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エーデルグラムとは何でしょうか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:エーデルグラムとは何でしょうか。

A:【概念】 
  エーデルグラムとは、特殊レンズシートを印刷物の画像の上に重ねると、印刷物の絵柄の中の隠し画像を浮かび上がらせる技術をいいます。かまぼこ形状の特殊レンズを用いてモアレ現象を利用しています。もともとは、株券・商品券・約束手形などの金券の偽造防止や認証用に用いるために大日本印刷㈱が独自に開発したものです。
  基本的には、特殊レンズシートと印刷物がワンセットになって使用されて、今では出版向けに多く利用されています。

 【製造方法】
  印刷版式は普通の平版です。以前は単色が主でしたが、カラー画像にも潜像として文字を埋め込んだらどうなるのかということで開発されました。
  基本的には、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック(以下CMYK)の4版ありますが、そのうちの埋め込みたい画像を1版だけに加工します。
  どの版に埋め込むかということは、特に決まりはありません。埋め込みたいところと埋め込める画像によりますが、例えば画像の赤い部分の中に浮かび上がらせたいなら、マゼンタの版に埋め込むと見えやすくなるように、どの版を使うかは絵柄によって違ってきます。

  基本的に、浮かび上がる画像は、印刷物上では万線状になっています。パソコンのソフトで浮かび上がらせる画像を線に分割する技術があります。
  シート用のレンズは主に0.3ミリピッチのかまぼこ型のレンチキュラーレンズを使っています。印刷物上では、約0.05ミリピッチの細かさで万線を作り、埋め込みたい画像は万線に対して網点を半波長ずらしており、0.05ミリピッチでずれていることになります。
  他の画像のところは網点が通常の印刷物と同様に並んでいますが、潜像の版だけ万線で濃淡を表現しています。したがって、これにレンズをあてると、ずれたところが浮かび上がってくるというわけです。
  画像のスクリーン線数は、すべて対応できます。高精細印刷にも対応可能ということですが、実績がないのでこちらのほうはあくまでも理論上ということになります。
  スクリーン角度の問題で、モアレが出る出ないというのがありますが、そこは出力機を調節しながらモアレがでないような状態で出力するということになります。

 【特殊レンズシート】
  万線シートのピッチや厚みによって、素材もさまざまです。通常、0.2ミリピッチというのが一番細かいもので、0.5ミリピッチまであります。ピッチさえ合えば素材や厚みも気にする必要はありません。

 【用途】
  現在、エーデルグラムが使用されている印刷物では、小学生以下の子供向けの雑誌類など教材関係に多く使われています。子供が遊びながら、学べるというのが大きな理由です。
  例えば、動物の名前だとか、動物の骨があって骨格がどうなっているかなど、ゲーム感覚で、普通の雑誌では使えないような道具を使って学習できます。また、英語教材などで答えが潜像画像として埋めこまれているというような方法で学習の手段としても使われています。

 【今後の展開】
  今後は、DMへの活用も考えられます。基本的にはDMを受け取った人がDMを持参してお店に行き、そこでレンチキュラーを重ねて確認してもらって懸賞になる等、来店を促すようなツールとしても考えられます。 
  また商品は模造されるケースがあります。模造される毎に刷り替えていたのでは、非常にコストが高くなってしまいます。こういうときに潜像を埋め込んでおけば、レンズをあてるだけで、自分のところのものだと確認できます。ランニングコストが安く簡単に検証できることになります。

  本来は証券の偽造防止というところから出発したエーデルグラムですが、株券・商品券・約束手形などの金券には殆ど利用されていません。証券は機械で認識させることが多く、また見て分かるようなホログラムが印刷されています。
  それに商品券を確認するのにレンチキュラーレンズを1個づつ店のレジに置くと、混雑時のお会計が大変効率の悪いものになりますので、日常生活で使うには向かないでしょう。

   取材協力:大日本印刷㈱ URL http://www.dnp.co.jp/index_j.html
 

 (2003年10月13日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

駅・デパート・スーパー等の床や壁に貼られている色々な印刷物はどうやって制作されていますか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

 

