「テキスト&グラフィックス部会」カテゴリーアーカイブ
トピック技術セミナー2021 オンライン
トピック技術セミナー2021 オンライン
フォトイメージングの現在・未来
B2B2Cモデルに挑戦する印刷会社
一般に、消費者(Consumer)向けの製品やサービスを提供するビジネスをB to C(Business to Consumer)モデルという。B2Cと表記することもある。それに対して、企業対企業のビジネスが、B to B(B2B:Business to Business)モデルである。
印刷会社の事業は、特定の顧客企業との取引がほとんどであり、典型的なB2Bモデルである。ただし、近年の印刷通販・ネット印刷は、一般ユーザー向けと企業・法人ユーザー向けの両方の取引を含んでおり、B2CとB2Bの混合タイプと言えるだろう。
また、顧客企業のB2Cをサポートするビジネスを、BtoBtoC(B2B2C:Business to Business to Consumer)モデルという。代表的なものとして、商品を消費者に届ける流通業などがある。
近年ではECのマーケットプレイスを指して、B2B2Cモデルということもある。Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピング、ZOZOTOWN等々のECサイトを運営する企業は、商品を販売する場所(プラットフォーム)を提供することから、プラットフォーマーとも呼ばれている。
B2B2Cモデルに挑戦する印刷会社
キャラクターや著名人などの画像の権利を保有する企業に対して、フォトブック・カレンダー販売のプラットフォームを提供している印刷会社がある。
Webサイト上でコンテンツを検索し、消費者自身が望む写真を選択して、フォトブック・フォトカレンダーを注文する。そうすると、指定された写真が掲載された製品が届けられる。つまり、この印刷会社はコンテンツを保有する企業にプラットフォームを提供し、消費者、つまりエンドユーザーの注文に応じてフォトブック・カレンダーを製造し、発送する。このようなプラットフォームを通じて、B2B2Cモデルを実現している。
現在、プロサッカーチームに、このプラットフォームを提供している。ファンは自分の好きな選手やシーンの写真を選択し、自分だけのフォトブック・カレンダーを注文することができる。球団は、自社サイトでカスタマイズしたフォトブック・カレンダーを販売することができる。ファンが望む選手や激闘シーンのコンテンツを形にして、ファンに提供することができる。
プラットフォーマーである印刷会社には、営業レスで日々注文が入る、という三社にメリットのあるシステムとなっている。
今後は、スポーツチームを始め、さまざまな分野でコンテンツを保有する企業に売り込む計画だという。
(研究調査部 千葉 弘幸)
関連セミナー: 11/30(金)「フォトイメージングの 現在・未来」
生活者のデジタルシフトに対応するDM
10月26日に実施した印刷総合研究会「実践!デジタル×紙×マーケティング」では、コロナ禍でのDMへの影響やパーソナライズ化や デジタルマーケティングとの連携 が進むDMの現状についてトッパン・フォームズ(株)の今井尋氏にお話しを伺った。
続きを読む静かに浸透する電子図書館サービス
2020年から2021年にかけて、コロナ禍や緊急事態宣言の余波で公共図書館が相次ぐ事態となった。また、大学でも大学構内や図書館などへの立ち入り制限が行われている。このような状況への対応策として、電子図書館や電子図書館サービスに注目が集まっている。
本格普及が近づく
電子図書館とは、広義ではインターネット経由で書誌・文献を検索するサービス、電子書籍や音声・映像などデジタルアーカイブを提供し、利用するサービス、あるいはこのようなシステムを備えた図書館などの総称である。
国内では、公共図書館などが紙の図書の貸出しに加えて、電子書籍の貸出しを行う事例が増えており、これらを電子図書館とすることも多い。
公共図書館などで実施されている電子図書館とは、インターネット経由で貸出し可能な電子書籍を検索し、一定の期間内に閲覧することができるサービスである。期間が終わると、自動的に閲覧することができなくなる。図書館に来館し、窓口にて図書の貸出し・返却する手続きも必要ない。
また、大学図書館などでは、電子ジャーナルやデータベース、電子書籍などを随時閲覧するサービスが行われている。特に貸出期限などの概念もなく、必要な箇所を閲覧したり、データ利用することもできる。
電子図書館のメリットとして、第1に挙げられるのは、インターネット経由で24時間、いつでもどこでもアクセス可能であることが挙げられる。電子書籍であるため、テキスト読上げや文字拡大など、アクセシビリティ改善も実現可能である。デジタル化により資料の劣化防止や保管・事務作業を軽減することもできる。ネットワークに接続さえできれば、PCやOS、スマートフォン・タブレットの種類にかかわらず、アクセスして利用することができる。
既存の公共図書館などでは、その規模や立地、蔵書、設備や人員など、個々の施設の充実度は同等ではなく、地域格差が大きいことは明らかである。今後、電子図書館サービスが普及すると、そのような格差を解消することもあるだろう。
