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人材不足時代をデジタル印刷でどう乗り切るか

JAGATでは印刷物で一番大切なことは「価値」だと考えています。
従来、印刷物で大事なことは品質だとか、正確さであるとか言われていますが、大事なことはビジネスモデルで有り、その結果生み出される価値であるという考え方です。

通常印刷業界では印刷物の価格を積算的に考えますが、こういう時代は終わった(つつある)と思います。原価や人件費、コストから逆算して価格を決める時代の終焉です。
その印刷物にどれだけの価値があるのかは、クライアント(世の中)が決めることで、結果論でこのチラシをまいたらこれだけ売り上げが上がったとか、ブランド価値がこれだけ上がったとかとかで、価値は決まってきます。その他の評価としては、その印刷物がどれだけ効果を上げたか?つまり、この印刷物がどれだけ役に立ったかで決まってきます。例えばマーケティング活動の中でリードナーチャリング(顧客を真の顧客に育てること)がありますが、この活動に「紙がどれだけ価値があるか?!」なんですが、正直これには効果が大きいと思っています。手を変え、品を変え、顧客がその商品を好きになるのに紙が果たす役割は大きいということです。今までだったらマス的にこの効果をとらえて、その内容を決定していたんですが、デジタルマーケティングと結びついた、デジタル印刷ならその個人に対して、ピンポイントにヒットさせることが可能です。データがかなり集まっている現在は、相当高い精度で効果が期待できます。(昔はプアな情報でしたが、インターネットになって劇的に変化しました。)

そういう時代になっていくときに、どのように印刷ビジネスをとらえるか?
皆さんに、率直に問いたいと思います。要するにデジタル印刷時代の紙の価値です。
JAGAT的に言うと「デジタル×紙×マーケティング」ということです。

そして何かしようと思っても、人材の問題が浮かび上がってきます。
IGAS2018期間中にビッグサイトで行われたDscoopイベントで、HPのIndigo責任者のアローンさんが、欧米ではアナログ印刷機のオペレーターを募集しても「なかなか若い人材が集まらない」と言っています。だからIndigoを6台も入れた。これは北米の大手印刷会社の例なのですが、日本でも特徴ある地方の印刷会社が言い始めています。「地方でやる気のある子はアナログ印刷にそっぽを向く」そんな話を最近色々耳にします。もちろん異論反論はあると思いますが、若い人が印刷に抱くイメージ、例えば若い女性が「活版印刷はとっても暖かくて大好きです。このカスレが特に良いですよね」なんて言うのを耳にすると、私は喜ぶというより「カスレねぇ・・・」と、やりきれない気持ちになってしまいます。また自分の職業を真剣に考えている若者と話して「アナログ印刷の技術習得って難しいんでしょ?!」「三年、イヤ五年かかるんですか?せっかく習得しても、我々が50歳くらいになった時にその技術が通用しますかね??」と懐疑的なことを言われてしまいます。もちろん、その場では真剣に印刷の素晴らしさを説くのですが、正直そういうことがあった晩、寝る前に考え込んで寝不足になってしまいます。
そういう風に悩む若者は紙好き、本好き、文字好きの人間なんで、デジタル印刷の可能性を、説明すると「印刷がそうなっていくのは自明ですよね」と非常に肯定的です。もちろん全ての若者が、行動を論理的に判断するわけではないのですが、雰囲気はこんな感じでは無いかと思います。全世界でアナログ印刷オペレーター不足が問題になっています。デジタル印刷ならアルバイトでも対処できるという理由もありますが、若者にとってこの「技術の将来性が、ピピッとくるイメージ」も非常に大きいと思います。特にビジネスモデルの話は真面目な若者ほど理解されると思います。
これから人材確保は死活問題になってきます。省力化や体力の要らないヘルプ機構はアナログ印刷システム維持のために考えていかねばならないと思いますが、人材面から観たデジタル印刷の魅力も見直す必要があると思うのです。

(JAGAT専務理事 郡司秀明)

関連イベント

【A-1】人材不足時代におけるデジタル印刷活用法

8月22日(水) 10:00-11:30【講演会場A】

日本においてはこれから少子高齢化だけでなく、団塊世代のリタイアが進み、人材確保がさらに急務となります。その一方で、印刷会社におけるデジタル印刷機のオペレータは若年化が進み、女性のオペレータも増えているといいます。デジタル印刷機の導入に際し、品質面や価格面でのオフセット機との比較がある中、労働環境の変化という事象を鑑みた新たなデジタル印刷の可能性を模索します。