Q:駅・デパート・スーパー等の床や壁に貼られている色々な印刷物はどうやって制作されていますか。

A:駅・デパート・スーパー等の床や壁に貼られている印刷物(一般にはサインパネルと呼ばれている)で人物・物体を切りぬいたり○型□型等にカットされて製品の売り場案内や出入口方向の表示、ポスター等になっているのをよく目にします。当然、それらはプリンタからオンデマンドで出力された印刷物です。しかし、床に貼られていると靴で踏まれたり、壁や手すりに貼られていると人体と接触することにより磨耗して行きます。   また、ある一定の期間が経過すると跡形も無く剥がされなければならないものもあります。そこで、このような印刷物は通常の物とは違った材料を使用して制作されていますが、どのように制作されているのかについて、ローランド ディー.ジー.(株)のプリント&カットマシンによるフロアサイン制作を一例として述べたいと思います。

 

【レイアウト】  

まず、レイアウトは、特に専用のレイアウトソフトが必ずしも必要ではなく、市販されているイラストレーターで作成し出力します。  また、人物・物体を切りぬいたり○型□型等のカットはどうされているかというと、イラストレーターでカッティング線を絵柄と併せて作成します。切り取る抜き型の線をつくっています。  文字の場合だったらアウトラインを抜いてもらえばいいです。写真の一部の絵柄等の変型ならばフォトショップでアウトラインをとって、イラストレーターにパスのデータだけをもってくればカットラインとして認識されます。  ここで「出力」すると出力機側にはプリントとカッティング機能があり、グラフィックスとカットのラインを認識してくれます。プリント後、自動的に原点に戻り型を切るということになります。

 

【水性と溶剤系のインクジェットプリンタ】  

出力機は主に水性と溶剤系のインクジェットプリンタがあります。このどちらが多く使われていたりどちらが向いているのかについてはいろんな見方があります。しかし、いずれにしても表面保護等の為にラミネート加工をしなければなりません。ラミネート加工すると耐光性、耐摩擦性が上がりますので、短期間のご使用においてはどちらのインクを選んでも構いませんが、耐光性が問われる場合は優れた耐光性を持つ溶剤系インクのほうがいいようです。  次に、生産コストには差が出てきます。インクの値段はメーカーにより多少の違いもありますが、そんなに差はありません。溶剤系のインキはコスト的には安価ですが、水性インクに比べると若干、彩度が落ちます。  印字される素材としては塩ビやPET、フィルムベースのものがあります。印字される素材は水性と溶剤系を比べると値段に格差があり、溶剤系のプリンタ用の素材は水性に比べて約半分のコストで済むので一般的には生産コストは溶剤系の方が安価でできます。水性のインクジェットだと専用紙である必要がありますが、溶剤系は専用紙だけでなく色々なものに印字できるという特長があります。

 

【後加工】  

プリントアウトした後のインクは、水性の場合はすぐ乾くので、すぐ後加工の作業にかかれます。しかし、溶剤系のインクは、メーカーによって差がありますが、乾燥には多少時間がかかります。溶剤系の場合は溶剤成分が揮発しないと、ラミネートしたときに気泡ができます。ですから、一晩くらいおかないと完全に乾燥しないケースがあります。  印字した後はラミネート加工を施します。この場合、普通のラミネートだと雨が降ったときに水で滑ります。それで、最近は水がついても滑らないラミネートの素材が開発されています。  また、素材が塩ビなのかPETなのかフィルムベースなのかによってラミネートとの相性があるので、それをあわせてもらう必要があります。  そうしないと作成後に伸縮があったり、長期に掲示するものだと、伸び縮みや割れてきたり気泡ができたりすることがあります。屋内でも、白色灯は紫外線を出しますから、その対策としてもラミネートするほうがよいでしょう。  材料を選ぶときに結局どういう場所のどういう用途でどのくらいの期間使用するのかということで、それぞれ違ってくるし、インクの選択も違ってくるでしょう。そういうことは、材料の組合せで、より効果のあるやり方を選択しなければなりません。  メーカー各社により、いくつか制作方法がありますが、基本的にはプリントアウト・ラミネート・カッティングという工程を経て制作されます。

取材協力:ローランド ディー.ジー.(株)

 

(2004年1月5日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

フィルムへの印刷はなぜグラビアなのでしょうか?

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:フィルムへの印刷はなぜグラビアなのでしょうか?

