長年、言われ続けたPOD が日本でも花開こうとしている。 続きを読む
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中国の印刷・出版市場とプリントチャイナ2015
*プリントチャイナ2015に見る中国の印刷技術動向を報告する。また、3年半の広州駐在員生活の視点から現地の印刷・出版事情、さらにネットワーク、電子書籍、SNSなどメディア関連事情を紹介する。
「円安人民元高」と中国の印刷動向
世界の印刷業界の中でも、中国の存在感はますます大きなものとなっている。
制作効率をアップするカタログ自動組版とWeb連携
モバイルデバイスなどのメディアは多様化が進んでいるが、だからと言って販売促進や情報発信にかける人員や経費を増やすことは許されない。
オンデマンド印刷による小ロット出版の実現
近年、講談社、小学館など大手出版社が本格的なデジタル印刷・製本設備を導入した。出版社が自前の設備で小ロット出版に取り組むことであり、話題となっている。
サーバー自動組版と電子コンテンツ連動、画像圧縮技術
フリーペーパーや製品カタログなど大規模な印刷物制作・情報発信において、サーバー自動組版や電子コンテンツの自動生成が大きな効果を上げている。
ギフトカタログのWeb to printと電子版制作
DTPによる印刷物制作とWeb用のHTML制作を別々に進行することは、校正やチェックが2重となり、時間・コスト的にもさまざまな無駄が発生する。コンテンツを一元化し、DTPソフトに依存せずにPDFデータ作成とHTML展開を行うことが出来ないか。
共同印刷の藤森良成氏にギフトカタログのWeb to printに取り組んだ経緯を聞いた。
■DTPによるカタログ制作の問題点
ギフトカタログは定型レイアウトがほとんどで、基本パターンとして1つのページに商品単位の小組をレイアウトする。自動化しやすいケースではあるが、さまざまな要因から自動化されていないことも多い。DTPでフルに制作している場合、商品ごとに製造元や生産者に原稿(データ)と掲載内容に関してアナログなやり取りが発生し、たいへんな手間・コストがかかる。また、DTP上の修正はデータベースに反映することはできないため、次年度のトラブルの種になってしまうという問題があった。
■CatalogPackerの構成と機能
CatalogPackerは、ネットワーク上で定型カタログを制作するためのWeb to Printであり、自動組版システムである。Webブラウザ上で動作するため、OSに依存せず、各PCにDTPソフトウェアをインストールすることも不要である。
商品DBをメンテナンスするユニットとそのデータを組版し割り付けるユニットで構成されている。DBの内容はクライアントや商品のサプライヤーに直接直してもらうことを想定している。DBを修正した後、小組単位で自動組版してPDFを作成し、校了まで進める。
ページアップした後の校正は行わない。実際にはバックグラウンドでXSL-FOを生成し、AH Formatterで組版レイアウトを行っている。
例えば旅行のカタログを作る場合、通常のRDBなら朝昼夕の食事回数を0,0,1と記号化して入力し、印刷物にする際に「朝食0回、昼食0回、夕食1回」という文字列に変換している。
食料品の通販であれば、チルド、冷凍などの区分を文字ではなくマークや画像で表現してほしいとなる。
このような印刷物上のルールを、全部印刷会社側で管理すると校正漏れやミスも多くなる。
そこで、価格・スペックなどを格納する商品DBと、印刷物上の文字列などをXML形式で記述する体裁情報DBに分けた。価格・スペックの修正は、常に体裁情報DBに同期されるようになっている。
小組のレイアウト指示は簡易設定画面から行う。小組の縦横サイズやどの位置にデータベースのどの項目を配置するか、その条件などを設定する。プレビューボタンを押すと、作ったレイアウトにデータベースの1件目が流し込まれて、結果を確認することができる。裏側ではXSL-FOで動作しているが、DTPや組版の専門的な知識は必要ない。簡単なトレーニングでWebオペレーターでも対応できるレベルである。
InDesignなどのDTPでカタログを制作する際、難しいとされているのが爪(インデックス)の自動発生である。例えば、北海道とか東北とか海鮮品なのか野菜果物なのか、フラグによって爪の色や文字、位置を変更する。DTPではオペレーターが手作業で配置するしかないが、XMLなので自動生成することができる。
レイアウト後にデータ修正をする際、画面をクリックすると「データを修正しますか。それともレイアウトを修正しますか」と選択できるようになっている。価格データを修正すると、連動して小組に修正が反映され、PDFが自動で作成される。
また、「今回だけこの価格を特別値引きにしたので、色を変えてほしい」といった修正であれば、レイアウトの情報だけを変更すればいい。
このような形でデータと体裁を分離し、管理しているためコンテンツの一元化を実現することができる。
■今後の課題
実際に運用してみると、一番の問題は商品のサプライヤーが画面上でのデータ修正に慣れていないことであった。
また、この仕組みは定型カタログが対象である。定型カタログはカタログの12~13%でしかない。大量部数であるため仕事としては重要だが、頻度は少ないというのが実態である。
今後は、CSS組版による印刷データ制作にトライしたいと考えている。CSS組版ができれば、Webと共通のラインで紙でも電子でも制作することができる。このような形でコンテンツの一元管理を進めていくことで、印刷会社がシステムインテグレーターやWeb制作会社と差別化することが可能になる。
(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)
レンチキュラー印刷の最新技術と専用ソフトウェアの動向
昨今、立体印刷用の合成データを生成する専用ソフトが著しく発達しており、レンチキュラー印刷が再評価されている。
レンチキュラー画像生成ソフトウェアでは、Photoshopで制作したデータからリアリティのある3D表現や2Dチェンジングなどの表現を、プレビュー画像をチェックしながら、簡単に制作することが出来る。
また、レンチキュラー印刷用ソフトウェアRIPでは、レンズに最適化したデータ補正、500線クラスの高精細網点生成、モアレ低減などの機能によって、より自然な立体画や「動く画像」の表現が可能になった。
立体画の原理・技術、製造方法、レンチキュラー印刷のための専用ソフト、今後の市場開発について株式会社立体技研の代表取締役、上古琢人氏に伺った。
レンチキュラー印刷の最新技術と専用ソフトウェアの動向
私は京都出身で広島大学に行ったが、そのときに3D画像認識の研究というテーマをやった。卒業後、ミノルタ株式会社で3Dスキャナの開発に携わった。そのあと大阪大学大学院に行き、バーチャルリアリティで3Dをやることになった。
その流れの中で、レンチキュラー3Dで何かできないかということで、立体技研を創業した。
レンチキュラーを使った撮影の技術を作って、テディーベアポストカードを作ったのである。これを商品化して、テディーベア以外にPOPやポストカードのようなものを自社のソフトウェアを使って販売するビジネスをしていた。
東京に来てそれを続けていたが、レンチキュラーのビジネスも厳しいということで、ソフトウェアそのものを販売するビジネスを主に今やっている。
レンチキュラー印刷とは
レンチキュラーは100年も昔に特許が出願されている。実際にポストカードとして出回ったのは1960年頃である。アメリカではグリーティングカード、日本ではダッコちゃんが有名だと思うが、1960年くらいに世界中で出回ったという歴史である。 それから30年くらいは日本の大手の印刷会社で技術開発、生産されていた。
1990年頃に各印刷会社さんがDTPということで、そのときにレンチキュラーのソフトウェアが海外から入ってきて、日本の印刷会社数社がレンチキュラー印刷を開始したのである。 弊社が創業したのが2001年。テディーベアポストカードを発売したのが2004年。レンチキュラーソフトウェアを発売したのが2年前である。
それから今年、国産のレンチキュラーレンズが発売された。創業してから何度も国産のレンチキュラーレンズを作りたいという話を聞いてはいたが、やっと実現したという感じである。これは非常にいいレンズである。
レンチキュラー印刷の原理
レンチキュラーレンズは表側がでこぼこした形状をしていて、裏側が平らなレンズ。このでこぼこがかまぼこ型のレンズになっている。かまぼこ型のレンズがいくつも並んでいる構造をしている。この裏にちょっと特殊な印刷をしてあげると、例えばこういう3枚の絵がスウィングすることによって、入れ替わったり、あるいは画像が浮き上がって見える効果を出すことができるのである。
実際のレンチキュラー印刷の用途であるが、例えばカタログとか、これは電車の窓貼りに使ったものであるが、あとはうちわ、文房具、パッケージに使われている。サンプルが置いてあるのであとで見ていただければと思う。
原理について簡単に説明したいと思う。まず、これはレンチキュラーレンズだが、その裏に緑と赤と黄色の帯が順番に並んでいるような画像を印刷する。そうすると、真上から見たときは黄色に、左から見たときは赤に、右から見たとき緑になるように配置することができるのである。 このようなレンチキュラーレンズの効果を利用して、色の代わりに画像を置いてあげるとチェンジングができる。
チェンジングを作る方法は、3D合成ソフトを使う。例えば、3D合成ソフトに飛行機が向こうから飛んでくる画像を入れてあげて、先ほどの帯の画像に並べ替える。そうすると、スイングすることによって、飛行機が向こうから飛んでくるようなチェンジングのレンチキュラーを作ることができる。
3Dの場合だが、ここに3Dにしたい画像があるとする。それを切り抜いて、背景と中景と近景という形で作って、どれくらいの距離に置くのかを作る。
