研究調査」カテゴリーアーカイブ

「〇〇放題」の波はオーディオブックにもやってきている

音楽、雑誌、動画などで増えている定額制の波がオーディオブックにも広がっています。今回は、サブスクリプションでの提供やスマートスピーカーの普及によりユーザー数が増えているオーディオブックについて紹介します。

デジタルコンテンツの利用形態として広がるサブスクリプション

毎月一定の利用料を支払い、利用枠内で提供されているアイテムを制限なく利用できるサービス提供方式をサブスクリプションと呼びます。携帯電話事業者のソフトバンクが提供している「動画SNS放題」のCMを目にした方もいると思います(白戸家おとうさんが風呂敷に包まれてしまうやつです)。日本では「〇〇放題」という呼び方のほうがイメージしやすいかもしれません。

この〇〇放題型サービスは、Netflixやhuluなどの動画、AWA、Spotifyなどの音楽、dマガジン、ビューンなどの雑誌など、デジタル系サービスで広がっています。リアルでも洋服やバッグ、コーヒーなどで定額サービスが登場しており、人気を集めています。

ユーザーにとっては都度購入する手間がなく、たくさん利用すればかなりお得になる利点があります。サービス提供側にとっては毎月安定した収入が見込める、ファン育成に役立つといった利点があります。

オーディオブックでも定額制が増えてきた

最近ではオーディオブックでもサブスクリプション型で提供するサービスが登場しています。

オーディオブックとは、書籍をナレーターが読み上げた音声コンテンツを指します。昔はカセットテープやCDに録音されたものが本屋さんやCDショップで販売されていました。iPodなどの携帯音楽プレーヤーが普及してからはダウンロード販売、さらに最近ではストリーミング配信が一般的になっています。

音によるコンテンツは目や手を使わずに楽しめることから、「聴きながら何かをする」ことができるのが特徴です。オーディオブックを提供するオトバンクが2018年8月に公開した調査結果によると、オーディオブックを利用するシーンは移動中が58%ともっとも多く、ほか就寝前や家事の最中など何かをしながら読書する「ながら読書」が全体の9割を占めています。(オトバンクリリース

サブスクリプション型を提供しているオーディオブック提供サービスは下記のようなものがあります。

audioboook.jp(オーディオブックドットジェーピー)

オトバンクが運営するaudioboook.jpは、2007年からオーディオブック配信サービスを運営しているオーディオブック老舗です。2018年からは月額750円で対象書籍が「聴き放題」となるプランも導入されました。会員数30万人以上、作品点数2万点(2018年発表)で国内最大級のオーディオブック配信サービスです。

Flier(フライヤー)

フライヤーが運営するFlierは、2013年に開始したテキスト型の書籍要約サービス。「ビジネス書を短く要約する」という選書&要約モデルで短時間に情報を得たいビジネスパーソンを中心に利用者を増やしています。無料ユーザーは月20冊が利用できるほか、月額500円、月額2,000円の有料プランを提供。2018年からは書籍でテキストを音声で読み上げるAIを活用して自動読み上げの音声コンテンツを提供するサービスを開始しています(9割ほどの書籍で提供)。現在会員数18万人(2018年4月)、2016年よりメディアドゥ傘下になっています。

Audible(オーディブル)

アマゾンが運営するAudibleは、2015年からオーディオブックの定額サービスを国内で開始。2018年からはコイン制に移行。月額1500円で月1冊購入できるコインが付与されるほか、追加料金なしで楽しめるニュースや落語などのコンテンツを配信するAudible Stationを提供しています。AIアシスタントAlexaとの連携も進めており、「アレクサ、(コンテンツのタイトル)読んで」というとダウンロード済みコンテンツを再生できるようになっています。

2019年はオーディオブックがさらに伸びる期待も

オーディオブックはアメリカでは大きな市場で、2017年オーディオブック売上は前年22.7%増の25億ドル(約2800億円)以上あります(Audio Publishers Associationのリリース)。オーディオブックは世界的にも伸びており、2018年10月に開催されたフランクフルトブックフェアでもオーディオブックのカンファレンスが開催されるなど、成長分野として捉えられています。

国内ではそれほどの規模はまだないものの、スマホアプリでの利用が後押ししてオーディオブック利用者数は伸びてきています。

最近では前述のFlierのようにAI音声版の作品もあります。通常は声優やナレーターを起用するコストがかかりますが、自動化することで制作コスト削減やスピード化が期待できます。現在はビジネス書が中心ですが、将来的には小説などでもAI音声版が提供されていくでしょう。

またスマートスピーカーの影響も気になるところです。スマートスピーカーの普及が進むアメリカでは、オーディオブック利用者のおよそ4人に1人はスマートスピーカーで利用しているといわれています(前述APAリリース参照)。国内でもスマートスピーカーが増えていくのに合わせてオーディオブックの利用がさらに増えていく可能性があります。