A:【グラビアの特徴】 
  グラビアは凹版印刷の一種で、細かい凹点(グラビアセル)内に詰められたインキの量によって濃淡を表現します。版の窪んだ部分にインキをためて、それを圧胴の圧力でインキを転移させて印刷します。
  特徴としてはインキを載せ転移させる量が一定であるという計量精度に優れています。1インチあたり何本セルが入っているかというスクリーン線数にもよりますが、セルが浅ければ少ないインキが入りますし、深ければ多くのインキが入ることにより高精度な細密な再現性が得られます。インキの転移量を細かく調整できるので、非常にカラー再現にすぐれているという印刷手法です。
  また、グラビアインキは一般的に油性インキが主流です。アルコールやトルエン、酢酸エチル等のインキ溶剤が使われています。最近は環境等の問題でトルエンを使用しないインキや、逆に水性のインキが出ていますが、基本的には油性インキになっています。

 【グラビアとフィルムの相性】
  一般的に、プラスチックフィルムは濡れ性が悪く水を弾く性質があります。そういう被印刷体にインキをつける場合に、グラビアで印刷が向いている理由のひとつに油性の性質をもっているので付着性がいいことがあげられます。もうひとつは、カラー再現の中で細かな印刷がしやすいことがあります。
  例えば紙の場合はグラビア以外にもオフセットや凸版で印刷しますが、紙にインキが吸い込むため、インキの計量精度を計算できないところがあります。しかしフィルムはインキを吸い込むことがないため、ほしい量をほしい個所にキッチリ転移させることができ計量精度が高く再現性がいいことがあげられます。
  また、例えば用紙だと多少表面に凹凸があるために、インキが付かなかったり付き過ぎたりすることがありますが、プラスチックフィルムの表面には非常に平滑性がありグラビアの版も表面が平らで窪みがあります。そういう意味では平らな面に平らな版をつけるということで適しているともいえます。
  紙の場合はグラビアだとかすれぎみになることもありますが、平滑なフィルムはかすれることはありません。そういう意味ではグラビアの相性がいいといえるでしょう。

 【フレキソの動向】
  プラスチックフィルムの印刷をグラビア以外でやっているのがフレキソ印刷です。オムツとか生理用品でポリエチレン単体の袋、スーパーのお持ち帰りの袋などフレキソで印刷されているケースが多いでしょう。
  単体の袋ではフレキソで印刷されるケースがありますが、複合されて貼り合わせされたラミネートものだと殆どグラビアです。
  軟包装でもよくありますが、リピートでオーダーをいただく仕事が多いと、色合わせがとても重要でフレキソだと色ムラが出やすいといわれています。
  版についても、フレキソは樹脂版をシリンダーに貼りつけて印刷するため、印圧の調整が微妙で、グラデーションも難しいかもしれません。
  カラーカーブで0%から100%までリニアになればいいですが、フレキソの場合ハイライトの再現性が非常に難しく、インキが付いたり付かなかったりします。逆にベタ部ではインキがはみ出て太りすぎる傾向があります。
  最近は版周りの進歩もあり、インキの転移量を微細に変えることもできますので以前よりは技術的に改善されています。しかし、グラビアと比較するとまだ印刷品質の差があり、顧客に満足してもらえないというのが現状でしょう。

 取材協力:大日本印刷㈱ 包装総合開発センター
   http://www.dnp.co.jp/

 

(2004年7月19日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

空気や水へ印刷はできるのでしょうか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:空気や水へ印刷はできるのでしょうか。

A:印刷は、元々は版にインキを付けて圧力をかけることによってインキを版から被印刷物に転写させることであり、従来から現在までそのように行われています。また、デジタル技術の発達した現在では、版を用いなくても印刷できるようなシステムも確立し、印刷の概念が従来よりも拡大して解釈されています。また、印刷の原語はprintですが、printは一回限りの表現にも使われています。 
  厳密にいえば、水や空気への印刷はできるのかと問われると答えるのに苦労します。しかし、空中や水中に何らかの方法で絵柄を表現したり又は水を媒体としてプリントのようなことは行われています。
これらのことをさらに拡大解釈して空気や水への『印刷』として捕らえている場合もあり、その例をいくつか挙げます。