さらに、最近はリアル3Dといって、細かく映像を作ることもできる。デプスマップを使う方法で、手前の方が白く、うしろの方が黒くなる画像を自分でこのショップ上で色を塗って、作りたい奥行きのデプスマップを作る。
こういった画像を3D合成ソフトにかけると、先ほどの帯状の画像ができる。これを印刷すると立体的に見える。
3D合成ソフト
実際の3D合成ソフトを2つだけ紹介したい。1つが弊社で開発した「EasyLentiStudio」である。今まで3D合成ソフトには日本製がなかったが、唯一の日本製である。特長としては簡単に使えることと、安いので入門に最適ということである。
もう1つは「HumanEyes」というソフトである。
特長は、先ほどデプスマップというものを説明したが、これはデプスマップを作る必要がない。立体のままそのままつまんで作ることができるので、非常に効率良くレンチキュラー画像を作ることができる。
レンズ
レンズは何種類かある。
その前にLPIを説明しておきたい。これは、ライン・パー・インチという意味で、1インチの中に何本ラインが入っているかを示している。つまり、この数字が小さいと粗いレンズになり、数字が大きいと細かいレンズになる。
細かいレンズは何がいいかのというと、レンズにピッチの目がほとんど見えないので、見た目が非常にきれいだということである。一方、粗いレンズはどういうときに使うかというと、厚いレンズを作るとどうしても粗いレンズになる。厚いレンズ使うと、3Dの立体感を出すことができるというメリットがあるのである。例えば、75LPI、100LPIは3Dのレンズというのがあって、同じ細かさでも3Dの効果が出せるレンズが存在する。
日本コーバンから国産の新しいレンズがこのたび発売された。
このレンズは販売元が日本コーバン株式会社、製造元が富士フイルム株式会社富士宮工場である。富士フイルムの技術を詰め込んだ素晴らしいレンズである。構造としては、2軸延伸PETと普通のPETが2枚重ねに貼り合わさった構造になっている。従来はこれが1つのただの無延伸のPETだが、貼り合わせることによって非常にいい性能を発揮している。
特長として、耐熱性、寸法安定性、インク密着性、断裁位置の正確性がある。これを従来のレンズと比較してみる。 こちらら側が従来のレンズシートで、こちら側が日本コーバンのレンズシートである。 まず製造方法である従来のレンズは押し出し成型で作っている。押し出し成形でピッチが決まってしまうので、このあとに延伸という、PETを伸ばすということができない。日本コーバンさんのレンズは、延伸で作ったレンズの下に、PETを引っ張って安定したレンズを貼り合わせている。 性能を比較すると、耐熱性というものがある。従来のレンズは屋内用にしか使えない。屋外用は別の素材であることはあるが手に入りにくかったり、使いにくいということがあったが、日本コーバンのレンズは屋外用にも使えるレンズである。
ただ、仕様によって、耐熱状況によっては使えない。 寸法安定性は、従来のレンズでは季節、ロットによりレンズのピッチが大きく変化する。特に秋や春に、気温が前の日と10度くらい違うとレンチキュラーは結構不良になったりするが、日本コーバンのレンズは、常温に戻すとピッチがほぼ安定するので、ピッチ測定のミスを減らすことができる。
それからインキの密着性というものがある。従来のレンズシートもコロナ処理みたいなことがされていて、インキののりを良くはしているが、高密着インキが必要で場合によってはアンカーコートをしていく。日本コーバンさんのレンズはコート剤が塗布されていて、紙用のUVインキなどでも印刷可能である。
最後に断裁機の正確性だが、これが私が一番重要だと思っている部分である。 レンズはかまぼこ型をしているが、山と谷がある。昔は、レンズごとに山で断裁されていたり谷で断裁されていたり、というレンズだったのである。今もそうである。
そのレンズを使うと、せっかくきれに印刷しても次のレンズは少し傾いてしまうということになって、なかなか良品を揃えづらかったのである。しかし、こちらの新しいレンズは、レンズの端が揃っているので、1つシートがきれい印刷できればすべて同じように印刷ができる。場合によっては100%近い良品を確保することも可能になった。
レンチキュラー印刷に必要な設備
レンチキュラー印刷をするときに何が必要なのか。
まず、UVオフセット印刷機が必要になる。LED-UV、でもH-UVで大丈夫である。それから、CTPプレートセッターが必要になる。従来はレンチキュラーモードを持っている機種でないとだめという話があったが、「LentiDotManager」という新しいソフトを使うことによって、2400DPIスパイラル露光機があれば、レンチキュラー印刷ができるようになったのである。それから3D合成ソフト。この4つがあれば、レンチキュラー印刷は可能である。
LentiDotManager
LentiDotManagerは、レンチキュラー印刷用製版データ生成ソフトである。
特長としては、まずは印刷の導入のハードルを下げるということである。
それから面付けを効率的に行うことができる。品質を向上させることができる。不良率を低減することができる。これについてもう少し詳しく説明する。
これはLentiDotManagerの画面である。特殊な版面設計は必要ないのである。まず、このような画面で台座を作って、台座に3D合成した画像をあてはめて出力するだけである。 レンチキュラーなので先ほどのLPIというレンズピッチを指定してあげないといけない。指定すると、CMYKと白の1bitTiffデータを生成するのである。
その前に画像合成ソフトのデータをここに入れてあるが、画像合成ソフトのレンズ位置を自動認識して、実際に印刷するレンズに合わせて調整するのである。 それから、画像合成ソフトでついているマーカーを全部マスクしてつめて、効率的な面付けができるようになっているのである。その他、ドットゲインカーブなどアクセサリー類も付けられるので、このソフトさえあれば、版面設計をするようなソフトはまったく必要ないのである。
次の特長は、CTPのハード的な問題をソフトで解消するということである。従来、なぜレンチキュラーモードが必要だったかというと、一般的なCTPのプレートセッターはスパイラル露光をしているので、菱形になってしまうのである。それを機械上で階段上に補正をかけているということがある。そのために縦向きのレンズを入れたときに、階段上の補正が全部横縞となって出てしまうという問題があった。なので、どうしてもプレートセッターで印刷をされている会社さんの場合は、縦向きのレンズのみしか使えなかったのである。
LentiDotManagerを使う場合は、スパイラル露光の斜めの分を逆に補正しておく。これはCMYKで補正するので階段上にならないのである。これで斜めに補正しておいて、1bitにしてから階段上に補正する。そうすることによって、2つの処理をキャンセルして、どちらの線でも使えるようになる。
LentiDotManagerは1bitTiffを出力するが、これは高細線のRIP機能を持っていることである。10線単位で500線まで自由に設定できるのである。 レンチキュラーでお勧めするのは、一番高い500線である。その利点は、線数が高くなるほど3Dのキレがよくなることである。
500線くらいなると、網とレンズの干渉縞があまり目立たなくなる。500線と聞いて、「そんな印刷、精度が高過ぎてできない」とおっしゃるが、レンチキュラー印刷というのは、実はそんなにクオリティの高い印刷ではないのである。シャドウ部の潰れやハイライトの飛びは実は問題がなくて、レンズを介して観察してもらえば分かるがほとんどそういうことは問題にはならない。
もう1つは、この500線は2400DPIのCTPでも可能なのである。なぜ可能なのかとよくいわれるが、通常の印刷でなぜできないのかというと、普通の画質のときに500線にすると、上手く表現できない部分が出てくるかと思うのである。しかし、レンチキュラーの場合は実際にはレンズを通すと、100線のレンズとか150線のレンズの裏に印刷するので、500線になっても特に問題になることはない。
だから、LentiDotManagerは500線出せるようにしている。 さらに上のグレードも用意している。来年の2月発売予定で、4000DPI以上のCTPで600線~1000線の設定ができるグレードを用意している。
この特長は3Dのキレがさらによくなることと、さらに網が細かくなるので、干渉縞がなくなる感じになる。
次の機能は色ごとのファンアウト補正機能である。ファンアウト補正というと、紙などで湿気で伸びることをイメージされると思う。レンチキュラーで問題になってくるのは、くわえとくわえ尻の間で数十ミクロンの縮小拡大があるのである。そういうファンアウトである。
それくらいのファンアウトが起きると、くわえが小さくてくわえ尻が大きいとなると、くわえ尻の角の部分が横にずれてしまって不良になってしまうという問題が起きる。補正をかけることによって、全体を長方形にして、全面のピッチを合わせることが可能になる。
もう1つ、色見当のずれも結構問題になる。これも数十ミクロン程度のものでもレンズで拡大されて問題になることもある。それから、機械的にコッキングで数十ミクロンのところを合わせきれないという機械も出てきて問題になるが、そういうものをミクロン単位で合わせることができるのである。 このファンアウトと補正の特長だが、レンズとは干渉しない補正になっているのである。通常のファンナアウト補正は1bittiffに対して行うので、tiffを補正したときできるパターンはレンズと干渉してしまうという可能性がある。しかし、これの場合は割り付ける前のCMYK画像に対して補正をかけるので、補正パターンが縞にならないようになっているのである。
