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2020年パラリンピックをデザインの力で応援

JAGDAつながりの展覧会 Part 2 会場風景

「JAGDAつながりの展覧会 Part 2 チャリティ・アート・タンブラー」が、2019年2月1日(金)〜3月10日(日)まで東京ミッドタウン・デザインハブで開催された。

JAGDAつながりの展覧会 Part 2 メインビジュアル

▲メインヴィジュアル(アート:簑田利博 デザイン:古屋友章)

デザインの力で障害のあるアーティストと、パラリンピックを目指すアスリートを応援するために、2018年から2020年までの3年間に渡って展開する企画で、2018年の「Part 1 マスキングテープ」に続き、今回が2回目となる。

企画・運営の公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)は、これまで社会とデザインのつながりを探求し続け、特に2011年の東日本大震災以降、チャリティ販売活動や、東北の企業の復興支援事業などに取り組んできた。

これまでの実績を力に、さらに社会貢献の規模を広げようというのが今回の企画である。

障害のあるアーティストの作品ライブラリー「エイブルアート・カンパニー」登録作品をもとに、JAGDA所属のデザイナーがタンブラーのカバーをデザイン。
このタンブラーを東京ミッドタウン・デザインハブを皮切りに、1年をかけて全国で展示・販売し、アーティストへの作品使用料や製造原価を除く販売収益を、日本パラリンピアンズ協会に寄付する。

オープニングトーク

▲オープニングトーク(2019年2月1日)より。日本パラリンピアンズ協会、エイブルアート・カンパニー、JAGDAのデザイナーの交流が図られた。

一般社団法人日本パラリンピアンズ協会(PAJ)

パラリンピック出場経験のある選手(パラリンピアン)有志による選手会だ。
活動のキャッチコピーは、「突きぬけろ! We can make a paradigm shift.」。

発足のきっかけは、1998年の長野パラリンピック。冬季パラリンピックではアジア初の開催となったことから注目を集め、日本選手もたくさんの応援を受けた。
その感謝の気持ちを力に、パラリンピアン有志が、お互いのつながりを作りながら、誰もがスポーツを楽しめる社会を目指そうと活動を始め、2003年に発足、2010年に一般社団法人となった。

2019年1月現在の会員数は220名。企業や教育機関への講師派遣、パラリンピアンの競技環境実態調査、パラリンピックを目指す学生への奨学金制度など多彩な活動を行っている。

障害者スポーツへの理解は進んできているが、まだまだ課題は多い。
例えば、PAJの競技環境実態調査では、パラリンピアンの2割がスポーツ施設の利用を制限、拒否された体験を持つという実態が明らかになった。

その中でも、パラリンピアンたちは、自らの能力向上を図りながら、選手同士の交流を深め、さらに周囲の人々を巻き込んで、社会全体の意識を変えていこうとしている。
最近では、2020年パラリンピック出場選手の強化施設となる、東京都北区のナショナルトレーニングセンター周辺のバリアフリー化を求めて、国、都、交通事業者などに働きかけている。

エイブルアート・カンパニー

2007年に障害のあるアーティストの活動を支援するために発足し、3つのNPOが共同で運営している。
2年に一度の審査会で作家を発掘し、作品を登録して作品を使用したい人と作家を仲介し、作家の社会参加や収入支援につなげてきた。

現在、登録作家113人による1万2525作品をデジタルデータ化し、ウェブサイトに公開している。
作品は、出版物、パッケージ、アパレルなどさまざまな分野で採用され、作家には著作権使用料を還元している。

登録アーティストは、エイブルアート・カンパニーの支援によって社会との接点が生まれ、生きる力を得ている。
本展初日のオープニングトークに参加したtomokoさんは、20歳代前半に利き手である右手を負傷し義手となった。
現実を受け入れられない日々の中で、エイブルアート・カンパニーの存在を知り、一念発起して左手で絵を描き始める。1年間描きためた作品がエイブルアート・カンパニーの審査会で認められ、登録作家となった。
その後、登録作品が企業の商品デザインに起用されて自信がついた。友人のショップカードを手がけたり、メディアの取材を受けたりと活動の場が広がり、障害のある生き方が、以前より明るいものに思えるようになったという。

デザイナーとアーティストのコラボレーション

本企画に参加したJAGDAのデザイナーは、エイブルアート・カンパニー登録作家のうち1名の3作品までを選び、組み合わせてタンブラーカバーをデザインした。
また、JAGDA賛助会員である中央印刷株式会社の協力で、インラインコールドフォイラーを使用した金または銀の箔印刷を施しており、デザインに華やかさを与えている。
デザイナーの感性と構成力により、原画の魅力をそのままに、新しいアートが生まれている。

企業・自治体とのコラボレーション

今回タリーズコーヒージャパン株式会社が特別協力し、作品のうち4点を商品化して全国のタリーズ店舗で販売する予定だ(一部店舗を除く)。

2018年の「Part 1 マスキングテープ」でも、さまざまなコラボレーションが生まれている。

Part 1で製造協力したカモ井加工紙株式会社は、2018年にマスキングテープブランド「mt」が10周年を迎え、記念イベントを全国5か所で開催した。その会場ではJAGDAつながりの展覧会のマスキングテープも販売され、多数の売り上げがあった。

神奈川県川崎市では、商業施設のラゾーナ川崎プラザで、2018年12月にPart 1のテープが販売された。
また、川崎市役所では、市内在住のエイブルアート登録作家の作品をデザインしたマスキングテープを、2019年4月から、ふるさと納税の返礼品に採用する予定だ。

このように、JAGDAがつなぐチャリティ活動は、企業・団体を巻き込んで広がっている。
それはチャリティという側面だけでなく、作品の一つ一つに消費者を引き付ける魅力があるからだろう。
人々がパラリンピアンを応援するのも、彼らの競技する姿に勇気をもらえるからだと言える。
障害者に限らず、誰もが、何かしらの困難を抱えて生きているけれども、できないことを挙げていくのではなく、できることを探していくことで、道が拓ける。
エイブルアート・カンパニーと日本パラリンピアンズ協会の活動に触れることで、多くの人々が、自分の生き方をも捉え直すきっかけとなるのではないだろうか。

この企画のコンセプトであるデザインの「つなぐ力」とは、立場の違う人々の生き方を可視化することによってお互いの理解を進め、より良い社会づくりにつなげる力なのだと言える。
2020年までの展開に期待したい。

●企画概要

名  称:東京ミッドタウン・デザインハブ第77回企画展
「JAGDAつながりの展覧会 Part 2 チャリティ・アート・タンブラー」
会  期:2019年2月1日(金)〜3月10日(日)11:00–19:00
会期中無休・入場無料
会  場:東京ミッドタウン・デザインハブ
主  催:東京ミッドタウン・デザインハブ
企画運営:公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)
協  力:エイブルアート・カンパニー、中央印刷株式会社
特別協力:タリーズコーヒージャパン株式会社

●作品概要

・デザイン:JAGDA会員151名による151種類
・原画:エイブルアート登録アーティスト74名(その他2名)によるアート作品
・仕様:タンブラー(500ml)1本と“着せ替え”カバー3枚のセット
・価格:1セット1,500円(税込)

展覧会紹介ページ

*初出:「紙とデジタルと私たち」2019年2月26日

(JAGAT 研究調査部 石島 暁子)

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