●空気への『印刷』
① 空気というより空に『印刷』するということで言えば、オリンピック等の世界的なイベントでジェット機が煙を噴射して五輪のマーク等を空に表現することが挙げられます。

② これと似たようなことで、一機のセスナ機から5つの煙を出す装置を取りつけ、セスナ機が2機で水平飛行して空に文字やマーク等を煙で表現することもきます。
また、イベントのステージでスモークを出し、そこにレーザー光線で映像や文字を写すこともあります。このように空中に絵柄を描いていることになるでしょう。

●水を媒体とした『印刷』
① 水溶紙を使った方法があります。水溶紙は、水に濡らすとすぐに溶ける性質をもっており、軍事用、産業用、医療用の機密文書等に用いられています。重要な機密事項を守るための用紙です。この用紙をディゾルボといって三島製紙㈱の商標となっています。版式は、用紙の性質上、ドライオフセット印刷または水無しオフセット印刷を使います。 しかし、単純に印刷するだけでは水に浸せばすべて溶解します。そこで孔版でゾルインキという 水に溶解しない塩ビ系のインキで印刷すると、水に浸しても紙は溶解するが絵柄だけ水の上に浮いている状態ができます。
これと同じように水で溶解するフィルムもいろいろあります。フィルムといえばオブラートが代表的です。ベースがゼラチンやアラビアゴム等の素材でできています。これにゾルタイプのインキで印刷しておけば水の中に絵柄を残すという同じ効果が出せます。

② 水出し印刷は、水質紙に絵柄がオフセット印刷されており、その上にスクリーン印刷等で水出しインキを印刷して隠蔽し、水をつけると絵柄が出てくることをいいます。水の浸透性に差をつけて絵柄を表現します。具体的には、幼児用玩具、幼児向け本の付録等に使われます。

③ 水圧印刷は、水溶性のフィルムに例えば木目や大理石等のパターンの絵柄をグラビア印刷します。そして、それを水槽に入れるとフィルムが溶解され木目や大理石等のパターンだけが水面に残ります。そこにプラスチックなどの成形品や曲面状のものを水中に浮かぶ絵柄パターンの部分に潜らせて水から引き上げて転写されます。
  水を潜らせるために、複雑に歪曲した部分や凹凸の形状のものにでも転写が可能です。現在では家電製品や自動車のフロントパネルの成形品などに使われています。

④ スライド転写は、ベースの上に水溶性の剥離層を設けその上に絵柄を孔版印刷しさらに接着剤をコートしたものです。そして、それが水で溶解して層が浮き上がり例えばプラスチックモデルの絵付け用シールや学用品などに貼ったり、人の肌に絵柄を写すこともできます。
  工業用としては、ガラスや陶器に貼り、それで焼きの釜に入ると完全に密着して洗ってもブラシで擦っても落ちません。またオートバイのタンクや車のボディへの絵柄付け等に利用されています。水に印刷するのではなく水を媒体にして転写しています。

⑤ 墨流しは、ゼラチンや寒天の上に染料をたらして流し模様のパターンを作り紙に写すことをいいます。寒天の上にドロドロした皮膜でパターンを作りその上に紙や布などを通すことによりパターンが写されます。たとえば製本の小口の部分を墨流しするとマーブルな感じ出て非常に高級感がえられます。

⑥ パウダーを使ってコーヒーや飲み物に星やハートマーク等のマスクをおいて粉ミルクを振り掛けると粉ミルクや粉チーズのマークができことを広く解釈すれば『印刷』といえるかもしれません。
  静電インクというトナーでチャージを与えることによってケーキ等のクリームの上に絵柄を表現できます。このトナーは、且つ食用でないといけません。水ではないですが、水に近いものへの『印刷』です。

  このように水を利用していろいろな印刷物が製作されています。空気や水への印刷というのはあくまで拡大解釈であり、いいかえると空気や水を利用して空中や水中に絵柄を残して情報を伝達できるという意味ともいえるかもしれません。 
 

(2005年2月14日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

立体印刷でHALSとはどういう印刷ですか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:立体印刷でHALSとはどういう印刷ですか。