その他の縞、モアレの低減の機能であるが、1つはチェンジンをきれにするという機能がある。通常の網ではチェンジングの切り替わり時に縞が発生する。それはチェンジングの帯とレンズが干渉して縞が発生してしまうことがあるのであるが、独自の網によって、縞の発生を除去するようになっている。 もう1つは、面付けした画像1つ1つに対して1度単位で別々の網角を設定することができるのである。画像を何種類か割り付けたときに、ある画像は例えばマゼンダが縞が出てしまった、あるいは皺が出てしまったというときに、1つの画像はマゼンダとイエローを入れ替えて、もう1つはシアンとイエローを入れ替えるとか、2、3度角度を変えてごまかすとか、そういうことができるのである。
またもう1つの機能は、独自のチャートによるピッチ測定である。従来はストライプを使ったチャートで測定していたが、LentiDotManagerは実際に3D的な方法で測定するようになっているのである。まず、CTP上にチャートを出力してレンズを乗せてそれを見るようになっているのである。
従来の方法との比較だが、従来の方法はレンズにストライプを印刷しなければならなかった。LentiDotManagerの場合は、印刷は不要である。また、従来の方法はストライプとレンズがどれくらいずれているかを見るために、1ラインずつルーペで確認することが必要だったが、LentiDotManagerは3D的に見るということなので、表から目視で確認することができる。3つ目は、ピッチは1つ1つ見るので、例えば1ライン合っていたとしても、何ラインかは合っていないものが出てくるので、正確なピッチを求めるのは大変だったりするのである。こちらの方法だと、どこのラインが合っていて、どのラインがずれているのか、一目瞭然で分かるのである。中央を見れば、正確なピッチが分かるのである。
その他の機能は、ホットフォルダが使えたり、バックグランド処理でいくつかのデータを予約をさせたり、また通常画像が使えるので、ポストガードの裏面を同じ面付けで作ったりすることもできるのである。
まとめて、従来の方法と比較していきたい。 まず設備である。従来は3D画像合成ソフトに専用CTPセッタと高細線網点が必要だった。しかし、このソフトの場合は3D画像合成ソフトとLentiDotManagerがあればできるのである。
それから面付けは、汎用のソフト、例えばInDesignで面付けすることになると、レンズピッチに合わせて細かい位置の面付けが必要になる。あるいは専用の面付けソフトで面付けするという方法もあるが、その場合もCMYKで面付けしてしまうので画像のサイズの制限がかかってくることがあった。しかし、LentiDotManagerはそういう問題がなくて、ミリ単位の普通の画像と同じように面付けをして、調整はソフトが勝手にやってくれるのである。出力は1bitTiffなので画像サイズの制限が少ない。
それから縞とかざらつき。従来のレンズでも同じように色々な縞が出てくるが、除去できない。そういう場合は元画像をちょっとさわってごまかすなどする。また、FMにして何とかという話もあったが、FMはFMで変なドットが目立ったりして、あまりきれいにはいかない。一方、LentiDotManagerは色々な除去の方法を提案している。
それから高細線の網にすることによって縞自体が目立たなくなるのである。
それからピッチずれ。これもなかなか合わない。合わないので検品していいものだけを出荷するということをしている。LentiDotManagerを使って正確に補正をして、またさらにいいレンズも出ているので、そういうことをするとほぼ100%近く取ることも可能になった。
それから色ずれ。機械の調整範囲を超えていたらどうしようもないので、ずれたままということもあった。ファンアウトも調整ができなかったのである。こういった機械に依存する色ずれやファンアウトをミクロン単位で補正できるようにしたのである。
それから、レンチキュラー印刷をやったことがない会社さんが立ち上げるとき、何度も失敗しながら品質を上げていくことをされていたが、会社さんによっては上手くいかずに断念する場合もあったと聞いている。LentiDotManagerを導入された会社さんは、テスト印刷のときから、そこそこ製品として展示会に出せるものを印刷されている。こちらもサポートもあるため、安心していただけるのである。
レンチキュラー業界の動向
スクリーンから、新しいCTPが発売されると聞いている。縦横4800DPIのCTPが登場する。これのいいところは階調性が上がるだけではなく、4000から4800にすることによって、レンズの線数やチェンジする画像の倍数になるので縞が発生しにくいという特長があるのである。 レンズは、日本コーバン製レンズのラインナップも拡充されると聞いている。それから軟質塩ビを使ったアパレル用のレンチキュラーもある。実際、有限会社サンコーさんで、LentiDotManagerを使って刷ってもらったサンプルを展示させていただいている。 用途については、今まではカードやPOPに使っていたが、折り曲げてパッケージに使ったり、商品自体の一部として使ったり、広がってきている。
レンチキュラー印刷の今後
中国のレンチキュラー市場は聞くところによると日本の数百倍といわれている。人口が20倍くらいあるので、日本もまだ10倍くらいの市場の拡大が期待できるのはないかと思っている。品質だが、調べてみると、半導体のフォトレジスト技術、半導体の回路を印刷する技術だが、これを使ったカラー印刷がある。1つの画素が光の波長のサイズになっている。 光の波長と共鳴して色が出るという原理を使っていて、50ミクロン×50ミクロン、500線の1つの網くらいのサイズの中に画像ができるというものがある。これでレンチキュラーを使うとものすごいものができるのはないかと思っているのである。今後、印刷技術がどんどん進化してくれると、レンチキュラーもいいものができるのではないかと期待している。
2014年11月5日「レンチキュラー印刷、立体印刷の今」より(文責編集)
デジタルカメラの進化と入稿データの実際
高性能デジタルカメラが普及し、アナログ原稿やハイエンド製版スキャナーは一掃されてしまった。
今では印刷業界における画像データの入稿形式、処理形態も大きく変わっている。例えばシャープネスや色補正、画素数や適正倍率などは、機器の進化によって大きく変わっている。
また、近年では撮影データを印刷以外のメディアへ展開することが一般的になった。適切な容量、カラーマネジメントなど、多メディア展開を前提にした画像入稿とワークフローが求められている。
ソラリス株式会社の代表、伊藤正晴氏に現代における最適なデジタル画像入稿について伺った。
デジタルカメラの進化と入稿データの実際
デジタルカメラは、最近かなり進歩して、もうほとんどたどり着くところまで来てしまったように感じる状況になってきている。
その中で印刷入稿を考えたときに、その性能をどう見たらいいのかというところに特化して話をさせていただきたい。
まず、デジタルカメラがどんなふうに進歩してきたか。デジタルカメラで一番中心的なスペックとして話にのぼるのは画素数である。最近のデジタルカメラは、画素数は多い方がいいんじゃないかくらいで気軽に使われているし、それで実際の問題はあまり出ていないというのが実情ではある。ただ、今でこそ十分な性能になっているが、デジタルカメラの発展速度には非常に驚くべきものがある。
1995年に、非常に画期的なデジタルカメラが世に出てきた。カシオのQV10というコンパクトなデジタルカメラ、当時、デジタルカメラだが液晶が付いていて、しかも簡単にパソコンに取り込めるというのが非常に話題になった。
このときのデジタルカメラの解像度は、おもちゃのような解像度であった。1995年、30万画素と書いてあるが、QV10は25万画素である。画素数で言うと320×240ピクセルという、非常に粗い画素である。
なんでこんな画素数なのかというと、当時のパソコンは画面サイズが今ほどなかった。VGAという規格があって、ほとんどのパソコンの画面はVGAというスペックで画面が表示されていた。
VGAというのはもともと640×480である。これがVGAモードというもので、今でも使われている。これよりもっと上になるとスーパーVGAとかウルトラVGAとか、どんどん画素数が増えていく。
このVGAというのが基本ではあるが、ちょうどこれの半分である。寸法は半分だが、面積で言うと4分の1である。当時エンジニアたちはこの画素数のことを4分の1のVGA、つまりクオーターVGA、QVGAと呼んでいた。カシオがQVGAだからQVと付けたかどうかまでは知らないが、このQVGA規格の画素数を持つデジタルカメラが一世を風靡した。もちろん画像はそれなりに粗いが非常に画期的だったというのは、世間を騒がせた様子からも言えると思う。
QV10はQVGAだが、カシオはこれで十分な解像度だとは考えなかったので、後継機としてQV100を出した。QV100を出すにあたり、カシオはVGAのモードも設けることにした。ただ、QV10もQV100も、もとはと言えば専用のCCDではなかった。
当時CCDを作るのは非常に手間とお金がかかった。安い部品を使わないと、こんな民生用のデジタルカメラは作れない。そこでどこから流用したかというと、ビデオカメラである。当時はカシオのビデオカメラがたくさん出ていたので、ビデオカメラのCCDをそのまま持ってきた。
ビデオというのは解像度が粗い。それこそVGA、QVGAレベルである。それをそのまま流用したので、こういう粗い解像度になった。デジタルカメラの起こりというのは、30万画素、25万画素のレベル、つまりテレビ解像度のレベルから始まったというふうに思っていただいていいと思う。
ちなみに2013年になると、普及機で1400画素レベル、上級機になると2000万画素レベルである。今、市場で2000万画素のデジカメが1万円台で買える。QV10でも発売当時は5~6万円していたので、2000万画素のデジカメを1万円台で買えるというのは本当に驚くべき進歩だと思う。
