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デジタル印刷機を活用するアニメ産業への進出

デジタル印刷機も普及し始め、パーソナルDMや極小ロット重版など様々な活用事例が生まれている。そんな中、デジタル印刷に適したビジネスとしてアニメ産業が注目されている。今回は、デジタル印刷機のアニメ分野での活用事例を紹介する。

アニメが印刷に向く理由

デジタル印刷機の活用でアニメが注目されている理由は消費行動の変化にある。出版業界の不況は印刷業界にとっては身近な話題だが、その背景の一つにはコンテンツの多くが無料になり、視聴者が作品単体にはお金を払わなくなってきたという点がある。ユーザーにとって、作品はまず無料で楽しむものなのだ。

その代わり、好きになった作品やキャラクターに対しては気前よくお金を払う傾向がある。広く作品を投げかけ、コアなファンから作品の派生的グッズなども合わせて資金を回収するのである。タペストリーやイラストボード、Tシャツなどを買っていくうち、すぐに数万円という出費になる。コアなファン向けということで当然小ロットだが、ある程度高額でも成立する。こういった特徴はデジタル印刷向けだと言える。実際、アニメ業界ではクリアファイルや、16ページでも1000円することもある同人誌などでデジタル印刷機が活躍している。

こういったアニメのコア層向けビジネスに注目し、印刷会社が本格参入した例としてサイバーネットが経営するアニメコラボカフェを紹介する。

印刷機を持つ強み

サイバーネットは異業種から後発で参入したが、今や名刺の有力プレイヤーとなった企業である。そんなサイバーネットがデジタル印刷機を活かす新たな事業としてコラボカフェを始めた。

コラボカフェとは、アニメやゲームといったコンテンツとコラボし、その作品をイメージした内装の中で食事やイベントを楽しんでもらうカフェのことである。通常のカフェよりも割高だが、作品のコアなファンが訪れるため消費意欲が高く、料理だけではなく店舗で販売しているグッズもよく売れる。

印刷会社がカフェを経営するというと意外に思えるが、ここには印刷会社ならではの勝算があった。店内を見てみると、垂れ幕やテーブルクロス、壁紙など、その作品に合わせた印刷物に囲まれていることに気付く。通常は、コラボカフェであっても、印刷物は減らしていく方向で考えるそうだが、サイバーネットの場合は印刷機を持っているため、安価に制作できる分、内装に徹底的に拘れる。その分、没入感のある空間を演出できるのである。これは母体が印刷会社だからこその強みとなっている。

コアなファンの集まる場所を作れれば、グッズなども売上が伸びていく。勿論、新規参入でコラボ相手を見つける際には体当たり的な苦労もあったそうだが、コラボ相手にとっても魅力的な販路であることは、アピールポイントだっただろう。

現在はコラボカフェで作ったオリジナルの限定グッズの中でも、売上の大きかったものについてはより広く売り出すように提案を行っている。コラボカフェがデジタル印刷の新たな仕事を生み出す場にもなっているのである。

コンテンツホルダーとの付き合い方

6月11日の研究会では、実際にサイバーネット会長の高原一博氏とコラボカフェ店長の村上直樹氏にご登壇頂き、新規事業開拓の経緯や苦労を語って頂く。ビジネスモデルとしての計算だけではなく、キーマンの発掘やコラボ相手とのマインド的な部分での付き合い方など人的な部分も含めて語って頂く。他にも、地域の印刷会社がアニメ聖地巡礼に関わり地域活性に繋げた例など、アニメ事業に進出する上でのメリットや乗り越えるべきポイントなどを議論する研究会となっている。

(JAGAT 研究調査部 松永寛和)

■関連イベント

アニメを活かした地域活性化と事業展開 ~聖地巡礼によるツーリズムと印刷会社の役割を事例に~
聖地巡礼に注目が集まっている。アニメのファンが舞台となった場所を訪れる地域活性効果から、旅行会社やコンテンツホルダーも動いている。しかし、聖地巡礼の成功事例の多くは着地型観光であり、地域の積極性が不可欠である。地域社会でアニメ制作会社が先頭に立つのは現実的ではないため、地元を知り尽くし、地域でのメディア制作、発信を担当できる印刷会社にも商機がある。 本研究会では聖地巡礼の概論を理解すると共に、印刷会社がアニメコンテンツ事業に参入する際のポイントと強みについて実際のアニメコラボカフェの参入事例から考える。さらに、アニメ制作会社ピーエーワークスの作品『花咲くいろは』から北陸地域に実際にお祭りを創り出し、地域の持続的な発展に聖地巡礼を活かすアニメツーリズムの事例などから印刷会社の関わり方を考える。