A:立体印刷は平面上で絵柄が浮かび上がって見えたり奥行き感をだす等、視覚的に立体感を得られる印刷であり、ホログラムやステレオグラム、2枚写真法、レンチキュラーレンズ法等さまざまな手法があり、立体感をだすための一つの手法としてHALSがあります。
  HALSとは、グラパックジャパン㈱の特許製法により製造されたマイクロアレイレンズシートです。このシートの片面には微細なレンズが碁盤の目状に規則的に配列されており、蒲鉾型のレンチキュラーレンズとは違い一定のピッチ間隔で半球状の微細なレンズが敷き詰められています。したがってこのレンズの片面はマイクロレンズが敷き詰められてザラザラしており、もう片面が平滑性をもつ光沢面となっています。
  現在HALSには400-PP、500-PP、400-PETG、500-PETGの4種類の製品があり、これは製品名の通り材質がPETかPPかということ、材料厚が0.4mmか0.5 mm であることを表しています。

 【製造方法】
  このHALSシートの光沢面に立体視させるためのドットパターンをデザインに合わせた色のUVインキで平版印刷します。このシートはフィルムという特殊原反であるため通常の油性インキの密着性と乾燥性に問題があるためUVインキを使用しています。
  HALSシートの一定のピッチ間隔をもった半球状の微細なレンズと印刷されたドットパターンのピッチがぴったり同じになると立体感は出ません。レンズとドットパターンのピッチを微妙にズラして印刷することにより立体感を出しています。このピッチ幅はIllustratorでデータを作成するときにピッチ幅を少なめにしたり大きめに調整しています。
  またレンズを通して小さい網点を大きく見せているので四角やハート型などドット形状を変えることによりさまざまなデザイン上の効果を出すことができます。そしてドットパターンを印刷した後にその上に白ニスや合紙などを貼って表面を保護します。
 上記の処理後、ザラザラのレンズ面側から見るとドットパターンが実際の印刷面より浮かんだり沈んだり立体的に見えます。
  ザラザラのレンズ側への絵柄の印刷は平版オフセット、スクリーン、グラビア、インクジェットプリンタのいずれかで印刷します。そして絵柄のバックグランドにドットパターンによる遠近感をだすことにより訴求力を高める効果が発揮されます。

 【用途】
  使用目的として注目されているのは、販促ツールやPOPなどのSP関係です。通常のプラスチック素材と同じように曲げ加工もできるのでパッケージの用途にも使えます。 どこに使うかの制限はありません。ただPPやPETですから極端に熱がかかるところには使えませんので材質的な制限はあります。そういう物理的な規制を除けばアイディア次第でどこにでも使用できます。
  また今後考えられる市場が交通広告です。交通広告は印刷の制作費の他に掲載料が必要です。この掲載料はバスや電車の中など人目につきやすいところに設置されるための料金と考えられます。
    確かにHALSという媒体は紙よりは高いかもしれません。しかし、紙よりも訴求力は高いと考えることができるので最終的な投資対効果でみたときにプラスの効果があるのではという期待もあります。通常の紙にするのか前例のないHALSのようなものにするかはそれぞれの企業の考え方です。今後の方向性として交通広告市場にも期待されます。

 取材協力:グラパックジャパン㈱
     TEL 03-5213-5554 FAX 03-5213-5559
 http://www.grapac.co.jp/

 

 (2006年3月20日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

3D印刷はどうして立体的に見えるのでしょうか

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:3D印刷はどうして立体的に見えるのでしょうか

A:3Dとは、印刷物を立体的にみせるために、かまぼこ型のレンズを万線状に並べた特殊シート(表面が波形、裏面は平面)に画像を印刷する技術です。 3Dを制作するには、特殊レンズシートを介して見たときに立体的に見えるような印刷版をつくらなければなりません。使用する原稿は複数の写真や3D用のイラストです。この原稿を専用の画像処理ソフトで処理します。
具体的には奥行きがでるように万線模様がつくられており、沈む部分の画像はより細かい万線で浮き出る画像は粗い万線でかつ絵柄をズラしてデータを作成して印刷用版をCTP出力します。
 通常の用紙に印刷して特殊シートを貼り合わせるやり方もありますが、これだと2工程になる為、特殊シートの平面側に直接印刷します。このときシートは非吸収素材であるためUVインキで絵柄を印刷し、かつ素材が透明であるため絵柄を印刷したあとにホワイトインキを2度以上印刷して透けないようにします。
 印刷された画像に特殊レンズシートを通して見ると、かまぼこレンズの作用により左目と右目の画像が分かれ、その画像が人の頭の中で合成され立体画像となって認識されます。特殊レンズシートのかまぼこ状の万線の本数は1インチあたり100本、75本、50本、40本、20本などがある。これは用途により選択されます。
用途としては、名刺・ハガキ・ポスター・清涼又はアルコール飲料缶の宣伝用ポスター・本の表紙・カード類に多く使われています。
3Dは印刷物全体に変化をもたらすため、名刺やハガキなどは初対面の人にインパクトを与え、ポスターやパンフレットは注目度を集めるという宣伝効果が期待できます。
 