これはコンパクトカメラのほうだが、一方、デジカメのプロに近いレベルのDSLRのほうを見てみたい。プロのカメラマンたちはデジタル一眼レフのことをDSLRと呼んでいる。Digital Single Lens Refrex cameraのことで、ファインダーのところに反射する仕組みが入っていて、それで光学ファインダーと撮影を同時に使って、生の画像を見ながらシューティングできるというのが、DSLRの特徴である。今はやりのデジカメは、最近は反射なしのものがどんどん出てきているが、それとはまた一線を画していて、生の絵が光学ファインダーを通して見られるというのがこれの特徴である。
これはハイエンドのカメラだが、もともと1991年頃、デジタルで画像を取り入れたいという要求が非常に高かった。最初は日本のカメラメーカーではなくアメリカのコダックあたりが、半分軍事用の目的等もあったと思うが、カメラボディーはニコン製で、ニコン製の一眼レフの中にデジタルを入れ込んで、なおかつ処理ユニットを外部にぶら下げて撮影するというようなシステムを作り出した。DCS100と呼んでいる。
つまり、カメラ部分はニコンのカメラそのもので、中にCCDを入れて処理部分を外部の多きな箱にしょって撮影するというものである。このときの画素数だが、1991年なので、高画素のCCDを作るのは非常に大変であった。それでも130万画素という解像度で、やっとメガピクセルに手が届き始めた頃ということになる。
130万画素だと、そこそこの写真は撮れる。つまり、報道用の、新聞の紙面に載せるくらいのことはできるというので、多くの出版社が迅速な行動にすぐに使えるということで採用していたという経緯がある。
非常に高いので、私も毎日新聞社とか大きな新聞社に行ったときに見せてもらったが、非常に重くて大きい。とはいえ、それを担いで行きさえすれば電話回線を通じて電送できるというので、最初はこれが頻繁に使われていた。
それが現在、2013年になると画素数が3600万画素というとんでもない値に向上している。これは、もう少し前の時代で言えば大判のCCDのプロ用カメラに相当する画素数である。これだけの画素数があればスタジオ撮影でも使えてしまう。美術作品も撮れるというような時代になってしまった。
もちろんボディーは普通の一眼レフサイズだが、十分な解像度がここで得られるようになってきたというのが、去年、今年のレベルの話である。このように、画素数の変化が非常に急激だというのが見てわかると思う。
スマートフォンの普及
一方、スマートフォンではどうだったのか。我々が画像を扱っていると、スマートフォン由来のカメラデータが非常に増えてきた。皆さんが最近気軽に撮るのはスマートフォンである。もちろんカメラで撮る人もいるが、スマホの実力が非常に上がってきているので、スマホからのデジタルデータを扱うことはもう日常茶飯事になってきていると言っていいと思う。
それではスマホの画素数を見てみたい。日本で一番シェアが大きいのはiPhoneだが、iPhone4Sから800万画素になった。現在売られている5Sも800万画素レベルである。これはデジカメに比べれば控えめな数字だが、もちろんカメラの性能というのは画素数だけではない。そのCCDを使ってどれだけいい絵が得られるかというのは解像度のみではないので、1つの目安と思ってもらえばいい。
ただ、画素数を追求するのが得意なメーカーもある。例えば自らCCDを作っているシャープやソニーは自分のCCDの技術を注ぎ込んで非常に高解像度のスマートフォンを世に出している。今年のXperia ZL2などは、もう2000万画素を超えている。こういった性能のカメラを持つスマートフォンが今世の中にあふれているということを知っておいていただきたい。
スマートフォンが解像度以外にどんな性能を持っているのかということだが、これはデジカメとスマートフォンのカメラ部分だけを取りだしたユニットである。このように、非常に小さい。デジカメとスマートフォンのカメラ部分で何が違うかというと、一番の違いは大きさである。
スマホというのは、カメラ部分はほとんどおまけに過ぎない。しかもスマホの厚さの要求、電池をたくさん積まなければいけないという要求から、大きいユニットはどうしても詰めない。小さい中に凝縮する必要があるので、こういう小さいサイズのセンサを使うようになっている。
このセンサは普通のデジカメと比べてどう性能が違うのかというと、1つにはコントロール性、安定性、暗部性能、解像力などに課題がある。小さいので安定した画質がなかなか撮りづらい。それからCCDが小さいのでどうしても感度に限界が出る。暗いところの性能がいま一つよくない。具体的に言うとノイズが増えがちになったり暗い部分がはっきりしないということになる。
もう1つは解像力である。画素数が多いから解像力があるのではないかと思われがちだが、解像力というのはCCDだけで決まるのではなく、CCDの前に付いているレンズが非常に大事になる。いくら解像度が高いCCDがあっても、解像力がない悪いレンズが付いていると、当然その性能は発揮できない。そうすると額面の数字はいいのに実際の解像度が悪い、キレの悪い寝ぼけた絵だということになりがちである。
特にこれはスマホ、携帯電話のレンズで非常に顕著である。デジカメの1000万画素のカメラと、スマホの1000万画素のカメラを比べてみる。実際、私は一時期、スマホメーカーにコンサルティングに行っていた時期があり、一体スマホの1000万画素は普通のコンパクトカメラでいったら何万画素に相当する性能があるかということで比較したことがある。結構著名なカメラを引っ張り出して性能を測った。もちろん、解像度チャートを正式に、ちゃんとしたスタジオに用意して測った。
そうすると、1000万画素超のスマホを解像度チャートを使って測ると、実力値で言うと大体普通のデジカメ、まともなレンズが付いているデジカメの500~600万画素相当であった。したがって、レンズの性能によって半分くらいまで解像度が落ちてしまっているということがわかった。やはり小さいレンズというのはカメラにとって解像度の面では制約条件になっているということを知っておいていただきたい。
ただ、スマホはカメラとして全く使えないかというと、そんなことはない。スマホならではのメリットがもちろんある。そのまま電波で撮影画像を伝えられる。つまり、携帯性を活かした報道や、またWebで画像を貼るときは高解像度は必要ないので、Webの解像度で、解像度を落としてWebに貼り付ける、こういった用途には全く問題ない。実際、頻繁に使われているし、ブログなどで採用している人もたくさんいると思う。
スマートフォンのカメラ部分の構造は、実はばらすとこんな格好になっている。あの小さいレンズにAFユニット、センサカバー、イメージセンサ、基板など、こういったものが一体に納められている。
最近のカメラは小さいとは言っても進歩していて、昔はAFなど付いていなかった。今の多くのカメラは、iPhoneも含めて、AFユニットを搭載している。AFユニットはピント合わせをしてくれる。こんな小さなユニットでピント合わせするのは、実は楽なことではない。小さいレンズをピコピコ動かしてピント合わせしなければいけない。大きなカメラだとモーターで動かしてピント合わせをすればいいので、力任せにやれるが、こんな小さいものでピント合わせするのは非常に大変である。
こういった小さいカメラでピント合わせをやるには、大きなモーターはとても使えない。そこで、このAFユニットでよく使われるのはボイスコイルである。ボイスコイルは、昔のスピーカーと同じで、ぐるぐる巻いたコイルと磁石の組み合わせである。
コイルというのは、電流を流すと磁石に対して反発したりくっついたりする。この原理を使って、レンズユニットごと磁石に近づけたり反発させたりして距離を調節する。これがボイスコイルモーターである。業界ではVCMと呼んでいるが、このVCMを使ったAFユニットが、最近のスマホのAFユニットの仕組みのメインになっている。
ボイスコイルモーターを使ったもの以外だと、圧電素子を使って動かしたりするものもある。この辺のAF性能自体が皆さんのスマートフォンのAFを実現しているということになる。非常に小さいので、レスポンスもいいし、十分なAF性能を最近ではもたらしていると言っていいと思う。
今度は電気回路の内側のほうである。これは一般的なデジタルカメラ、スマホの中のデジタルカメラの回路構成である。ごちゃごちゃしてわかりにくいが、カギになる部分はARM922Tと書いてある部分で、これが心臓部のプロセッサである。最近ここが2パラレル、4パラレルになったりして、非常に高度になっている。これが処理の心臓部である。
ここが処理ユニットで、ハードウェアで構成されている場合もあるしソフトウェアで構成される場合もある。こういうユニットとプロセッシングの心臓部が連携して高性能を発揮する。
重い処理についてはハードウェアで、例えばMPEG-4 CODECとかJPEGのCODEC等がそれぞれ備えられている。こういったカメラが回路の中で連携して高性能を作り出す。このCPU性能の進化というのがデジタルカメラにもそのまま反映されている。
ここにARMと書いてあるが、ARMというプロセッサはこういったデジカメの中で一番優勢を誇っているプロセッシングユニットである。たいていのスマートフォンの心臓部はこのARMが使われている。ARMがあって、機械によって非常に小さくて高速な演算処理を行うことができる。隠れたヒット商品である。
ARMというのはARMがICを売っているのではなく、ARMのアーキテクチャー、「ARMの仕組みを売るのでお宅のプロセッサに入れたらどうか」という売り方をしている。ARM自身は、自分では全然作っていない。電機メーカーなりAppleなりサムスンなりがARMのアーキテクチャーを利用して処理スティックを作る。Appleなどは自分たちの頭脳を使った処理スティックを自分たちですら作らないで台湾の工場に委託して作らせるなどということで国際的な分業が行われている。
