今日の商業印刷や出版印刷は、オフセット(平版)印刷が主流である。出版の一部および軟包装印刷ではグラビア(凹版)が使われている。凸版印刷の一種であるフレキソ印刷は、包装材料の印刷で使われている。
オフセット印刷は解像性・価格・生産性において、他の版式に比べて優れている点が多く、現在、印刷版式の中で最も多く使われている。
水と油の反発作用を利用し平面の版を用いて印刷する。版の画線部は親油性でインキが着き、非画線部は親水性で水の皮膜で覆われることによりインキが弾かれる。
水の代わりに、シリコーンゴムを用いてインキを反発させる版を使った水なし平版もある。
版の凸部が画線部で、そこにインキをつける。もっとも古くから利用された版式で、活字、活版印刷のほか、シール、ラベル、段ボール、ビジネスフォームなどの分野で用いられている。大部数を発行するコミック誌は、古くからざら紙が使用されており、樹脂凸版を用いた活版輪転印刷が主流である。
版の凹部が画線部で、版面全体にインキを付けた後、版の表面をぬぐい、凹部に残ったインキが転写される。
凹部にあたるセルの深さによって階調を表現しているコンベンショナルグラビアに対して、最近ではセルの大きさによって階調を表現する網グラビアが主流になりつつある。
画線部が孔状になっており、その孔をインキが通過して被印刷物に転写される。
品質管理では、印刷物製作における入力から出力までの工程をトータルに考えなければならない。
オフセット印刷で適切なカラーバランスが得られるのは、印刷紙面上でインキ膜厚が1ミクロン前後で刷られている時である。
インキ膜厚が大きくなると裏つきなどのトラブルの原因となる。膜厚が小さいと印刷物の色調にボリューム感が不足する。
インキ膜厚が増すにつれてカラー濃度も高くなる。印刷工場の実作業ではカラー濃度を測定し、インキ膜厚を管理する。
一般的な黒はK100%(墨ベタ)で表現されるが、その面積が大きい場合など印刷時に色ムラやピンホールが発生することがある。この現象を避けるため、また黒をより豊かな黒として表現したい場合に、CMYの平網(30~50%程度)を加えることがある。このような黒をリッチブラックという。
ISOはオフセット印刷の標準として12647-2を規定している。ここでは印刷条件、用紙の種類、CMYKベタ部の基準、許容誤差、ドットゲイン量などが規定されている。
各国では12647-2に準じた上で、さらにその国ごとに標準を作成している。米国ではG7(SWOP/オフ輪、GRACoL/枚葉を統合)、ヨーロッパではPSO(Process Standard Offset)、日本ではJapan Colorがある。
米国:IDEAlliance、ヨーロッパ: Fogra、日本:JPMA(日本印刷産業機械工業会)は、これらの標準の認証制度を実施している。
Japan Colorは、ISO/TC130国内委員会が中心になり、日本印刷学会の協力のもとに作られた印刷の標準である。1993年に設定されてから何度か改訂され、最新版は「ISO準拠 ジャパンカラー枚葉印刷用2011(略称:Japan Color 2011 Coated)」である。
Japan Color認証制度には、安定した品質の印刷物を作成できる工程管理能力について認証する標準印刷認証の他、デジタル印刷機で安定的に高品質の印刷物を作成する能力について認証するデジタル印刷認証などがある。
DTPからCTP出力する際には、製版印刷の品質管理のために日付・担当・JOB名・刷り色・改版情報(バージョン名など)やカラーパッチ(カラーバー)、テストチャートなど必要な情報をトンボの外側に入れる。
本機校正の品質管理にはカラーパッチを濃度計や色彩計などで計測する。
品質管理上のカラーパッチの役割は、一般にインキの濃度をベタパッチで測り、ドットゲインが正常かどうかを平網でチェックし、CMYの色の偏りをグレーでチェックする。
各版単独の色校正を分色刷りという。特に特色や補色が間違いなく印刷されているかどうかを確認できる。
検版目的は、企画デザイン制作時の修正箇所や修正ミスの確認、クライアントやデザイナーからのゲラ(プリント出力)と入稿データの比較、製版の面付け違いの確認、出力時の初版または一つ前の版との比較確認、印刷のためのプレートの出力状態または版面設計の確認などである。
プレート出力やデジタル印刷の前に、デジタルデータ同士を比較するデジタル検版システムがある。同システムでは、同一RIPによるRIP済みデータを使用して修正前後のデータを比較し、修正ミスや相違を識別する。
検版結果は例えば初校と再校の差分は、ディスプレイで表示し確認するかプリンター出力して確認するのが一般的である。
プラスチックフィルムへの印刷やラミネート加工時の接着性を改善するプライマリー(下地)処理に注目が集まっている。
コロナ処理とは、コロナ放電のエネルギーで基材表面の分子構造を破壊することにより、接着性の改善を図る技術である。フィルムやラベルシールなどの軟包装材を扱う分野や、グラビア印刷やオフセット印刷、スクリーン印刷などでも広く利用される。
VLF(Very Large Format:大型枚葉印刷機)とは、A倍判、菊倍判、四六倍判など通常の倍サイズの枚葉印刷機のことで、同等の大きさの刷版を使用して印刷する。
1つの版の中に複数印刷物を割り付ける多面付け(ギャンギング)を行うことで、1回の印刷で複数のジョブを遂行することができる。
欧州を中心により集中化した生産体制を目的に発展した。
日本国内でもネット印刷(通販)において、大量の印刷ジョブを効率化するためにVLFを導入するケースが増えている。
CMYK4色のインキで印刷するプロセスカラー(プロセス印刷)に対して、プロセスカラー以外のインキを使用する印刷を特色印刷という。
プロセスカラーでは表現できない金銀や蛍光色、企業のCIカラーを特色として印刷する場合がある。また、薄い色を特色に置き換え、印刷効果を上げることを目的とすることがある。
ダブルトーンは、写真集などでモノクロ写真を印刷する場合に用いられる手法である。
グレースケールデータをより階調豊かに印刷することを目的として、2色・2版を使用する。また、暗い部分のディテールを強調することもある。
2色印刷は、ダブルトーンと同様に2色・2版で印刷する手法である。
2色印刷とすることで、4色印刷より費用が抑えられ、1色印刷に比べるとより強い印象を与えられる。チラシなどの一部で使用されている。
オフセット印刷では、早くから多色プロセス印刷による高彩度・広色域印刷の取り組みが行われてきた。
Pantone社のヘキサクロームは、専用の高彩度CMYKインキにオレンジ・グリーンを加えた6色プロセス印刷である。Adobe RGBの色域の大部分をカバーし、Pantone Colorの90%を再現できるとされている。
多色プロセス印刷が可能になった背景には、CTPが普及し刷版品質が向上したことや、版数が増えてもモアレが発生しないFMスクリーニングが普及したことが挙げられる。
東洋インキが提供するKaleidoは、広色域のCMYKプロセスインキである。4色プロセスでAdobeRGBの色域をカバーする広色域印刷が可能とされている。
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