取材協力:㈱陽成社
       新宿区赤城下町44 TEL 03-5229-4202
 URL http://www.yosey.co.jp

 

(2007年2月1日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

建材印刷とはどういう印刷ですか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:建材印刷とはどういう印刷ですか。

A:建材印刷とは居住空間やビルのオフィス、公共スペースなどの床、天井テーブル、キッチン等のアイテムに関する印刷です。 

 消費者はデザインや色について多くの情報や知識をもっているので趣向が多岐多様になっています。そのため1年・半年というかなり短いスパンでお客様の趣向も変わります。
 例えば木目にも流行があります。一般的に木の種類には杉や松、ブナ等がありますが木の種類自体にもトレンドがあります。またそれにかかわる色(明るいもの、暗いもの、中間色等)も消費者の趣向が変わってきますのでそれに先駆けた提案をしていかなければなりません。印刷会社としてはトレンドを追いかけることがかなり重要になります。

 「ツキ板」という1~2㎜の厚さで木を薄く剥いたもの用意して専用のスキャナで撮影してカラー分解します。以前はカメラで撮影していたが、今は多くがスキャナで撮影するようになりました。
建材印刷用のスキャナは専用のものであり、木目でも光のあて方によって凹凸が変わるため一番リアルに見えるように角度を変えてライティングします。
建材の印刷物は化粧紙と呼ばれています。化粧紙を貼って板ができますが、これは化粧板と呼ばれています。
 被印刷体は加工することを前提にしており多くの種類がありますが多く使われているのが金属のチタンを抄造時にいれたチタン紙というものです。この素材は建材印刷以外には使えません。又、薄葉紙もよく使われます。この2つが建材の代表的な原紙です。
チタン紙は80g/㎡で薄葉紙が30~45g/㎡近辺のものが多く使われています。印刷は平均で3000メートルの巻取り紙が使われます。建材のインキもさまざまですがチタン紙、薄葉紙とも専用のインキがあります。

 表面加工についてもいろいろありますがチタン紙ではメラミン加工、ダップ加工、ポリ加工が代表的です。メラミン加工やダップ加工の用途はテーブルや床、壁等です。ポリ加工は耐久性を求めないところに使われます。
薄葉紙はチタン紙よりもベースが薄くなりますから物性は落ちます。チタン紙の用途よりは物性の求めないところに使われています。加工としてはウレタンコートです。用途は棚板やシステムキッチンなどの内側に多く使われます。

 チタン紙にはメラミン、ダップ等の樹脂を浸透させます(含浸)。そして含浸した状態で板の上に載せて乾燥炉を通して乾燥させます。樹脂は熱硬化タイプなので熱圧でプレスすると一度溶けて固まることにより接着します。
ポリエステル化粧板加工では印刷されたチタン紙を板の上にのせ板に接着剤をつけて貼りつけ、ポリエステルを流して固めます。
 薄葉紙の場合、印刷した状態では表面物性がないため印刷機の最終ユニットでコートをします。このときコーティング剤としてウレタンが多く使われます。ある程度物性を保った紙になり板に接着剤で貼ります。建材の印刷物は化粧紙と呼ばれています。化粧紙を貼って板ができますが、これは化粧板と呼ばれています。

 建材印刷では新版の場合の納期は柄が決まってから印刷までが約一ヶ月半から二月です。色校正については、表面加工したものが評価になるので仕上がりと同じ条件でないと今のところ受け入れてもらえません。デジタル出力機による校正は表面加工した仕上がりではなかなか色は合いにくい為、グラビア枚葉機を使って本機と同じ紙とインキで校正刷りを製作します。
 しかし、出版、商印の分野ではデジタル出力機による校正が行われており、建材分野でも近い将来デジタル化していかないとコストの問題や印刷でも環境問題もあるためこれからの検討課題でしょう。

