【クロスメディアキーワード】発想法と思考法
「発想法」や「思考法」は、メディア戦略立案の際には不可欠な知識となる。両者の適切な活用により、結論に至るまでの「事実」や「前提」を組み立てる論理的な戦略の立案が実現するだけでなく、「MECE(Mutually Exclusive Collectively Exhaustive:それぞれが重複することなく、全体集合としてモレがない)」的な戦術の実行も可能になる。
構造化
問題の根本的な原因を探り、明確に理解できるよう整理する手法として、「構造化」が多く利用される。「構造化」では、表面的な現象として現れた問題の相互関係を整理することで可視化する。アイデアの断片をまとめるために、「ロジカル・シンキング」や「クリティカル・シンキング」などの「論理的思考」を活用する。この手法により問題への対応も対症療法でなく、抜本的な変化を期待できる。したがって「構造化」とは、「複雑に見えるものを幾つかの要素に分解し、それぞれの関係を明らかにし、全体と部分の関係性を明示する」方法であるといえる。
・全体から細部に至るまで各要素間の関係が明確になり、整理された状態で一覧できるようになる
・各要素間の関係に明確な理由(根拠)があるため、導かれた結果には説得力を持つこと・モレやダブりが発生しにくくなる(MECEの考え方を導入するとよい)
・各要素の組み合わせを変更することにより、全く新しいアイデアや問題の解決にも応用できる
などが構造化により享受できる共通の利点である。
さらに「問題点をまとめる」「改善するためのアイデアを創出する」ための代表的な技法として、ブレーンストーミングが挙げられる。
ブレーンストーミング(Brainstorming)
ブレーン(頭脳)とストーム(嵐)から、「頭脳の嵐」と名称がついた会議手法であり、アレックス・F・オズボーンにより考案さた。別称として「ブレスト」「BS」などとも呼ばれる。
企画や戦略の立案や複雑な問題の解決のために、合理的かつ効果的な手法を用いることで、適切な方針により方向性が導かれる。そのためには、考えられる限り全てのアイデアを事前に列挙できる状況を作ることが望まれる。個人により創出されるアイデアの量は、その人の特性により差異があるものの、複数人によるものと比べ、種類や対象などが少なくなる傾向がある。複数の個人により構成される集団の中で意見を出し合い、互いを刺激し合うことでより多くのアイデアを創出する会議手法がブレーンストーミングである。会議の進行役が議案の主旨(テーマや目標)を示した後に、参加者が自由に意見やアイデアを発表する進行となるが、ブレーンストーミングには4 つの原則がある。
1.批判の禁止
参加者の発言を活性化させるため、他者の発言を批判しない。
2.自由奔放
ユニークで斬新なアイデアを促すため、自由奔放な発言を歓迎する。思いもよらない解決への糸口が期待できる。
3.質より量
勢いが重要視される。発言は多いほど好まれる。可能な限り多くのアイデアを出す。
4.連想と結合
ほかの参加者が、一部のアイデアに便乗することを歓迎する。発言の融合や、一部の変更を行う。ブレーンストーミングで提示された意見やアイデアを「特性要因図」や「親和図法」などの技法によりまとめることで、解決すべき問題として「課題」を明確にすることができる。
特性要因図
原因と結果との関係を表した図を指す。「問題(特性)」と、その「原因(要因)」との関係を表す手法として、主にQC(Quality Control:品質管理)の分野で使用されている。魚の骨の形に似ていることから、「フィッシュボーン・チャート」や「魚骨図」とも呼ぶ。QC サークルの生みの親である石川馨博士が考案した。
「特性」とそれに影響を与えるさまざまな「要因」の関係を系統および階層的に整理した図で、右端に「特性」を示す水平の矢線(背骨)を配置し、上下から斜めに接する矢線(大骨)で「要因」を示す。「要因の要因」は順に、「中骨」「小骨」へと分岐する。「特性要因図」は「問題が発生する原因は何か?」を顕在化させることに意味を持つ。「特性」を目的のように表現してしまうと、実際の問題が明確にならないまま願望的な対策が立案される傾向があるため、注意が必要になる。
親和図法
QC における情報整理法を指す。既存の知識では体系化しにくい情報やアイデアをカードに記述し、問題点と解決案を導き出す手法である。川喜田二郎(文化人類学者)が開発したKJ法を起源とする。大きく異なる情報やアイデア、明確でない問題に対し、「キーワード」の意味合いから理解できる「親和性」により「グループ化」や「図式化」され、事象の本質を明らかにすることができる。手順としては、特定の主題に対しさまざまな考えをカードに記入し、関連性や親和性を感じ取ることができるカードを並べ、その理由を記入した「見出しカード」を作成する。親和図法は、「カード化した言語データの意味の近さ(親和性)に着目し、同類項ごとに括ることにより、構造(全体と部分の関係)を明確にする」といった特徴がある。
マインドマップ
「マインドマップ」とは、トニー・ブザンにより提唱された、思考や概念を可視化する思考法や発想法である。「なぜ」「どのように」機能するなどの情報と、それに沿った技法を基に考察される。主題となる「キーワード」や「イメージ」を中心に考え、そこから派生する「キーワード」や「イメージ」を放射状に分岐させる記載を行い、全方向となる360 度が関連する図で示される。思考を整理し、発想を豊かにし、記憶力を高めるために、想像(Imagination)と連想(Association)を用いて思考を展開するための代表的な手法である。記載する情報の多くに「フック」が付与されるため、記憶法としても利用される。
JAGAT CS部
Jagat info 2014年12月号より転載