+++

デジタルデータで提供されている書籍という意味ではオーディオブックも電子化された書籍です。テキストから音声にフォーマットを変えることで、視覚的な情報がなくなった代わりに「目や手を使わずに楽しめる」という新しい価値を提供しています。今後は電子書籍と同様に、新しいコンテンツの楽しみ方として広がっていくでしょう。

(JAGAT 研究調査部 中狭亜矢)

関連イベント

音声コンテンツの市場とビジネス可能性~ボイスUI時代に訪れる3つの変化、3つのチャンス~

【11/29開催】スマートスピーカーの普及に伴い音声ユーザーインターフェイス(VUI)が注目されている。VUIの現状と可能性を理解したうえで、音声コンテンツの事例から今後のビジネス可能性を考える。

早稲田大学で「印刷業界から見たフリーペーパー」講座を開催

JAGATでは、10月30日(火)、早稲田大学のフリーペーパー講座にて、「印刷業界から見たフリーペーパー」と題する講義を行った。 フリーペーパー講座は、メディア研究が盛んな同大学のメディア文化研究所などが協力し、2008年度(単位の取得できない講座としては2006年度から)に開講した。

開講前の2007年はフリーペーパー広告費がピークを迎え、部数だけでなく紙誌面の内容も飛躍的に向上、成熟したメディアとして、既存の新聞、テレビ、雑誌、ラジオなど4マス媒体と並ぶ新しいメディアという地位を確立し始めていた時期に当たる。しかし、フリーペーパーは日本の大学において調査・研究、あるいは授業科目の対象として取り上げられてこなかった。

そのため、先述した同学メディア文化研究所が中心となり、国内の大学における初の試みとして歴史、理論、実務という多角的な側面から、フリーペーパーの現状、そして将来の展望を追究する講座を開講、第一線の研究者や実務家を数多く招聘し、学ぶ機会を学生に提供し続けてきた。

早稲田大学は、メディアに興味を持つ学生が非常に多く研究・実践なども盛んで、実数は把握できていないが毎年数多くのフリーペーパーが学内で創刊されているという。そのため、最新の情報や事例を学ぶことのできる同講座への反響は毎年大きく、定員300人のところに1000人近い申込みが殺到する人気講座となっている。

詰めかけた講堂で熱心に講義を聴く学生

JAGATでは、公益性の観点で2014年から同講座に協力、今回は10月30日(火)に「印刷業界から見たフリーペーパー」と題して、90分にわたる講義を行った。 「印刷産業」「印刷メディア」「印刷会社と地域活性の関係」「変わるフリーペーパーの役割」「印刷会社のフリーペーパー事例」「フリーペーパーの平均像から」「フリーペーパーを活用したビジネスモデル」という、7つのコンテンツから、印刷業界の現状やフリーペーパーとの関係性、各地域のフリーペーパーなどを説明した。

講義をするJAGAT研究調査部長 藤井建人

講義中、学生は真剣なまなざしで多くのことを吸収しようとペンを走らせながら熱心に聞き入っており、講義後も学生から疑問点の質問が挙がるなど多くの反響が寄せられた。最後に、講座開催にご尽力されている早稲田大学非常勤講師の稲垣太郎氏、そして自社で企画・制作するフリーペーパーを送って下さったJAGAT会員企業の皆様に御礼を申し上げたい。

(研究調査部 古田優樹)

第2期 見える化実践塾

短期間での「見える化」を実現!
”やり切る”サポートと取り組む企業の相互交流と
自己研鑚の場をつくります。

「見える化」という言葉は印刷業界にかなり浸透していますが、実践できている会社はまだ多くはありません。

その原因、ハードルとしては、

  1. 徹底できない(リーダーシップ不足)
  2. システムがうまく活用できない
  3. どこから手をつけてよいかわからない
  4. 社内原価(時間コスト)の調べ方がわからない

などが挙げられます。

本研究会では、座学と見学会、実践と発表を繰り返し、「見える化」のつまずきポイントを洗い出し、課題解決に向けて後押しします。

概要
日時  2019年4月スタート(1年間)。基礎会員:全5回(8日間)
受講対象  JAGAT会員企業様限定
従業員数 20名から100名程度
MISをすでに導入していること (自社開発でもパッケージソフトでもかまいません)
定員 限定5社。1社4名まで参加可能
受講料 1社 800,000円
※料金は税別、宿泊費、交通費、懇親会費別。
※社内での実践を推進するために1社4名様まで参加できます。
※4名を超える場合は、1名増えるごとに5万円をいただきます。
会場 大東印刷工業株式会社(東京)
株式会社アサプリホールディングス(三重)
作道印刷株式会社(大阪)
公益社団法人日本印刷技術協会 セミナールーム

