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HTMLBookとCSSを利用した書籍組版の可能性

現在の電子書籍は、まず印刷の本を作り、そのデータを加工してEPUBを作るというやり方が多い。しかし、この方法ではマスターが2つになるため、管理面やコスト面でもムダが多い。

未来の書籍出版では、コンテンツを一元管理し、そこから印刷の本の組版と電子書籍を同時に作るというワンソースマルチユースが可能になる。
アンテナハウス取締役の村上真雄氏にそのための技術、HTMLBookとCSS組版について話を伺った。

■書籍出版のワンソースマルチユース

Webも電子書籍もHTMLというマークアップ言語で作られている。このHTMLをマスターデータにするという考えがHTMLBookである。

EPUB・Kindle・Web・PDF(印刷データ)など各媒体向けにCSSというスタイルシートでレイアウト指定し組版することをCSS組版と言う。CSSを使えば、マスターのHTMLからEPUB、Kindle、Webへと展開することができる。
ただし、現時点ではCSS仕様が未完成であり、PDF(印刷データ)を生成するには不十分なところもある。

現時点でCSS組版エンジンを提供、または公開しているのは、世界で3社だけである。
アンテナハウスのAHフォーマッターは日本語組版、縦書き、多言語にも対応しており、アメリカのオライリー社でも採用されている。
YesLogic社(オーストラリア)のPrinceは、アメリカの有名な出版社のアシェットブックグループ(HBG)等で採用されている。Princeは、CSSの生みの親であるホーコン・リー氏が関わっている。
オライリー社はブラウザ上で編集環境を共有し多媒体向けに組版する仕組み、Booktypeという書籍制作サービスを提供している。

■CSS組版のユーザー動向

日本のW3C関係者と有志がまとめた「W3C技術ノート 日本語組版処理の要件」(通称:JLreq)というドキュメントがある。XHTMLで作られ、W3Cのサイトで英語と日本語で公開されている。日本語版は書籍としても出版されているが、その際にAHフォーマッターでCSS組版を行い、PDF 出力している。

アシェット社は、世界的に巨大な出版社グループである。米国のアシェット社では多くの書籍において印刷版と電子版を同時制作するために、CSS組版に取り組んでいる。
アシェット社では、著者と編集者はMS Wordで編集作業をおこなっている。構造化を施して制作システムにインポートすると、その時点でHTMLに変換され、それ以降はHTMLでマスター管理する。制作システムはIGP:Digital Publisherというソフトで、CSSでレイアウトし、PDFを書き出す仕組みである。マスターが完成次第、電子書籍用のEPUBも生成することができる。

コンピュータ関連の書籍で世界的に有名なオライリー社では、以前からHTMLとAHフォーマッターのCSS組版で印刷用PDFが作られており、電子書籍用のEPUBも同時生成していた。
新しいバージョンが「Atlas」というシステムで、HTMLBookに対応する予定となっている。

HTMLBookとは、オライリー社が定義したHTML5で本の内容をマークアップする方法である。HTML5に書籍用のタグを追加している。また、XMLの文書変換技術であるXSLTを利用して目次や索引ページを自動生成することができる。
HTMLBookの一番の特徴はオープンソースで仕様やツールが公開されていることである。

■CSSの標準化動向とHTMLBookとCSS組版の可能性

CSSで本を組版する仕様の基本が「CSS3 Page」である。
「CSS3 GCPM」はその一部で、柱、脚注、相互参照など書籍組版に必要な機能を定義する。 現時点のCSSは未完成のドラフトである。CSSの標準化に向けた動きとして、WHATWGグループのCSSBooksという仕様やW3C内での標準化も進められている。

CSS組版の実用化が進むと、DTPに依存しないワンソースマルチユースなど、いろいろな可能性が大きくなる。Web ブラウザ上でCSS組版も可能になる。リフロー型の電子書籍でもページのレイアウトが色々できるようになるだろう。