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本研究会では聖地巡礼の概論を理解すると共に、印刷会社がアニメコンテンツ事業に参入する際のポイントと強みについて実際のアニメコラボカフェの参入事例から考える。さらに、アニメ制作会社ピーエーワークスの作品『花咲くいろは』から北陸地域に実際にお祭りを創り出し、地域の持続的な発展に聖地巡礼を活かすアニメツーリズムの事例などから印刷会社の関わり方を考える。

関連記事:コンテンツで地域を潤す 聖地巡礼というビジネスチャンス

日時

2019年6月11日(火) 14:00-17:30 

構成

【1】印刷会社による地域活性化の動向

講師: 公益社団法人日本印刷技術協会 主幹研究員 藤井建人

(1)印刷会社による地域活性化の動向

(2)まちづくり、産業ツーリズム事例

【プロフィール】

1995年から出版流通グループで経営企画。経営計画、経営分析、管理会計、M&Aなどに携わる。2003年からJAGAT。印刷産業・印刷会社の分析・地域活性化などの研究調査に従事。共著に「印刷白書」「印刷産業経営動向調査」「印刷会社と地域活性1・2・3」「『ニュース』は生き残るか~メディアビジネスの未来を探る」など。研究論文に「地域社会においてCSV/CRSVを実践するビジネスモデルとその成立要件」。

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【2】印刷会社がアニメコラボカフェやってみた!!
 
講師: 株式会社サイバーネット 会長 高原一博氏、ライセンス企画営業課長 村上直樹氏
 
(1)コラボカフェを始めたきっかけ
(2)カフェ事業開始から現在に至るまで
(3)ライセンス(アニメ)ビジネスをするいにあたっての心構え
(4)アニメを使ってビジネスを広げるには
(5)アニメ(ライセンス)ビジネスの今後の展望
 

【プロフィール】

村上直樹:福島出身、ソニー・ミュージックエンターテインメントにお笑い芸人“コレステくん”として所属。ひょんな事からDJOZMA専属のデブダンサーとして抜擢される。話題となった紅白歌合戦出演や、全国ツアーに3度帯同し活躍、DJOZMA引退後はスパイダメンとしてとんねるずのみなさんのおかげでしたに出演。その後、体調を崩しやむなく引退。保険代理店の法人営業担当として4年勤務、MDRT資格を取得。自身がどうしてもやり残したエンターテイメントの世界に携わりたいという思いからサイバーネットに転職し現在に至る

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【3】 地域に遍在するコンテンツの魅力~聖地巡礼から聖地創生へ~

講師:  デジタルハリウッド大学 デジタルコンテンツ研究科教授 荻野健一氏

(1)聖地巡礼とは
(2)聖地巡礼の成功例
(3)地域への影響と今後の展開

 【プロフィール】

1982年、稲垣デザイン研究所(現:稲垣アソシエイツ)入所。1986年、アートキャンディ入社。博報堂などで明治乳業、不二家、東京都等の商品開発や販売促進コンサルティングを担当する。2006年、デジタルハリウッド大学院客員教授就任。2011年同大学教授に着任。現在に至る。地域活性プロジェクトにも数多く携わり、豊島区トキワ荘協働プロジェクト協議会などに参加。2016年から地方創生のためのアニメによる聖地創生計画「聖地創生サロン」を主宰している。

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【4】地域コンテンツの創出と活用による地域の持続的発展の可能性
 
講師: 一般社団法人 地域発新力研究支援センター(PARUS) 代表理事 佐古田宗幸氏
 
(1)舞台モデルの地・南砺市城端地域で行われてきたアニメに関連する事例
(2)「サクラクエスト」から始まった、数々の新しい地域活性化プロジェクト
(3)「桜ヶ池ファミリア」についての紹介
(4)これからの地域での活動の展望
 

