コロナ禍のなかでもいくつかのリアル展示会は開催されている。厳しい経済状況のなかで販路開拓に挑む出展者のなかには、印刷・加工関連企業の姿も見える。
「デザイン」タグアーカイブ
コロナ禍を乗り越えるためにデザインでできること
新しい生活様式のもとで生まれるニーズに応えるために、今後デザインはどんな形で力を発揮できるだろうか。
続きを読む
「製版屋さんのまかない雑貨」~印刷技術を活かした商品開発~
現代の印刷ビジネスにおいては、顧客の多様なニーズに応えるとともに、新たな収益を確保するためにも新商品・新サービスの開発が求められている。去る7月4~5日の2日間、(株)日光プロセスが錆猫ギャラリー(吉祥寺)において「製版屋さんのまかない雑貨」展示・即売会を開催し、製版屋ならではの紙を使った商品を中心に展示・販売をした。
続きを読む
印刷業界向け生産性向上支援訓練のご報告
新型コロナウイルス禍の影響もあり、働き方改革が改めて注目されているが、中小企業が改革と同時に事業を継続的に発展させていくためには、自社の労働生産性を高めていくことが必須であり、そのベースとなるのは社員教育である。
続きを読む
新しい生活様式のもとでリアル文化に触れる
緊急事態宣言の解除を受け、一部の美術館や博物館などの展示が再開されている。新しい鑑賞ルールに従いつつ、リアルな文化に触れる機会を増やしてみてはどうだろうか。
コロナ禍における情報の視覚化
コロナ禍にあって刻々と変化していく状況を正しく把握するために、データを視覚によって伝える、データビジュアライゼーションという手法が注目されている。
中小企業の将来を見据えた事業デザイン
東京都内の中小企業とクリエイターとの協業による新事業創出を目的とする東京ビジネスデザインアワード(TBDA)は、回を重ねるごとに事業化実績を重ねて注目度を増し、参加者の意識改革も進んでいる。
10年生き続けるデザイン
スタンダードなデザインを表彰するロングライフデザイン賞の受賞デザインを通じて、自社の商品・サービスを継続・発展させていくために必要な要素を考えてみる。 続きを読む
ユーザーとともに育つアイデア商品「himekuri」
株式会社ケープランニングが開発した卓上型の日めくり付せんカレンダー、himekuri(ヒメクリ)が、第27回日本文具大賞で機能部門の優秀賞を受賞し、第29回 国際 文具・紙製品展 ISOT(2018年7月4日(水)〜6日(金)/東京ビッグサイト)の会期初日に表彰式が行われた。
himekuriの特徴は365日全ての絵柄を変えていることと、付箋加工されていることだ。
一週間・7日分の日付が一列に並び、左から順に剥がしていく仕組み。
週ごとに基調色を変えているので、今日の日付が一目で分かる。2018年に実用新案を取得している。
▲週ごとに基調色が変わる。今週と来週の色の切れ目が今日だと分かる。
剥がした付箋は、ノートやメモ帳に貼ってオリジナルダイアリーに、また手作り料理を入れた容器に貼って作った日の記録にと、アイデア次第でいろいろな使い方ができる。
ケープランニングのメイン業務は紙卸売業であるが、別会社のカンベビジュアルとともに企画・印刷も手がけている。商品開発も行い、自社運営のECショップ「be-on」を通じて販売している。
himekuriも「be-on」の取り組みから生まれた商品だ。当初はモノトーンの日付だけが印字されたシンプルなデザインで、2017年7月のISOTに出展して注目された。その後、新柄を開発するためにクラウドファンディングを実施すると、目標金額 500,000円に対し1,511,000円と、達成率300%を超える資金が寄せられた。
参考記事:インスタ映えする日付シートとしても使える日めくり付箋カレンダーの新柄を作りたい! | Makuake(マクアケ)
新柄が発売されると、ユーザーが、イラスト日記にhimekuriを貼った紙面を撮影し、インスタグラムにアップするムーブメントが起きた。
インスタグラムで #himekuri や #日めくり付箋カレンダー で検索すると、ユーザーがアップした画像を見ることができる。
2019年版は、サイズを一回り小さくし、ノートに貼りやすくした。ライアンアップは、白とグレーのモノトーンに加え、ツートンカラーを基調に数字を配した「colorkuri(カラクリ)」イラストレーター萩原まお氏のデザインによる「文房具柄」と「ねこ柄」の計4種類。
「文房具柄」と「ねこ柄」は、一週ごとにテーマをもたせている。文房具柄では、穴あけパンチの週や鉛筆の週、ねこ柄では箱入り猫の週、ひな祭りの週など、毎日めくることが楽しくなる仕掛けとなっている。
▲「文房具柄」と「ねこ柄」
himekuriはノートに貼って使うユーザーが多いことから、専用の「himekuri note」も開発した。A5スリムサイズで糸かがり製本によって180度開くことができる。用紙は、薄くて裏に透けない万年筆向きの「トモエリバー」を採用している。
▲himekuri note
バリアブル印刷のユニークな活用事例であり、またSNSを通じてユーザーとともに開発を進めている点が、現代にふさわしいビジネスのあり方を示している。
※掲載画像は、第29回 国際 文具・紙製品展 ISOTでの展示風景。
*初出:「紙とデジタルと私たち」2018年7月26日
(JAGAT 研究調査部 石島 暁子)
デジタル印刷×デザインの挑戦「INK de JET! JET! JET! 3」展
2018年8月1日(水)〜8月13日(月)まで、渋谷ヒカリエ 8Fの CUBE 1, 2, 3で、株式会社ショウエイが主催するUVインクジェットプリントによる展覧会「INK de JET! JET! JET! 3」が開催された。