このようにして最新のアーキテクチャーでスマホのICが生み出される。ここの作り方次第で省エネになったりそうでなかったり、ソフトウェアとの連携がうまかったりうまくなかったりということが起きる。
ここからは入稿のことを考えていきたい。適正入稿のためにということで、デジカメの解像力をどう扱ったらいいのか、ホワイトバランスや基本色を確認したのかというようなことを、本来なら入稿のために考えなくてはいけない。
多分、「デジカメの解像力がいくつだから画像をこう扱っている」ということは、最近ではあまり意識されなくなってきていると思う。なぜかというと、性能が良くなったから、貼り付ければそこそこの絵が出るという時代になったからである。
もちろんカメラメーカー側の販売戦略としては、高画素、「こんなに画素数があるカメラは高級だ、素晴らしい」というのが販売方針になる。当然、我々も、似たカメラが2つあれば画素数の多いほうを選びがちになる。
この、現在のカメラの画素数の高さが、ある意味、画像入稿の楽なところをうまくもたらしてくれている。初期のデジカメは粗いものが非常に多かったので、「こんなデータを持ってきたって使えない」というのが多かったが、今のデジカメは、ぽんと入稿されても、画質という意味で、「お宅のカメラの画質は使えません」ということはまずなくなってきている。スマホですら、結構まともなきれいな絵を出すことができるので、十分に商用の実用になる。
例えば、スマホから印刷ソースとして十分な解像度が得られる。そうすると、「スマホの絵でもいい」ということで気軽に貼り付ける。しかし、先ほど述べたように、スマホの絵というのは解像度1つではない。スマホの中でもこんなにばらばらである。それを気軽にぽんぽん貼り付けて、それでも一定レベル以上なので無事に絵は出ているというのが現状である。
もう1つ、処理速度がカメラでもスマホでも高速化している。処理速度の高速化は、使いやすさのメリットとしてユーザーに貢献している。処理枚数が増えてくる、同時処理、同時の高度な処理が実現できる。そうすると、カメラ側でかなり凝った処理をしてくれるので、出てくる画像は理想的な画像が出てくる。
もちろん撮ったままの絵にはいろいろな欠点がある。ノイズがかなり載っていることもあるが、最近のカメラは賢いのでうまくノイズを消す能力もある。それから撮影枚数、1秒当たりに何枚撮れるという枚数も、昔に比べてかなり多くなった。こういった高い能力を最近のデジカメは持っている。
しかも、昔はメーカーによって画質が悪いものもあったが、今は、例えば日本製のデジカメを見ると、とんでもない画質のデジカメなどほとんど見かけなくなった。どこの画像を使おうと、大体使える。知らない海外製のカメラは別として、日本のブランドのカメラを使っている限り、とんでもない絵というのは出なくなってきた。入稿という意味では、非常に恵まれた環境になってきている。
もう1つは、カメラの内部以外に、今度はセンサ自体、高Dレンジ化というのがある。イメージセンサが非常に進歩している。もちろんその中の1つは解像度でもあるが、解像度以外の進化もある。センサが高感度になっている。知識のある人なら、センサのサイズが大きいほど感度がいいということはわかると思うが、同じサイズだとしても昔のセンサと今のセンサではだいぶ性能が違う。かなり感度が高い。
高開口率化とあるが、光を有効に捉える面積が非常に増えている。昔は同じサイズのCCDでも無駄になる部分が多かったが、光を捉える部分が非常に大きくなった。その結果、低ノイズ化している。デジタルカメラを選ぶなら、できるだけ新しいセンサを使っているカメラのほうがいいというのは絶対的な事実である。
もう1つは電気的な部分で、画像処理が進化している。カラー処理、ノイズ処理が巧みになってきている。昔、ノイズがざらざらだったものが、今のカメラではノイズが消えているということが普通にある。その他、色作りでも、肌色や美白処理などもカメラが賢く処理してくれる。
もう1つは、回路素子自体が進化している。昔は処理部分の1個1個の単位のことをIC、中にたくさんトランジスタがちりばめられている。そのトランジスタ1個1個の性能自体も昔より飛躍的に進んでいる。普通はトランジスタ1個を信号が通過すると、必ずノイズがおまけに付いてきた。トランジスタを信号が通ってノイズがおまけに付いてくるという量が、昔に比べてはるかに少ない。
当然、いろいろな処理をしようとすると、たくさんのトランジスタを経由して出て行かなくてはいけない。1つのトランジスタからノイズがたくさん出てくると、たくさんの処理をしたらノイズも一緒になって出てくるというのが昔のやり方であった。
今は1つのトランジスタから出てくるノイズが非常に減っている。したがって、高級な処理をしてもノイズが少ないままきれいな出力が得られる。これは最近の半導体、IC、LSIの性能のためである。
特に、ここにFE部と書いてあるが、FEというのはフロントエンドの略である。フロントエンド部、一番カメラで敏感な部分。CCDもしくはCMOSから画像を受け取る部分を、カメラの中でフロントエンド部と言う。このフロントエンド部が非常にノイズに対して大事な部分で、フロントエンド部の性能が良くなることによってノイズの低減に貢献しているということになる。
初期のデジカメのダイナミックレンジは、約50db程度であった。50dbというのは電気屋さんの言い方で、言い換えると大体300倍である。昔のカメラは300倍のダイナミックレンジ、つまり光の差を300倍くらいまで捉えることができた。300倍の範囲をオーバーすると、飽和したりつぶれたりということになった。
300倍というのは、おもしろいことにちょうどデジタルでいう8ビットに近い。8ビットは256なので、ちょうど8ビットに収まるくらいが昔のデジカメだった。しかし今のコンピュータも何も、8ビットで収まるということはほとんどなくなった。しかも8ビットのデータに収めるにしても、8ビットにする前にいろいろ加工したりする場合がある。そうなると、もともとのデータが8ビットでは物足りないということにもなる。
そこで現代の進んだデジカメでは、ダイナミックレンジの能力が優に60db以上である。60dbだと倍率で1000倍以上になる。1000倍の光の差をデジタルとして捉えることができる。これが最近のデジカメの能力である。新しいデジカメと古いデジカメで、ここは見えない部分だが、これくらいの性能の進歩がある。したがってデジカメは新しいほうがいいというのは真実である。
その他にカメラの能力としては、ホワイトバランス、ちゃんと白を白として表現する能力がある。これは肌色の表現能力であったり他の色の正確な色再現に寄与する。昔は高度な処理はできなかったので、色度図上で細かい操作はできなかったが、今のデジカメは、色度図上で、「肌色はこの辺に持って行ったほうがきれいだ」と言って肌色だけ特別な処理をしたり、「樹木の緑の部分はこういうふうに処理したほうがいいから樹木だけはこうしよう」というふうな高度な処理が行えるようになった。しかも高速でノイズが少ないというのが最近のデジカメの能力である。
それからUSM処理である。USMというのは印刷のときのシャープニングの処理のことだが、デジカメはどのカメラもシャープネス、つまりエッジ強調が必ず入っている。なぜかというと画面に出したときそのほうが見栄えがいいからである。
しかし、スクリーンに出してみたときのシャープネスと、印刷で使いたいときの希望するシャープネスとは明らかに違っている。スクリーンで見たときは画面にぴったりはまるような解像度で見る。それにふさわしいようなシャープネスが既にデジカメではかかっている。
しかし、これを利用するときには全く話が変わる。例えば画素数の多いカメラをA4判にうまく収まるくらいに軽く出そうとすると、今の画素数の多いカメラの画素数そのまま使うということはない。普通はサイズ変更して、それに適した画素数にして使う。扱い方によってはそのままはめ込んでしまうということもあるが、そのままはめ込むとしても最終的に出力されるときには縮小化されている。
見た解像度と、画面に出す解像度、印刷する解像度は、全部最適なものが違う。印刷に向いた処理になっていないが、そこを意識して処理しているかどうかというのが、ここで大事になる。
そうすると、印刷の教科書でよく出てくるUSMをちゃんと基本通りに忠実にやれているかというのが、高品位な画像を手に入れるための大事な条件になってくる。シャープネスはどうかけるかという、基本の勉強が昔あった。一律にかけるのではなく、最終貼り付け画像でシャープネスをかける。
例えば、通常、刷りに回すときには大体300dpi以上の画像を使う。高ければいいと言って1000dpiをぶち込む人もいるが、最適な350dpiで画像を貼るとする。そうすると、350dpiに変倍した後にUSMをかけなくてはいけないというのが、もともとの勉強の約束であった。それが今守られているかどうかである。これをやるとやらないとでは、得られた画像の立体感、リアル感が全く違ってくる。
幸い、とんでもないことにはならない。なぜかというと、元の解像度が高いので、エッジこそつけられてはいないが、そこそこの絵は出てくる。しかし、ちょっと物足りない。昔から印刷の美しい絵を見慣れている人にとっては「ちょっと食い足りないけれども、まあいいか」というレベルの画像が非常に多量に生産されている。
左は変倍前の1ピクセルエッジである。普通、デジタルカメラから出たばかりのときは1ピクセル、2ピクセルの範囲でエッジ強調がかかっている。これを縮小して使うと、右のように、エッジがどんどん消えていく。これはPhotoshopで試せばすぐにわかるが、輪郭強調がなくなってしまう。