(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸) 

comico、Antennaに見るスマホ時代のコンテンツビジネス

タテ読みスクロール型Webコミックcomico(コミコ)、ユーザーの好みに合わせたコンテンツを提供するキューレーションアプリのAntenna(アンテナ)。スマートフォン時代に適したコンテンツ提供の手法を2社の事例から考察する。

開催日時:2015年1月23日(金) 14:00~16:00
対象:企画・営業部門、経営層、Webビジネス動向に関心がある方
ゴール:これからの時代に合ったコンテンツビジネスのあり方を理解する。

ユーザーが利用するデバイスがPCからスマートフォン・タブレットに流れてきています。閲覧環境が変わったことで、好まれるコンテンツにも変化が出てきました。

Webコミックのcomico(コミコ)は、スマートフォンで読みやすいようにタテ読みスクロール型で無料で読めるコンテンツを提供、利用者数を増やしています。さらに人気がある作品を紙で出版したりLINEスタンプを販売するなど新しい展開をしています。

キュレーションアプリとは、アプリを立ち上げれば自分に合ったさまざまなサイトのコンテンツをまとめてみることができるコンテンツサービスです。2014年に入りスマートフォンユーザー向けに急激に広がり、いくつものサービスが登場しました。グルメ、ファッション、旅行などの情報を雑誌風のレイアウトで閲覧できるアプリのAntenna(アンテナ)は、約400万ダウンロード(2014年10月時点)に達しています。さらにアプリ経由で商品を購入することができるなど、他のキュレーションアプリとは異なるビジネスモデルを持っています。

今回は、comicoを運営するLHN PlayArt、Antennaを運営するグライダーアソシエイツの2社に事例を紹介いただきます。これからのコンテンツビジネスに求められることやスマートフォン向けビジネスの方向性を知る機会としてご利用ください。

関連記事:”タテ読み”で500万DLを達成!固定概念を捨ててヒットしたスマホマンガ「comico」(DIAMOND online)

【1】Antennaが追求するスマートフォン×キュレーションの世界

株式会社グライダーアソシエイツ 取締役 経営戦略本部担当 ブランドマネジメント室長
ビジネスアライアンス推進室長 荒川 徹(あらかわ・とおる)氏

  • スマートフォン キュレーション業界整理
  • Antenna 問題意識
  • Antenna 追求する世界観
  • Antenna 世界観を実現するためのシステム、編成、ブランディング

【2】コンセプトは“デジタルのトキワ荘”
スマホという舞台で作家と読者の新たな出会いを創出するスマートコミックサービス「comico」が目指すもの

NHN PlayArt株式会社 comico事業部 Growingチーム マネージャー 春木 博史(はるき ひろふみ)氏

  • 650万ダウンロードを突破したcomico誕生の背景
  • comicoが目指すもの
  • comicoの特長
  • 他分野展開(書籍化、海外進出など)

【講師プロフィール】
NHN PlayArt株式会社 comico事業部 Growingチーム
マネージャー 春木 博史(はるき ひろふみ)氏

担当:編集、作家担当/今まで携わった業務(comicoにおいて): 作家発掘、作家への報酬体系(原稿料)整備、comicoサービス企画


【開催・申込要項】

会場

日本印刷技術協会 3Fセミナールーム
(〒166-8539 東京都杉並区和田1-29-11)

参加費

クロスメディア研究会会員:無料(1社2名まで)/一般:10,800円(税込)

申込

Webからお申込み

Web申込フォーム に必要事項をご記入のうえ、ご登録ください。

FAXからお申込み

申込書をプリントして必要事項をご記入の上、 FAX(03-3384-3216)にてお申し込みください。
(クロスメディア研究会メンバーの方は、別途送付の専用申込み用紙をご利用ください)

問い合わせ先

内容に関して
研究調査部 クロスメディア研究会担当   電話:03-3384-3113(直通)

お申し込み及びお支払に関して
管理部 電話:03-5385-7185(直通)