取材協力:㈱千代田グラビヤ
    URL http://www.chiyogra.co.jp/

 

(2007年5月1日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

ペットボトルのシュリンクラベルはどうやって作られますか

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

 

Q:ペットボトルのシュリンクラベルはどうやって作られますか

A:ペットボトルのシュリンクラベルをデザインするには最終的にボトル形状による収縮を考えなければなりません。ボトルによっては太い部分や細い部分があり、そうした部分はシュリンクしたときの収縮率が違います。太い部分と細い部分では縮みかたが異なります。どのくらい縮むかは計算値で概算の収縮率をだしています。  基礎となるデザインについてはメーカー側が制作します。印刷会社は受け取った原稿をグラビヤ印刷で再現する為に加工を施し、分版作業をすることになります。商品の訴求性を高めるためにユーザーの欲するデザイン再現を常に考えなければなりません。

版校正はカラープリンタ(フィルムに出力)を使用する事が多く、ある程度の色の方向性を確認します(特色は、分解で表現する為、色を合わせることは難しいのが現状です)。

版校正の校了後は、専用の校正機で本番の収縮のフィルムを使って印刷し、お湯で縮めて実際の形状に仕上げて色校正及び収縮後のデザイン確認をします。

シュリンクラベルは熱収縮するフィルムです。材質はポリスチレンとポリエステルの二種類が多く使用されます。これは巻取りでグラビア印刷をしますが、最低でも2,000m以上は印刷します。飲料水でも売れているものそうでもないものによりさまざまです。印刷会社では印刷、ミシン目入れ、接着加工をして仕上げたロール状の製品、又はカットして枚葉に仕上げた形のいずれかで納品しています。

また、インキはフィルム材質によって種類がありますが、最終的にシュリンクされても大丈夫な専用の伸縮用インキです。

飲料ボトルの場合は、主に飲料充填メーカーでラベルの装着を行います。飲料などの中身が充填されてキャップがついた状態で流れてきたボトルにラベルをカットし落とし込み位置決めをしてから温風トンネルに入れてラベルを収縮させて出来上がりです。

取材協力:㈱千代田グラビヤ  URL http://www.chiyogra.co.jp/ 

 

(2007年5月14日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

軟包装について教えてください。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:軟包装について教えてください。

A:基礎となるデザインについてはメーカー側が制作します。印刷会社は受け取った原稿をグラビア印刷で再現する為に加工を施し、分版作業をすることになります。商品の訴求性を高めるためにユーザーの欲するデザイン再現を常に考えなければなりません。 顧客のニーズをいかに形にしていくかということです。 

 軟包装の印刷素材はPET、OP、ナイロン、セロハンなどが代表的なものです。軟包装は内容物の保護という問題があり、その要求を満たさなければなりません。内容物・食品のライフ・流通形態・デザイン性などを考慮する為、材質構成は多岐にわたっております。
 包装の中身にはレトルト食品から乾き物など様々なものが充填されていて最終的に袋にしないといけません。充填されるものによって、材質構成は単層から複層と変化し、要求物性に応じて貼合するフィルムの内容も変わってきます。袋にするためにはフィルム同士を接着させないといけません。接着させる素材としてポリエチレン系のものとポリプロピレン系のものがあり、熱を加えて樹脂を溶かして接着します(単層の場合は、接着部のみ接着剤をコートする場合もあります)。

 食品包材は、食品衛生法、食品包装材料印刷インキに関する自主規制(NL規制に基づく)など衛生基準に適応した材料を使用します。  使用するインキ、素材の組み合わせにより、色の見え方も変わってきます。版校正はカラープリンタ(フィルムに出力)を使用することが多く、ある程度の色の方向性を確認します。色校正は版を作成して校正機を使用する場合もあります。  隠蔽をもたせるための白インキ、金インキ、銀インキ、パールインキ、などの特色は制約事項があります。そこは営業がすべて把握しているわけではないので、技術・工場がバックアップして顧客と交渉することになります。