つまり、変倍すると平均化されてしまうので、特別なとがったエッジはどんどん均されていってしまう。こういったことが起こるので、変倍した後に正しくUSMをかけるというのが、本来の、昔、推奨されたやり方である。しかし、今、これはほとんどやられていないのが実情である。
カメラの能力を考えたときに、最近のデジタルカメラはデジカメ初期に比してカメラ出力の高画質化、均質化、適正入稿に○。つまり、たいていのカメラは大体クオリティとして十分なところに来ている。
しかも、皆さんが十分なカメラを使っているので、その実態として、色にこだわらなくなってしまった。カメラ任せで、「これでいいや。肌色もこんな調子でカメラがうまくやってくれたのだろう」ということで、そのまま放置して貼り込んでしまうということが今は多い。
それから、生産性の点から大体JPEGで貼ることが多いと思うが、こだわった画像の場合にはRAWで使うこともあると思う。どちらが高画質かというと、これは言い古されたことだが、一般的にRAWのほうが高い画質を得るのに有利である。なぜかというとRAWは後処理に時間と手間をかけられる。1点ものの処理をする場合はRAWのほうが多い。とことん画質追求ができる。
しかし1枚ごとにこんなことをやっていられないというのがほとんどなので、そうすると生産性に劣る。芸術分野以外では普通JPEGをそのまま貼り付けるというフローがメインになってきているというのが現在の状況である。
RAWを扱うソフトのことを現像アプリと呼ぶ。RAWデータからJPEGに落としたり、もしくは色分解ができるところまでいくソフトもある。現像アプリというのは普通カメラメーカーが供給している。カメラメーカーがお勧めのソフトを提供していて、それを通すことによってJPEGなり最適な画像が吐けるというのが現像アプリである。
基本的に、デジタルカメラメーカーは自分のメーカーが作った現像アプリを推奨している。そうしないとデジカメメーカーが意図した色が出ない。ソフトメーカーは、むしろ本来の色ではなく、独自の色再現、素晴らしい色再現を追及するために動いている。
とはいえ、全くトンチンカンな色を出すわけにはいかないので、カメラメーカーはソフトメーカーに処理モジュールを提供している。このモジュールを通せば、ニコンならニコン風の絵が出てくる、このモジュールを通せばキヤノンのキヤノン風の絵が出てくるというのをソフトメーカーに供給している。アドビに供給したり、日本のいろいろなソフトメーカーに供給したりしている。これを使えばデフォルトのそこそこの絵が出てくるという状況である。
そういった能力がある中で、皆さんは自分の使いやすい現像ソフトを使っているというのが実際だと思う。ただ、餅は餅屋という言葉もあるが、アプリメーカーのソフトのほうが実は使い勝手がいいことが多い。
デジカメメーカーの提供しているソフトは重すぎたり処理がやけに高度すぎたり、とっつきにくいソフトが多いので、デジカメメーカーのソフトではないものを使う人も非常に多い。
それは、出した絵を自分で確認していいと思うほうを使えばいいと思う。何もニコン推奨の、ニコンの絵そのままでなくてはいけないということはない。出力された絵が撮影者の意図に沿っているかどうかに尽きる。
ちなみに、現像アプリの最近の動向はどうなっているかというと、普通、現像アプリというと画像好きの高度な人がやるのではないか、もしくはアート専門にする写真家がやるのではないかとなっていたが、ここに来て非常に底辺が拡大してきた。
例えばAdobe Lightroomというソフトがある。これはMac上のソフトだが、これがLightroom Mobileという形でリリースされた。つまり、iPad上でも同じことができる。iPad上でRAWデータの処理ができる。つまり、持って行った先でどこでも気軽にRAWデータの画像処理ができて気に入った画像を手に入れられるという、非常に底辺を拡大する方向になっている。
しかもこれはCC、Adobeクリエイティブクラウドに加入する必要がある。これに加入することによって、全部リンクする。自宅のiMacとリンクして、iPadで処理したらその情報はすぐに自分のiMacにも反映されるというような使い方が、クリエイティブクラウド上でできる。
こういった方向にLightroom Mobileは活用できるということで、これは既に売られている。そして間もなくiPhone用もリリースする予定があるようだ。こうなると、どこに行ってもRAWデータの処理ができるような時代が来ているということになる。
次に、デジタルカメラの付加機能の面から見てみたい。最近のデジカメは顔認識機能が付いている。コンパクトデジカメを人に向けると、顔の部分にぱっとマーキングが出るカメラがほとんどである。つまり画面の中のどこに被写体の顔があるか、きちんとカメラが認識する。ここに顔がある、顔が3つあるというようにカメラが認識する。
顔を判別することによって、この人が誰なのか登録しておけば、誰なのかすらわかる。撮影後、誰々が写っているシーンといったふるい分けが簡単にできるという機能すら持っている。
顔の認識ができるということは、顔を美しく仕上げようということも簡単にできる。これはどのメーカーでもやっている。顔認識機能に肌色を美しく表現する機能を合わせることによって、肌色の最適化を図る。これはごく普通に行われている。
それから追尾AFというのは、AFが被写体を追いかける。パナソニックのカメラなどがわかりやすい。半押しすると人間にマーキングがフォーカスされる。その人間が右へ行ったり左へ行ったりしても、ちゃんとフォーカスが追いかける。マーキングが追いかける。これくらいのことは今のデジカメは簡単にできる。子どもが動き回っていてもすぐに追尾して、そこにピントを置いてくれる。
それから、特殊エフェクトということで、夕暮れっぽく見せるとか、画面を明るく見せるとか、さまざまなエフェクトが可能になっている。少しレタッチに近い部分があるが、これがどんどん最近入れ込まれている。なぜかというとスマホは後からいろいろなアプリをどんどん入れられるので、スマホで画処理をするというソフトがたくさん出ている。
iPhoneは、自前ではまだそういうソフトは持っていない。写真の閲覧をするフォトというソフトを開いても、閲覧することしかできない。しかし、昨日の夜、新しいiOS8の発表があって、それを見たらiOS8のカメラで撮りながらばんばん画像の加工をしていた。iOS8のフォトには画像加工機能が新しく入ったようだ。好きに明るくしたり暗くしたり、いろいろな変更がiOS上の正式アプリから既にできるようになっている。これも非常に新しい動きである。こういったものをどんどん対応して付加機能を強力にしていくという動きがある。
それからHDR、ハイダイナミックレンジ。デジカメのダイナミックレンジは昔よりだいぶ進歩したが、これをもっと飛躍的に良くしてやろうというのが、HDRというモードである。それから横長の画面を作るパノラマ合成。180°に近いような画面でも合成して取得できる。こういった機能が発展している。
これは非常に便利なので、使う人は活用する。ただ、これを活用したからといって入稿データそのものが素晴らしくなったかというと、そうでもない。撮影援助機能があるので撮りやすくなるということはもちろんある。それから性能が上がったので画像限界が拡大された。Dレンジの進化とHDRとの相乗効果でもある。それからパノラマ機能による手軽な新しい効果で横長の画面を楽しめる。
それが印刷の実際の仕様にどう役立つのかということを考えてみたい。HDRを使うとどんな効き目があるのか。iPhoneにHDRが付いているので、iPhoneのHDRの例をお見せする。これはiPhoneのHDRなしで撮った画像である。窓の外から景色を撮ったが、空がかなり明るい。雲がかなりたくさんあるが、明るいのでみんな空は潰れてしまっている。反面、下の建物のところは暗く歪んで非常に見にくい。
HDRというのは輝度の非常に高いところと暗いところをうまく収めてやろうというのが目的なので、HDRありで撮影すると、建物の部分はより明るくなり、空はより暗くなって、雲のディテールが出てきた。HDRで撮影すると、暗部と明部をうまくやると救うことができる。これがHDRの本来の目的である。
iPhoneで、これくらいの効果は得られるが、万能ではない。ガンガンに明るいところをのべつきれいに出してくれるのかというと、決してそうではない。これはある意味ラッキーな場合である。
そうでない場合、例えば天井の明かりを撮影すると、こんな具合になる。これは普通のサ―クラインを撮影しただけである。当たり前だが、サ―クラインは光の出ているところが非常に明るいので、もろに潰れている。
ここで最新鋭のHDRを使ったらどうなるのか。「HDRは万能なのだから、きっとすごいのではないか」と思うかもしれないが、これを見るとどうか。さっきよりはマシかもしれない。完全に潰れてはいない。蛍光灯の管の部分、この辺は先ほどは全部潰れていたのが見えるようになってきているが、さすがに管の表面までわかるような絵が得られるわけではない。したがって、あまり期待しないほうがいいと思う。
この辺は使いこなすことによって、一体どこまでどれくらい救われるかというのを把握した上でHDRを使う必要が出てくると思う。非常に有益な手段ではあるが、過度の期待はしないほうがいいのではないかというのが私の考えである。
それからもう1つ、パノラマだが、パノラマの画像というのは横長の画像で、自動的に画面の接続、つぎはぎをやってくれる。例えばこの画像で見ると、空の部屋をずっとなめるように撮影した画像だが、これが本当にすぐ仕事に使える絵なのかというと、やはりパノラマモードも万能ではない。ここにこういう段差が出ている。ここも凹んでいる。これは画面のつぎはぎのときにできた段差である。