【プロフィール】

京都生まれ。京都での公務員、会社員生活を経て、2012年富山県南砺(なんと)市へ移住。地元印刷会社勤務を経て、2015年アニメ制作会社・ピーエーワークスの子会社、株式会社PAXへ。2016年に一般社団法人PARUSへ出向、地域とアニメをつなぐ企画立案に数多く携わる。2018年10月より代表理事就任。

※講演者が一部変更になることがあります。

会場

日本印刷技術協会 3Fセミナールーム(〒166-8539 東京都杉並区和田1-29-11)

参加費

一般:15,120円(税込)、JAGAT会員:10,800円(税込) 印刷総合研究会メンバー: 無料 [一般]2名まで [上級]3名まで [特別]5名まで →自社が研究会メンバーか確認したい場合は、こちらのフォームからお問合せください 。

申込み

WEBから

Web申込フォーム に必要事項をご記入のうえ、ご登録ください。 登録後は完了メールが入力したメールアドレス宛に届きます。

FAXから

申込書をプリントして必要事項をご記入の上、 FAX(03-3384-3216)でお申し込みください。 (印刷総合研究会メンバーの方は、別途送付の専用申込み用紙をご利用ください)

問い合わせ

内容に関して 研究調査部 印刷総合研究会担当   電話:03-3384-3113(直通)

お申込み及びお支払に関して 管理部 電話:03-5385-7185(直通)

時間当たり付加価値と働き方改革

「時間当たり付加価値」は京セラのアメーバー経営で重視されている経営管理指標として知られている。働き方改革で脱・長時間労働の機運が高まるなか、「見える化」に取り組む印刷会社においても重視されつつある。

付加価値とは売上―変動費という式で表されるが、変動費に該当する経費を何とするかは、いくつか考え方がある。というか目的によって異なってくる。
印刷業において二大変動費といえるのが、用紙代と外注加工費である。一般的にこの二つが売上に占める比率は40%から60%程度である。用紙代と外注加工費は、比較的容易に受注と紐づけることが可能で把握しやすいので、管理会計で簡易的に日次の付加価値を計算するときには、この二つを変動費として計算することが多い。
その他の変動費として、刷版代や配送費、インキ代、商品仕入れ(ノベルティ商品の仕入など)などがある。月次や年次で付加価値を計算するときには、財務会計でこれらの数字を取り出して計算する。

この付加価値と総労働時間で割ったものが「時間当たり付加価値」である。売上や残業時間が増えているのに付加価値の伸びが伴わないときは要注意である。また、時間当たり付加価値と時間当たり人件費を比較すればわかりやすいKPI指標となる。付加価値以上の給料を払うことはあり得ないからだ。

変動費を文字通り仕事量に応じて変化する費用として考えれば、残業代、電力代、あるいは日常的に発生する消耗品も変動費としてみなすことができる。具体的には、CTPの現像液、印刷のブランケット、湿し水添加剤、ウエス、手袋、断裁機の刃、プルーフのインキや用紙、PODのトナー代やカウンターチャージ、梱包用資材などである。
付加価値向上をつき詰めていくと、これらの経費まで「見える化」する必要がある。「見えない」ものは管理(コストダウン)できないからだ。

ところが、これらの経費を手間をかけずに集計できる仕組みがある印刷会社は多くない。消耗品関係は、発注するときに使用部門や用途はわかっているはずなのだが、発注処理は電話やFAXなどのアナログ処理でデータ化されておらず、経理処理するときには経理担当が請求書の明細を見ても内容がわからず、仕入先単位でまとめて処理しているようなケースが多い。
使用頻度の高い消耗品などはシステムにマスター登録しておき、システムで発注処理(発注書の発行)を行うことで、発注日、発注数量、発注金額がすぐに把握、集計できるようにしておきたい。

(研究調査部 花房 賢)

価値を生み出すパーソナルデータ

「21世紀の石油」とも言われ、ビッグデータ時代の資産としても注目されるパーソナルデータ。高い利用価値の反面、Suicaのデータ販売が中止になった事例のようにプライバシーの問題を心配する人も少なくありません。

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