テキスト&グラフィックス部会」カテゴリーアーカイブ

『印刷白書2020』発刊記念セミナー

本研究会では、2020年10月発刊の『印刷白書2020』から主要なトピックを解説する。コロナウイルスによって始まったニューノーマルの時代に印刷ビジネスがどのように変わるのかを議論していく。 続きを読む

進化した自動組版と活用事例

DBなどを活用した一括処理や自動組版は、DTPが普及する以前、20~30年前から行われている。その時々のシステム環境や技術を取り入れ、さらにその時々のニーズに応じて進化を続けている。しかし、歴史があるから完成したとは言えない現実がある。つまり、印刷原稿やそのデータはいつの時代も完全ではなく、自動化によって校正の精度アップやミスの削減が進んだだけだとも言えるだろう。

続きを読む

なぜあなたの会社のMISはうまく動かないのか?

印刷会社におけるテレワークへの移行のネックのひとつが紙の伝票と承認印によって組み立てられている業務フローである。さらに、精緻なデータに基づく経営判断や製造の自動化を推進するうえでもMISのよりレベルアップした運用は今後欠かすことができない。

続きを読む

『ロウソクの科学』とデジタル印刷

出版市場が低迷しており、オフセットで大量に印刷して書籍のコストを下げ、大量に販売するというモデルが通用しにくくなっている。
一方でデジタル印刷が進化し、出版分野でも積極的に利用されるケースが増えている。例えば、在庫を持たないオンデマンド出版や極小ロット重版のようなフレキシブルな生産方式が増えつつある。

『ロウソクの科学』と緊急重版

2019年10月、リチウムイオン電池発明の功績によりノーベル化学賞を受賞した吉野彰博士が、自分の原点は『ロウソクの科学』という本であるとコメントし、話題となった。

KADOKAWAは、その翌日に『ロウソクの科学』(角川文庫)、『ロウソクの科学 世界一の先生が教える超おもしろい理科』(角川つばさ文庫)の緊急重版を決定し、プレスリリースやSNSを通じた広報活動を行った。メディアでも取り上げられ、書店からは注文が殺到したという。

そして自社のデジタル印刷機器で印刷・製本し、2営業日で書店に並べた。その結果、重版累計10万部を販売したとのことである。

 角川文庫『ロウソクの科学』緊急重版2万部決定

(※KADOKAWA 2020年3月期 第2四半期決算説明資料より)

話題性の一番高いタイミングで緊急重版を決定し、発表した。さらに、通常10営業日以上のところ、わずか2営業日で製造・出荷した。これらは、自社内にデジタル印刷設備(輪転式大型インクジェット機)を保有するKADOKAWAならではの動きと言える。この事例のようなスピード感のある出版活動は、今後の参考となるのではないか。

小ロット出版とデジタル印刷

出版社が自社内にデジタル印刷設備を持つことは、資金面や人材面など容易ではない。生産設備を持つということは、機器を維持管理し、書籍を製造するだけでなく、資材の調達や保管、品質管理、梱包・発送などの業務を遂行することになる。
むしろ、印刷会社がそのような部分を代行し、スピード感のある出版活動を支えていくことの方が現実的だと考えられる。

また、『ロウソクの科学』は文庫という体裁であり、版型や用紙などの仕様が標準化されていたために、緊急重版がスムーズに実現したのではないか。つまり、出版分野でデジタル印刷を効果的に利用するには、仕様の統一などある程度の制約が伴うという側面もある。

書店・流通など出版界では、高い返本率が収益を圧迫しており、大きな課題となっている。デジタル印刷の活用がそのような課題を解決するキーになると考えられる。

(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)

 

印刷ビジネスの動向と展望2019-2020

最新データと現時点で予想しうる2020年の与件に基づき2020年の印刷ビジネスを分析する。2019年までの状況を整理、来たる2020年の印刷市場に影響するだろう周辺関連トピックを洗い出し、市場動向を予想する。 続きを読む

2019の印刷関連トピックと技術を振り返る

12月になると流行語大賞や今年の漢字などが話題となり、年末には10大ニュースも発表される。このように1年を振り返ることが多くなる。

JAGATがその年を総括する目的で開催しているイベントがトピック技術セミナーである。1年間の印刷関連のトピックや技術を発表していただく。
12月恒例のイベントとして定着しており、今年で46年目の開催となる。

■これまでの特別講演

近年、特別講演として取り上げた内容には以下のようなものがある。

・2013年「3Dプリンター技術と新ビジネス展開」
・2014年「POD出版サービスNextPublishing」
・2015年「講談社のデジタル印刷と小部数出版」
・2016年「欧州の印刷ネット通販」
・2017年「家庭とビジネスを変えるスマートスピーカー」
・2018年「スマートファクトリーの目指すもの」

印刷ビジネス・技術や出版だけでなく、最新のIT機器なども幅広く取り上げている。

Think Smart Factory2019で見えてきたもの

2019年の特別講演ではホリゾン・ジャパンの宮崎氏に、11月11日~13日、京都「みやこめっせ」で開催された「Think Smart Factory2019(TSF2019)」について、振り返っていただく。

TSF2019では、近未来の印刷工程として自動化、省力化、スキルレスなどのソリューションや印刷業務管理システムと印刷・加工機器との連携などが提示され、密度の濃いセミナーも多数開催されていた。
国内外から多くの見学者が来場されていたとのことである。

オンライン校閲・推敲ツール「文賢」

もう1つの特別講演では、オンライン校閲・推敲ツール「文賢」による文章作成支援を取り上げる。
文章の言い回しや用字・用語などをオンラインでチェックし、適切な表現を提示するサービスである。

近年ではウェブなどの文章を作成するライターの質の低下が問題視されている。このサービスを利用することで、執筆に慣れていない人でも、平易で読み易く、伝わり易い文章を作成することが可能となる。

主要メーカーの講演

Samba JPC関連製品と技術(富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ)

高画質インクジェットデジタル印刷機「Jet Press750S」の基幹部品であるインクジェットコンポーネントを製品化したもので、他の印刷機メーカー向けに先日、発売された。

Primefire(プライムファイア)106(ハイデルベルグ・ジャパン)

drupa2016で発表されたB1インクジェットデジタル印刷機である。CMYK+オレンジ・バイオレット・グリーンの7色でPantoneカラーの95%をカバーし、パッケージ印刷に対応することができる。

先般、国内1号機が共進ペイパー&パッケージ社に導入され、稼働したばかりである。

SCインクとTruepress Jet520HD(ScreenGPジャパン)

「Truepress Jet520HD」はフルカラー対応のインクジェット印刷機で、2006年の発売以来、累計1,500台の出荷実績がある。
SCインクは、前処理やプライマー処理を施すことなくコート紙に印刷することが可能であるため、応用範囲が広いことが特徴である。本セミナーでは、SCインクを中心に解説していただく。

Impremia NS40とナノグラフィー技術(小森コーポレーション)

「Impremia NS40」は、ランダ社のナノグラフィー技術を搭載したB1サイズデジタル印刷機である。超微細な粒子で水性のナノインクをブランケットに噴射し、原反に転写するという画期的な方式で、高速で高品質印刷を実現する。

2020年春から国内のベータサイトとして新和製作所が参加することが発表されており、注目されている。

2019年を振り返ることで、今後の印刷技術とビジネスを考える機会としてもらいたい。

(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)

12/12(火)トピック技術セミナー2019