ここも見ていただきたい。ここの垂直はこちら向きだが、ここはこちら向きである。これは、この辺で貼り合わせが行われた結果である。貼り合わせの場所というのは、大体画面の隅のほうである。画面の隅は当然、レンズの歪みが大きいところである。レンズの歪みの大きいところと大きいところを貼り合わせるので、歪みによって傾きができてしまう。こういった現象はパノラマ撮影では起きがちである。非常に厳密に気を使って後でレタッチを施さないと、パノラマ撮影はなかなかきれいに撮れるというふうにはいかない。
この画像はもとはiPhoneだが、それぞれの貼り合わせの明るさは非常にうまくコントロールされている。しかしiPhoneでないようなカメラの場合にこれをやると、それぞれ明るさが変わってしまったり、つまり貼り合わせ前、貼り合わせ後、右と左で明るさが明らかに変わってしまったりということも起きる。その辺はカメラやアプリケーションによって全く違った結果になるというふうに気を付けたほうがいいと思う。
こういうことで、この付加機能については非常に注意しながら使っていただきたい。
次に、カメラの新しい機能として、Wi-fi連携、GPS情報の付加等がある。最近のカメラは、半分まではいかないが、中級以上のカメラはWi-fi付きのものが増えてきた。Wi-fiが付いていると、Wi-fiを持った機器にそのまま画像をすいすい吸い込める。もしくはWebを通してクラウドにどんどんためられるというような、画像の移動が非常に楽になる。
その逆もできる。Wi-fiを利用してスマートフォンからデジカメをコントロールすることもできるようになっている。スマホをファインダーのように使って、スマホからそこに置いたデジカメのシャッターを切るようなことが、この機能を使ってできるようになった。
そういった高度な用途を外部連携機能として使いこなせば、新しいこともどんどんできるということで、これは非常にいい動きだと思う。ただ、入稿してもらう側としては結果写った絵をもらうので、それほど関係ないと思うが、こういうったものを活用して画像入力ができるようになってきているということである。
それから、新しいカメラの出現、ミラーレス機である。一眼ではあるがミラーのないカメラがある。コンパクトデジカメよりも画質や拡張性を望む層に向けて売られている。昔は高画質コンパクトという、レンズの外れない高いコンパクトカメラがあったが、レンズが外れて、なおかつ一眼レフのように撮影できる。一眼レフではないが、一眼のように撮影できる。今年出たカメラではNew Nikon 1とかEOS M2のようなカメラがある。
これは非常に新しいカテゴリーである。システム化されているので撮影者にとって自在な撮影が可能になっている。おまけに、高速なAFが搭載されていたりして、非常に撮りやすいカメラが実現されている。
こういったカメラもしくはスマホを利用するときに、コンパクトカメラなら別に悩まない。普通、sRGBというカラースペースが使われている。これはJPEGの規格から来る。ところが上級コンパクトもしくはDSLR、一眼レフの場合にはAdobeRGBかsRGBかを選ばなくてはいけない。たいていの商用印刷ならsRGBベースでまず間違いないが、ちょっと広帯域、広色域を利用したいときは、ここに流すときにsRGBで撮ったデータを持ってきたら意味がない。きちんと広帯域で撮影できるデジカメ。
普通、デジカメというのは広帯域で捉える能力を持っている場合が多い。カメラがAdobeRGBのカラースペースのモードを持っていたら、そちらにセットしたほうが、後々こういった方向にも使えるので、これを明確に意識して使い分けしてもらうことになる。AdobeRGBにセットしておけば、非常に鮮やかな色調のものも得られる。
入稿用途の現状ということだが、私のようにカメラをやっている人間から見ると、非常にカメラの使い勝手が拡大している。つまり、刷るだけでなくWebで使う用途が非常に増えてきている。少し前はワンソースマルチユースなどと言っていたが、Webで使われる比重が非常に増えてきている。そうすると、「Webに使えればいい」という簡単な考えで、ほとんどの画像をWebベースの解像度でしか使わないというユーザーも増えてきた。
しかし、それを急に「これで刷りたい」と言われたときには、解像度がまるで足りないという話になって困ってしまう。その辺はしっかり意識して、Web用途なのか、そうではないのかというのは非常に大事である。
Web用途でiPadを使ってカタログを見せるというのは最近いくらでもある。そういったiPadでカタログを見せるときには、Webベースだけというわけではなくて、拡大して見せたりするので、それほど低い画素数にしておいたのでは足りなくなるというのは明らかである。したがって、ちょっとした刷りに使える程度の解像度は必要である。
入稿でも印刷用途画像との混在が進んでくる。そのときのトラブルとして、Web用をそのまま入稿して解像度が足りないとか、逆に印刷用の画像をそのままWebに持ち込んで大きいのを貼ってしまうと、重すぎてWebを開くときにとんでもないことになってしまう。
それから、最大画素で撮ったままノーケアで何でも使ってしまおうとするケース。実はこれは結構多い。「十分な解像度だから足りないよりはいいだろう」と言ってこういったデータを貼りまくる。そうすると重過ぎになる。シャープネスが足りないということも起こりがちである。最近の画像は結構立体感の足りない画像が多い。
したがって、ここでお願いしたいのは、的確な処理である。適正なファイルサイズ、適正なシャープネス処理、JPEG画像なら適正なカラーセパレーション処理。それから、いい加減な処理はしないでもらいたい。最大画素のままだったりResoのケアをしないということがないように。シャープネスをほったらかしにしないでもらいたい。
まとめると、デジカメやスマートフォンが進化していくが、やはり基本は大事である。例えば貼るときに300dpiを大きく超えていないか。平気で1000dpiを超えるような画像を貼っているという例がいくらでもある。やはりそこは意識してほしい。
その最終解像度にした後にUSMをかける、これがキレのいい立体感のある画像を手に入れるいいやり方である。それから、カラースペースをしっかり意識すること。sRGBなのかAdobeRGBなのか、しっかり把握して使い分けること。
こういった形で、デジカメは進化してきたが、入稿形態が何でも画像を置けばOKという時代になってしまったので、もうちょっと基本に立ち返って正しい処理を見直してほしいというのが今回のポリシーであった。
2014年6月3日TG研究会「デジタル入稿の新常識とワークフロー」より(文責編集)
速乾印刷を実現する資材と管理方法
日本アグフア・ゲバルト株式会社 プリンティング戦略部部長 知識 三富 氏
国内の印刷紙業が8兆円から5兆円、減少の段階である。印刷業界、特に製造部門の変化は著しい。小ロット化が非常に出てきて、増大する損紙、ジョブの台数は増加。納期、品質に厳しい状況である。なおさら、生産コストへの要求が高まっている。
この辺をどう切り盛りしながら、今後の状況にどう対応するか。生き残るためにやっていかなければならないことはどういうことなのか。
アグフア・ゲバルトは単に版を販売するだけではなく、経営革新、革新が必須と思っている。経営改革のために、速乾技術を導入していただき、既存の設備・人材をフルに活用して経営の健全化、儲かる企業への改革をしていただきたいと考えている。
Azuraの速乾印刷を立ち上げていただいている会社は、2013年度まででオフ輪、枚葉印刷含めて35社くらいになっている。
先般、「低環境負荷型ケミカルレスサーマルプレートAzura NEWSの共同開発」で、新聞協会の技術委員会賞を受賞した。日本経済新聞様と日経東京製作センター様が連名で受賞された。
技術委員会賞とは、新聞の製作部門での技術の向上、改善を促進する目的で技術委員会が表彰するものである。
Azuraとは
Azuraは、現像レスCTPプレートでは業界シェアナンバーワンである。90%以上である。
現像ありでは超ロングランCTPである。UVも使えるもので、特長が速乾印刷、省エネ、省資源、品質向上を狙ったプレートである。
シェアナンバーワンの理由としては、プレート制作方法の比較であるが、今までのアルカリの現像方式が、露光をかけて、現像、水洗、ガム、検版、それから印刷工程。もう1つが1世代前のものだが、プロセスレスの露光をかけて、機上現像があった。
私どもがご提供するのは、ガム洗浄方式、現像レスAzuraTS。露光をかけて、ガム洗浄、検版、印刷であり、現像液が不要である。検版ができ、機上現像がいらないという特長がある。
Azuraの現像レスの露光状態は未露光の版が全面的にこういう状態であるが、サーマルCTPで画像部を露光するというところで、画線のところはインキがつくが、これはクリーニングユニットというが、ここで洗浄し画線だけが残り、検版し、即印刷可能という工程である。
Azuraの砂目構造
砂目については、細かい砂目だが、向かって左が一般的な砂目。右がフラットサブストレートである。よく見ていただきたいのが、画線と非画線のエッジの部分、砂目の構造が大中小になっているが、フラットサブストレートは均一な砂目になっている。
ベースとなる砂目が細かいこと、より正確な画像形成を可能とする。また、現像液を使用しないために、画像形成の安定度が保たれている。別名デジタルプレートと言われている。
露光をかけてそのまま画像、劣化がほとんどないということである。つまり、カラーマネジメント軸の運用形態の印刷会社さん、クライアントをお持ちの会社さんは、非常に品質標準化がしやすいプレートということである。
まず、先端の砂目構造だが、イメージ的には大中小標準的な砂目だが、フラットサブストレートをよく見ていただくと、本当に均一なものである。水が絞れ、大中小の水の被膜を薄くしたいけど、一般的には砂目はできない状態である。
これは薄紙を刷っていただくとすぐに分かる。ファンナウトが出るかどうか。非画線で水持ちが良ければ、汚れないが紙に対してのダメージは大きい。その他に対しても大きいのである。
