難細劣化ホットメルトの条件を満たしておりますし、低温塗布型ホットメルト接着剤や耐溶剤ホットメルト接着剤や汎用ホットメルト接着剤も試験をクリアすれば、難細劣化ホットメルト接着剤として認可されます。このような認可をしているのは日本だけであり、欧米でも導入されることはないと思いますが、今後はこのような条件をクリアしつつ、さらに付加価値のある接着剤の開発と付加価値のある製本に向けて試行錯誤をしてゆくことが必要であると考えております。

 取材協力:日本エヌエスシー(株)
       TEL 03-3504-9680

 

(2004年5月10日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

糊綴とはどういう綴じ方ですか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:後加工

Q:糊綴とはどういう綴じ方ですか。

A:折りと綴じをインラインで行い、綴じ部分を糊を使用する方法を糊綴じといいます。糊そのものは水性系のボンドが主体で紙質によってはホットメルトが使用されます。糊付製本は折機メーカーが折機の中で中綴じ製本ができないかということから考えられており、折機の中でフィニッシュできる製本機ということで開発されたものが糊付製本機です。  
 機械は25年以上前から開発されていました。当初、エマルジョン装置は国産では市販化されておらず、糊付装置も折機メーカーが自作したそうで、点滴型というタンクを上に吊り下げて重力の力で糊を下げるという方法でしたが、現在では国内外の糊付装置メーカ-の物を使用し方式もタンクで真空圧にして点糊・棒糊のどちらでも圧力で吹き付ける方法になっています。
 現在の糊付製本機は折るだけでなく貼ったり重ねたり仕上げ断ちする機能が付いています、その折・丁合・綴・断裁仕上げを一貫工程する物が糊綴機です。

  糊付製本で単純なものとして直角2度折り8ページの冊子があります。一回折ってもう一度折るという工程の中で糊注しをします。刷り本が搬送されて折り目になるであろう部分に機械の先端部分に取り付けられているボールペンの先のような形をしているノズルから糊が噴射され、この糊注しされる距離はコントロ-ラ-にプログラムされています。そして二つ折りされると糊が付着された部分が接着します。その次にまた折られて天地小口を断裁すると8ページの冊子になります。
  これが通常の針金の8ページの場合、一回折り機で折ったものを広げ鞍がけをしてステッチする方法と、ペラを2枚給紙し2枚重ねに丁合いしてステッチして折って小口を断裁という方法とがあります。
  また、16ページ折の場合は加工方法が3パタ-ン有りますが、代表的な物は糊付けをして折り、一度折った刷り本の90度向きを変えて糊付けをして折るというように機械そのものが特殊仕様の機械で折丁がつくられます。
  これらは1枚のシートから作る方法です。しかし、顧客の要望から別々の折り丁と表紙を同じラインで出来ない物かとの要望に対応した物が糊綴機です。
こうした糊綴機には鞍が3鞍から6鞍あり、糊貼りされた折本を更に糊付けして貼りあわせながら折り重ねて、最後にチョッパーで折られて三方断裁し仕上げるというように多ページにも対応できます。
  そして糊綴機は針金綴じでは難しいとされたものが簡単にできるようになりました。例えば表紙を開くと中は観音折にしておくことができ、観音折が左右に現れるというダブル両観音ができます。針金綴じではできないとはいわないまでもやるには難しいです。糊綴じの用途としてはカタログ関係が圧倒的に多いです。

 取材協力 ㈱正栄機械製作所
http://www.shoei-folder.co.jp

 

(2006年2月6日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)