本研究会では、寄り添うトレーナーの役割をJAGATが、そして、時には厳しい叱咤激励を行うご意見番として先進企業3社の社長が担当します。

成果発表日を最初に設定
実現の期限を決めて必ずやり切る

というスタイルをとります。
座学と見学会、実践と発表を繰り返しながら 「見える化」のつまずきポイントを洗い出し、「できない理由」ではなく「どうしたらできるか」をとことん追求していきます。

関連記事

見える化実践塾をはじめるにあたり

世話役

佐竹 一郎 氏
(大東印刷工業株式会社 代表取締役)
松岡 祐司 氏
(株式会社アサプリホールディングス
代表取締役社長)
作道 孝行 氏(作道印刷株式会社 代表取締役)

カリキュラム

■基礎会員

第0回 事前準備
自社の現状分析と課題抽出  ヒアリングシートの記入
決算書3期分の提出 簡易財務診断
第1回 見える化の進め方を理解する(一泊二日)
日時  2019年4月18日(木)-19日(金)
会場  JAGAT研修室 (東京都杉並区和田1-29-11)
発表 ・自己(社)紹介
・自社の現状(概要)と目標発表
講義 1)「見える化」が求められる背景
2)管理会計と財務会計
3)個別原価管理を実現するには
4)時間コストの算出方法
5)先行管理に向けて(「目標達成見える化シート」の運用)
課題  「見える化チェックリスト」の作成
宿題  利益計画検討表をつかったシミュレーション
第2回 先進見える化企業の視察①(一泊二日) -全員経営を理解する
日時  2019年6月20日(木)-21日(金)
見学  株式会社アサプリ様 (三重県桑名市安永923)
発表 ・「見える化チェックリスト」に基づく自社の現状分析と課題抽出
・自社の取組みスケジュール発表
講義 見える化と理念の共有による全員経営(松岡社長)
・社員のベクトルのあわせ方(理念の共有とは何か)
・管理職を部門経営者にする会議運営
・必達できる売上目標の作り方
・ITを駆使した営業支援、ナレッジ共有
・働き方改革の取組み
宿題  1)作業日報のシステム化
2)自社の時間コストの設定
第3回 先進見える化企業の視察②(一泊二日)-徹底と継続の仕組みを学ぶ
日時  2019年8月
見学  大東印刷工業株式会社様 (東京都墨田区向島3-35-9)
講義 見える化から始める収益改善~社員ひとりひとりに個人事業主意識を~(佐竹社長)
・改革を推進するリーダーシップ
・印刷タクシーメーター(MIS)の運用
・やる気を引き出すインセンティブ制度
発表 中間報告(1)
・各社の課題を共有。「できない理由」の真の原因を明らかにし、
解決方法を議論
宿題  発表内容をもとに各社個別に設定
第4回 先進見える化企業の視察③(一泊二日)
日時  2019年10月
見学  作道印刷株式会社(東大阪市水走1-12-20)
講義 進化(深化)する「見える化」(作道社長)
・「見える化」を収益改善につなげるマネージメント
・営業プロセスの見える化による受注拡大
・改善活動を支える公平な評価制度
発表 中間報告(2)
宿題  発表内容をもとに各社個別に設定
第5回 最終報告
日時  2020年2月
会場  池袋サンシャインシティ文化会館 会議室(東京都豊島区東池袋3-1-4)
発表 各社の結果報告

※カリキュラムは一部、変更となることがございます。

参加お申込み


お申込書に必要事項をご記入のうえ、
03-3384-3168
までFAXにてお送りください。

参加費振込先

参加費は、下記口座に開催日の2日前までに振り込み願います。
なお、お申し込み後の取り消しはお受けできません。代理の方のご出席をお願いします。

口座名:シャ)ニホンインサツギジュツキョウカイ
口座番号:みずほ銀行中野支店(普)202430

お問い合わせ

内容に関するお問い合わせ

研究調査部 花房(はなふさ) 電話:03-3384-3113

ご案内パンフレットはこちら

お申し込み及びお支払に関して

管理部(販売管理担当)   電話:03-5385-7185(直通)

公益社団法人 日本印刷技術協会

過去の「見える化」関連記事

働き方改革と見える化

ゼロから始める”見える化”

見える化を実現するために最も大切なものは?

負の製品を見える化するMFCA

見える化のポイントは先行管理

『営業の見える化』からはじめる高収益への道

自らの目で見て「体感し気づきを得る」ことこそ、改善の原動力

仕事に人がつく「多能工化」

業務改善の定着は人材育成とトップのリーダーシップ

利益につながる雇用管理制度を考える

見える化で挑む 脱・成り行き任せ