デザイナー・フォトグラファー・イラストレーターなど、さまざまな分野のクリエイターの参加を得て、UVインクジェットプリントとカッティング加工などの技術を生かしたデザイン作品を展示した。
作品の一部を紹介しよう。
筒井 美希氏(アートディレクター)

「Crow」
反射シートにカラスの写真を印刷した作品。一面真っ黒な画面に見えるが、光を当てると絵柄が浮かび上がる。
清水 彩香氏(アートディレクター / グラフィックデザイナー)

「PRINTING OR PAPER 01」
紙の上にカットした紙を重ね、さらにホワイトやニスなどの特殊インキを重ねて、紙とインクの境界が曖昧になる効果を狙った。
プライマー(*)を土台となる用紙に印刷し、その上にカッティングした紙を手貼りしたという。
*プライマー:用紙に対してUVインクの付きを良くするために使う下塗り剤 参考
千倉 志野氏(フォトグラファー)
ロギール アウテンボーガルト氏(手漉き和紙作家・かみこや代表・土佐の匠・高知工科大学客員教授)

アウテンボーガルト氏は高知県梼原(ゆすはら)町で手漉き和紙作家として活動している。今回は、千倉氏が梼原の風景を撮影し、アウテンボーガルト氏が写真一点一点のイメージに合わせた和紙を制作し、そこにUVインクジェットプリントした。印刷される部分はフラットだが周囲はさまざまな質感をもち、一枚の和紙なのに、まるで額入りの作品を見ているかのような錯覚を覚える。
植村 忠透氏(フォトグラファー)
佐々木 香菜子氏(ペイントアーティスト)
山﨑 哲生氏(インテリアデザイナー)


「ONE(ワン)」
植村氏と佐々木氏によるユニット「CAT BUNNY CLUB(キャット バニー クラブ)」に2018年から山﨑氏が参入。今回は、PET素材でドライフラワー用の一輪挿しを制作した。簡単に組み立て、シールで壁に貼れる。デザインは40種類から選べる。
展示作品は一部を除いて購入可能だ。また会場の一角には展示作品に関連したオリジナル商品の販売コーナーも設けた。

ブランド構築への足掛かり
ショウエイは製版業からスタートし、現在はUVインクジェットプリンターを駆使した大判ポスター、ディスプレイ、POPなどクリエイティブな制作物で定評がある。
「INK de JET! JET! JET! 」展は、2015年と2016年にも開催し、印刷関係者やデザイナーの間で話題となった。2017年には多摩美術大学や東京造形大学で巡回展を実施し、学生や美術教育の関係者にも注目された。
3回めとなる今回は、更に広く消費者にアピールすることを狙った。前2回は印刷実験の要素が強かったが、3回めとなる今回はどちらかといえば、デザインの面白さにスポットを当てる企画となった。
会場は、渋谷ヒカリエの8Fのクリエイティブスペース「8/」の一角にあり、d47 MUSEUMなどのギャラリーやデザインショップが隣接する。アートやデザインに関心を持つ人々がふらっと立ち寄って、インクジェットプリントの世界を楽しんでいた。
今回の来場者は約4500人、商品の売れ行きも好調だったという。
蔦屋書店、伊東屋のほか大手メーカーや美術館などに、クオリティの高いプロモーションツールを提供してきたショウエイであるが、今後はB to C市場も視野に入れ、オリジナルブランドにもチャレンジしたい、そして本展をその足掛かりにしたいという。
今後の展開が楽しみだ。
*初出:「紙とデジタルと私たち」2018年8月29日
(JAGAT 研究調査部 石島 暁子)