[DTP]1-3 文字と文字コード

2024.12.9修正
  • 文字データを異なるプラットフォームで出力すると、文字化けではないが文字の形状が一致しない場合がある。

  • 「書体」「フォント」「字種」「字体」「字形(グリフ)」の区別など、文字の同異判定の基準を理解する。

1-3-1 書体

  • 書体とは、統一的な理念に基づいて制作された1組の文字、または記号のデザインであり、タイプフェイス(typeface)と同義である。ある書体における文字の太さ、字幅、傾きなどのバリエーションの集合を書体ファミリーという。

  • 欧文書体は、中世後期のグーテンベルクの活字から、その後ローマ時代に作られたローマン体を活字に置き換えた書体を経て、今に至っている。印刷技術や出版の発展、また印刷物の用途に合わせて可読性、美術性、新規性などを工夫し、多くの書体が開発されている。

和文書体

  • 和文書体は、中国の伝統的「書」に由来する筆書系、伝統的活字書体、庶民文化に由来する江戸文字、写植以降非常に増えたディスプレイ書体、日本独特の仮名書体など、多様な起源を持つ。

  • 明朝体は、中国で宋の時代に毛筆の楷書体を模したものを起源とし、木版印刷で使用された。細く水平な横画、太く垂直な縦画、その他にうろこ、はね、はらいなど図案化された幾何学的な要素を特徴とする。

  • 明朝体のひらがなやカタカナは、明治以降に日本で組み込まれたものである。漢字のような幾何学的ではなく、筆書きの要素を色濃く残す設計となっている。

  • 和文の明朝体は、現在でも可読性の高い書体として書籍や雑誌・新聞などの本文に数多く使用されている。

  • 和文のゴシック体は、明治時代に欧文のサンセリフを模して、見出しや強調したい文字で使用するために作られたとされている。縦画と横画に太さの差異がなく、インキの付く面が広いため、視覚訴求力が高い。現在においては、書籍・雑誌の見出しや本文だけでなく、広告印刷や看板類、パソコンやスマートフォンのスクリーンでも多用されている。

書体選択の基本

  • 書体を決める際、媒体が何か、読み手が誰であるかを考慮することが最も重要である。

  • 小説の本文であれば、読み手がその世界観にゆったりと浸れる書体とすべきである。実際には、明朝体が使われることが多い。

  • 公共のサインのような、万人に対して短時間でコミュニケーションするものは、内容が直感的に伝わるゴシック体が使われることが多い。

  • 同じカテゴリーの書体であっても、ウエイトや設計によってみだしにむいているものもあれば、本文に向いている、ものもある。

  • 明朝体であれば、本文では細めのウエイトで縦横のコントラストが穏やかなもの、見出しでは太目でコントラストが強いものが向いている。

  • ゴシック体でも、雑誌の本文では細めのウエイトを使い、見出しでは太いものが適している。

1-3-2 字体

  • 漢字は、その意味によって字種に分類される。異なる字種は、原則としてそれぞれ異なる字体を有する。しかし、異なる字種が同一の字体を有する場合も稀にある。これらは同形異字と呼ばれ、視覚的には区別することができない。

  • 1つの字種に複数の字体が併存していることがある。それらの字体はそれぞれ異なる字源から成立している場合もあるし、同じ字源から発生しながらその表現が歴史的・地理的に変化していった場合もある。字義、字音が等しい同一の字種でありながら、互いに異なる字体を有する文字を異体字と呼ぶ。異体字のなかで、規範として選ばれている字体を正字体と呼ぶ。

1-3-3 字形(グリフ)

  • 字形とは文字の具体的な形状であり、書体やデザインの違いなど文字の視覚的な差異はすべて字形の違いとして捉えられる。図形文字、グリフ(glyph)と呼ばれることもある。

1-3-4 タイポグラフィー

  • タイポグラフィーは、古くは活版術のことであるが、広く印刷における文字組の視覚効果や体裁の総称として用いられている。

  • タイポグラフィーは、テレビや映像メディアにおけるグラフィック素材の技法でもある。欧米では、書体の歴史的な発展や書体デザインの知識も含む。日本でも、縦/横組、和欧混植、かな混植など伝統的慣習的なスタイルが確立している。もともと正方形の漢字書体を縦にも横にも組むものとして日本のタイポグラフィーは発展した。

1-3-5 符号化文字集合

  • コンピューターは文字を符号化し、その値で識別している。日本語のある文字の範囲(文字セット、文字集合)の1つずつに識別番号を割り、その一式を文字コード(符号化文字集合)という。

  • 異なるコンピューターシステム間での文字データの交換を可能にするには、基本となる文字セットの文字コードは標準化が必要である。

  • 代表的な文字コードには、ASCII、JISコード、Unicodeなどがある。

JIS X 0208

  • JIS X 0208は情報交換用の2バイト符号化文字集合を規定する日本産業規格で、6,879図形文字を含んでいる。1978年にJIS C 6226として制定され、1983年にJIS X 0208と名称変更の上で改正、1990年および1997年に改正された。

JIS X 0213

  • JIS X 0213は、JIS X 0208を拡張した規格でJIS X 0208の6,879字の図形文字の集合に4,354字が追加され、計11,233字の図形文字を規定している。JIS X 0208を包含し、第三・第四水準漢字などを加えた上位集合である。2000年に制定、2004年、2012年に改正された。

Unicode

  • Unicodeは、世界中の言語で用いられる書写体系と文字を扱うための文字コードとして制定された。JIS X 0213など各国の文字コードを包含し、対応付けられている。

  • Unicodeは国際標準(ISO/IEC 10646)として定着し、現在ではパソコンやスマートフォンのOS、Web環境で標準的に使用されている。

フォント

  • フォント(font)は、本来「同じサイズ、同じ書体デザインの一揃いの金属活字」を指す言葉であった。現在はコンピューター画面の表示や紙面に印刷するために利用される字形データの一式を意味する。金属活字と区別して、デジタルフォントと呼ばれることもある。

  • 書体という言葉は、現在ではフォントを数える単位としても用いられている。

  • TrueTypeは、アップルとマイクロソフトが共同で開発したフォントフォーマットで、画面表示やプリント出力を行う。

  • OpenTypeは、アドビとマイクロソフトが共同で開発した。TrueTypeとPostScriptフォント(CFF)を同等に扱えるため、Windows、macOS上でフォントのクロスプラットフォームが実現した。

  • 2007年以降、OpenTypeに相当する「Open Font Format(OFF)」がISO規格となっている。