 印刷は最低でも2000メートルは印刷します。商業印刷用のオフ輪は最近のコンピュータ技術により自動化・プリセット機能が進み以前は7万部以上という大量生産向けの機械であったが、今では1万部以下のロットにも対応できています。しかし、グラビアの輪転の場合は今のところ大きな変化はないようです。
 世の中の消費者のニーズも多様化しており、メーカーとしては商品が売れるかどうか判断しにくく、メーカーが力を入れたからといって決して売れる時代ではありません。逆に力を入れないものが売れることもあり、先をよめむのは難しいです。
取材協力:㈱千代田グラビヤ      URL http://www.chiyogra.co.jp/ 

 

(2007年7月2日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

スチール(金属)缶の印刷方法と特長について教えてください。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:スチール(金属)缶の印刷方法と特長について教えてください。

A:金属スチールへの印刷は意匠性、美麗性、機能性がありリサイクルできる環境に優しい金属製品(容器)であることが特長です。素材が金属のためインキ・塗料を全く吸収しないので焼付けや速乾性が求められます。印刷・塗装した後、鋭角な折り曲げ・ロール成型・穴あけなどの加工があります。デコレーション(デザイン性)を有する製品であるため金属と塗料との密着性、加工性、表面硬度・光沢・耐摩擦性などの塗膜性能が必要です。

金属原板はSPTFS(ティンフリースチール)、SPTE(ブリキ)などがあります。その選択は印刷被膜機能および印刷外観表現において非常に重要です。それぞれの機能・特性を十分に研究して使用することが望まれます。その成分および規格は、JISG3303によって規定され、新日本製鐵、JFEスチール、東洋鋼鈑の大手メーカーで製造されています。

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プリプレス工程では、通常印刷業界で使用されているソフトで制作され、特別のものを使用しているわけではありません。金属オフセット印刷に使用される原版のスクリーン線数は被印刷体の種類によって異なることはありませんが、175線以上になると網点再現性が劣るため、現在は150線が一般的に使われています。

刷版について、金属印刷はアナログで行われていましたが、最近はデジタルに移行しています。CTPになったからといって金属刷版の専用出力機ではなく一般の紙への印刷に使用する出力機を兼用しています。通常の平版オフセット印刷と同一で、AL板へ感光剤を塗布したPS版を使用しております。

色校正についてはケースバイケースですが、平台校正機または本機校正で行います。尚、平台はブランケットがあるが、圧胴がなく版と板をテーブル上に固定して印刷しています。

印刷方法は、金属原板専用の平版枚葉印刷機で印刷されます。使用されるインキはUVインキで紫外線乾燥させる方法と、油性インキで熱乾燥させる方法があります。下版から納品までの納期は20~30日が目安です。

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金属印刷製品(容器)に使用する材料(スチール)は人と自然に優しい製品であり、リサイクル率が85.1%(2008年スチール缶リサイクル協会調査)と他の材料(PETボトル66.3%、古紙74.5%、)と比較すると優れたリサイクル容器であり、スチール缶(容器)は何度でも新たな資源としてリサイクルできます。

分別排出されたスチール缶(容器)は、磁力選別を行い他の材料(AL缶、樹脂)と区別されます。磁力選別されたスチール缶(容器)はプレス加工が行われ、鉄鋼メーカーに集められ圧延(溶けた鋼は圧延機で延ばされる。)され転炉(スチール缶等の鉄スクラップは溶かした鉄鋼石と転炉で一緒になったり、電炉でそのまま溶かされて鋼になる)の工程を経てスチール缶、冷蔵庫、洗濯機等の家電製品、自動車、橋やビルの鉄骨、自転車、講演遊具等、身の回りに有るあらゆる製品にリサイクルされます。

スチール缶をリサイクルすることでスチール缶を新しく作るよりエネルギーの消費が 1/4、CO2の発生を82%減らせ地球温暖化防止に寄与できます。スチール製品は材料、インキ、染料の組合せで種々の意匠(デザイン)のバリエーションの有る製品をつくります。スチール缶(容器)は保全(密封、防湿)、防ぐ(遮光)、守る(耐衝撃)、強い(耐水耐熱)、安心(危険物滴性)の特性を有しています。

取材協力、資料提供:共同印刷(株)

 

(2009年4月6日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)