一方で、現時点では発展途上のサービスであり、貸出可能な電子書籍やコンテンツが不足していること、公共図書館などでは予算措置が十分でないことなどが課題となっている。
電子図書館サービス事業の特徴
公共図書館の多くは、民間の電子図書館サービスを利用して電子書籍の貸出しを実施している。現在、このようなサービス事業を提供している主な事業者として、下記がある。
■図書館流通センター(TRC) 『LibrariE & TRC-DL』
大日本印刷、日本ユニシス、図書館流通センター、丸善などDNPグループが開発・販売するクラウド型電子図書館サービスであり、国内実績でNo.1となっている。提供しているサービスの『LibrariE』は、後述の日本電子図書館サービスによる。
■メディアドゥ 『Over Drive』
2014年に米国Over Drive社と戦略的業務提携をおこない、電子図書館サービスに参入した。Over Drive社は、世界No.1規模の電子図書館プラットフォーム企業。
■丸善雄松堂 『Maruzen eBook Library』
丸善雄松堂が開発・運営する教育・研究機関向け電子書籍提供サービスで、専門書や教養書、学術雑誌などを中心としている。
■紀伊國屋書店 『KinoDen(キノデン)』
紀伊國屋書店が提供する学術系和書の電子図書館サービス。
■日本電子図書館サービス(JDLS) 『LibrariE(ライブラリエ)』
2013年、KADOKAWA、紀伊國屋書店、講談社により設立された企業で、電子書籍貸出しサービスを行っている。2016年に大日本印刷、図書館流通センターが資本参加している。
■ネットアドバンス 『ジャパンナレッジ』
2001年、小学館によって設立された企業。80種類以上の百科事典や辞書などを一括検索し、情報を入手できるサービスを展開している。大学図書館を中心に、公共図書館や中高、一般企業向けにも提供されている。
■国立国会図書館のデジタル化事業
国立国会図書館は、2001年から所蔵資料のデジタル化を進めており、インターネット上で閲覧するサービスを提供している。
期待されるサービス
コロナ禍によって、企業ではテレワークの導入が進められている。また、大学や高校でもオンライン授業が増えている状況がある。さらに、小中学校ではGIGAスクール構想が前倒しで進められている。このような状況の中で、図書館の利用形態として、電子図書館サービスの比重が大きくなっていくことは必然だと言える。
電子出版制作・流通協議会が発行する『電子図書館・電子書籍貸出サービス調査報告2020』によると、図書館流通センター(TRC)の図書館向け電子書籍サービスにおける2020年4月の貸出実績は前年比423%、同5月では526%と急増したという。また、同年4月時点の電子図書館導入は96自治体であったが、10月時点では114自治体となった。
今後も、教育・研究機関において上述のような電子図書館やサービスの利用が増えていくこと、また、公共図書館においても電子図書館サービスがさらに充実されていくことが予想される。
(研究調査部 千葉 弘幸)
稼働実績の見える化から改善成果の見える化へ
標準作業手順、標準工数の設定とスキルマップの作成、活用に向けて
続きを読む定着しつつあるオンライン校正
2020年4月に新型コロナウイルスに関わる最初の緊急事態宣言が発出されて、1年4ヶ月以上経過した。現在も、多くの都道府県で爆発的な感染拡大の状況となっており、未だコロナ禍の収束を見通すことができない。
印刷ビジネスにおいても、クライアントおよび印刷会社の双方で、広くテレワークが実施されている。そのため、従来のような校正紙のやりとりから、オンライン校正に移行するケースが急速に拡大している。
PDFを介した校正や、ワークフローRIPのオンライン入稿・校正・検版機能は、以前から実現されていたが、実際にはそれほど浸透していなかった。校正紙のやり取りに慣れた発注関係者や営業担当者に、新しい業務フローを提案することは容易ではなかったためである。
デザイン制作や出版物の編集制作におけるオンライン校正は、オフィスでも自宅でも校正作業がおこなえ、一斉通知やチャット機能により関係者間のコミュニケーションも容易である。プロジェクト全体の進行状況を共有することもできる。
印刷会社では、印刷入稿から赤字校正・プリフライト・デジタル検版などをオンライン化することで、顧客サービスや納期短縮、品質管理の面で大きな効果を上げることができる。つまり、オンライン校正は印刷ワークフローのDXそのものだと言える。
実際にオンライン入稿・校正に移行した印刷会社のほとんどが、社内業務の大幅な効率化と顧客サービスの向上を実現しているという。クライアントからの評価も高いようだ。
印刷物特有の色校正をどうするかは、引き続き課題とされるだろう。しかし、コロナ禍が収束したとしても、オンライン校正が印刷ワークフローのスタンダードとして、このまま定着することは間違いないといえる。
(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)
稼働実績の見える化から改善成果の見える化へ
正確な稼働実績の把握(見える化)をベースとした改善活動の進め方について、標準作業手順、標準工数、スキルマップなどをキーワードに議論する。