要するに、水を抱いている分だけ、インキの中に乳化するという原理が働くのである。つまり、砂目の構造違いで印刷の技術は変わるということである。
これは、一般的にアグフアで刷った、印刷条件を整えたものである。50%の網。98%の網の抜け。2次色の色の鮮やかさ。相当よく出る。ガモット色域を数字で拾うと非常によく出ていることが分かる。特に3色のグレーの鮮やかさ。格別なものである。プロセスの今お使いのインキでできるのである。すごいことである。
安定した色の再現。3点グレー。当然、こういう状態だと何が出てくるかというと、ハイライト、中間、シャドーのところが確保できる。この版を使うと、デジタルプレートといわれるほどの、データイコール、劣化があった版、もしくは変動があった版、経由してやるのではなく、版自体が安定しているので、印刷のところも安定させると、こういうものも比較的安定しやすいということになる、
私どもはこういう版を使い、オフセット印刷の原理である技術を抱き合わせた形で、印刷の工程の標準化、色の再現の標準化、速乾に取り組んでいる。枚葉油性、UV、オフセット輪転、低温乾燥も含む。
一昨年、去年、お客さんのところを回りながらやったが、そこのユーザーはオフ輪3台お持ちで24時間回っていて、インキの値段が1億8000万くらい使っていた。約1年、アグフアの版を使って適正化した結果、今年の5月に集計が出て、1割必ず出ている。つまり、1800万である。インク削減の数字しかお聞きしていないが、10%は削減。これは大きなことである。
実際に枚葉でどういう結果が出ているか。速乾技術により確実なコスト削減ということで、当然、印刷資材の延命が出ている。ローラーについては、2倍~3倍近く。枚葉であるが。毎日のメンテをしっかりするから、保つ。同時にコスト削減。損紙、インキ。それから品質改善の超安定というと、吸い出しの濃度安定、間違いない。網点の再現。特に枚葉で乾きが悪いという、特殊紙のバンヌーボ。これは1時間くらいで断裁できるのである。1時間あれば十分である。
それから超薄紙、ファンナウト。トライダウン。先ほど見ていただいた色彩値向上ということで2次色、3次色の鮮やかさ、これは間違いない。
当然、生産性の向上、A能率、B能率、段取り時間、ジョブの点数。それから印刷トラブル解消。全ていいことづくめである。これは現場、もしくは技術者さんの置かれている立場の前向きな姿、ご努力の結果である。版だけの問題ではない。ただし、版はこういう方向にもっていけるということである。
オフ輪の場合。速乾による確実な利益確保ということで、オフ輪ユーザーさんは紙支給が多い。ただし、2番目のインキ代については支払い額が大きい。諦めているユーザーが結構いる。「うちはこうだから」、「版くらい変えったって、なんでそんなもの出るのか」と。オフ輪をお持ちの会社さん、是非、チャレンジしていただければと思う。
また、乾燥温度を下げるのでヒジワ。特に薄手の微塗工紙については、ヒジワの軽減もかなりできる。ある会社では、枚葉で刷ったのかと言われるほどだそうである。
印刷のトラブルは物理現象なので、何らかの原因がある。皆様の中で、こういったことが日常茶飯事、起きているのかなと思う。
例えば、地汚れし易い。濃度が安定しない、刷り出しが不安定、乾燥が悪くなった。また、ドライダウンが大きい。網の抜けが悪いなど。ここをどのよう形に切り分けて判断し、訂正してその方向にもっていくのか。これが印刷会社さんのあるべき姿で、その積み重ねで利益確保ができるのではないか。
アグフア診断
機械を丸ごとスキャンして診断する。2日間の工程で、連続的に継続していく。ポイントは水舟、チラーの温度、壺の温度、版面、ゴム胴。シンプルに考えているが、ここが重要である。計ると見えてくる悪さ。利益が取れる状態からそうでない状態。こういうことをやっていかないと、機械のトラブルも未然に防げないということである。版面温度とか壺の温度、ゴム胴温度とか水舟温度など何が悪いのか調べていく。
計った結果、赤丸のところに非常に問題がある。これはすべて直せることである。壺の温度とか水舟温度、そういったものは直せるのである。
1色目が1度違う。版面とゴム胴。たかが1度であるが、これが大きな問題である。トラブル発生が多い要因。縦軸に温湿度、横軸に時間。24時間計っている。ここでも水舟の温度と給水タンク、印刷機の周りの温度と湿度を取っているが、水舟の温度で一番重要なことは、各ユニットの温度が違うこと、左右の温度が違うこと。これはオペレータにとっては問題がある。
次は、ロールの条件確保。まず、印刷機というのは各ロール、問題なく仕事をさせないとならないのである。各部門のチェックをしながら、最終的にはインキロールは完全に親油処理。水溶性のものがあったら絶対にあったらだめということである。
一方、給水ロールは、最終的にチェックして給水の親水処理。油性のものがあってはいけないのである。真逆である。特に給水ロールは、運転中でもちょっと風があると水膜が切れて汚れるという現象が起きるので、十分にそれなりの手当をしていかなくてはいけない。
これは非常にまずいパターンである。ニップがだぶっている。水が切れない原因とか耐刷にも問題がある。これは驚きだが、版面が錆びている。
では、印刷機の構造と条件がどうなるか。印刷機の原理原則を言うと、印刷機側は4色どこも、温度、印圧、どこも一緒にならなくてはいけないのである。2つ目はインキメーカーがよく考えているのだが、機械はすべて平らになっている。プロセスインキは全部そうである。相手の機械が平らでないと、印刷機に乗せるインキは墨がやや堅くて、黄色が一番柔らかいのである。トラッピングを重視するために、インキの乗りを安定的に印刷するために、そのようにしている。そこに印刷機側が各ユニットの温度差があったり、まちまちな印圧だと印刷にならない。安定するまでにヤレ紙をジャンジャン流して、安定させるということがある。
乾燥のメカニズムのもう1つが、酸化重合。これは空気中の酸素と重合し酸化被膜を作る。酸素と結合するというものである。
もう1つ同時進行で、紙の上にインキが乗った場合、浸透するのである。インキの中から溶剤、乾性油、顔料。紙の中にも酸素を持っているので、紙の繊維に沿ってすっと入るのである。すごいスピードである。オフセットの1度目から2度、3度、4度あるが、この間にインキがセットに入る。印圧、紙、インキの堅さ、水の入り方。微妙なバランスである。これが崩れるとヤレ損紙が非常に増えるのである。
原理としては、酸化重合と浸透乾燥の組み合せ。特に紙に乗って浸透し、ゲル化が入る。やや印刷の直後はベトベトすると思う。そのベトベトしたところからすぐに酸化重合が入り、乾燥が入る。
ゲル化直後から、UVだったらUVランプがポンとつくのである。オフ輪はそのまま乾燥の高温高熱でバンと乾く、酸化重合はそのまま自然乾燥ということになる。
非常に微妙なバランスでとっているということである。
それから汚れのメカニズムである。これはオフ輪も枚葉もUVも一緒である。原理としては、黒いラインが版である。水着があり、インキ着。このインキ着のところにインキがやや勾配になっている。水がここから上に上がろうと練られて、最終的には4本目のローラーで水のバランスをとって汚れを回収している。こういう状態になった場合、インキ着の3、4が強い、もしくはニップが強かったり、インキのバンランスが取れていないと水の膜より強くなる。これが何かというと、汚れである。汚れを解消するためには何をするかというと、水を上げるだけである。単に水を上げていくだけである。
これが今起きている印刷の現状である。つまり、乳化のメカニズムと地汚れのメカニズムは背中合わせである。
ではどうするかということである。
過剰乳化のギリギリのラインで印刷しているので、ブロッキングとか濃度変動などが起きてしまうのである。乾燥のメカニズムはローラーのところを調整していただく。プラス、Azuraの版は、同じように水が切れるのである。印刷条件がもともといいところについてはそれほど差がないが、柄、もしくは薄紙をしていくと、かなりその差が出てくる。
つまりインキの厚盛りをすると、柄が多いと、この中にインキの中に練られてしまい、その差があまり見えなくなる。またインキの中からはき出す水の量もある。総合的に見ると、水を絞れるので、この分だけ濃度が上がる。
濃度が上がった分だけ送り量を下げて、水に対するインキの量を適正化する。これが速乾の原理であり、まずやらなくてはいけないことである。
オフ輪はこの効果でインキの削減量10%くらいいっている。実機量の検証とほぼ同じような状態だと思っている。
速乾もそうであるが、高濃度とか網点再現とか、2次色、3次色が鮮やかである。皆さんでもできるのではなかろうかと。ただ、しやすさから言うと、安定度。他社さんの水を抱ける版はずっとやっていると慣れてしまうのである。私どもはプロ仕様というか、要は範囲がちょっと狭い。
だからそこを超えると汚れる。超えないところのアジャストを皆さんで努力して作っていただきたい。決して難しい話ではない。
私どもがまだまだやらなくてはいけないと思っているのは、オフセット印刷の原理原則。インキの特性、乾燥のメカニズム、水の働き、色の再現。濃度をきっちり決めていただく算出方法。それから印刷のトラブル、解消方法。印刷の適正な維持管理の方法、数値化ということである。
そういうことをシミュレーションできるソフトも出てきている。印刷機は精密機械。機械だけではなく、化学、画像処理の幅広い知識が必要である。
管理者、機長として判断の遅れ、間違いはロスを増大する。アグフアが今、力強く進めている品質向上とか、生産性向上、現場のモチベーションアップ、営業活動の活性化、環境対応。是非、耳を傾けていただき、経営のお役立て、改善、利益を取っていただければと思っている。
2014年7月15日「速乾印刷を科学し、そのメリットを検証する」より(文責編集)