メディアの新しいかたちとして「分散型メディア」という言葉が注目されています。
・分散型メディア、動画コンテンツが先導し爆発普及の兆し(BLOGOS)
・「キュレーション」競争が沈静化、一部メディアは「動画分散型」にシフト(CNET Japan)
自分たちのWebサイト上ではなく、FacebookやInstagram、YouTubeなどのソーシャルメディアにコンテンツを配信するメディアが「分散型(=distributed/分配する・配布する)メディア」と呼ばれます。
アメリカでは数十秒の動画ニュースを配信するニュースメディアのNowThis(ナウディス)が有名です。同社のWebサイトに行くとそこにはニュースは全く載っておらず、「WE BRING THE NEWS TO YOUR SOCIAL FEED. (あなたのソーシャルメディアにニュースをお届けします。)」というメッセージと共に、各ソーシャルメディアへのリンクがはってあるだけです。
「自社サイトへ誘導」から、「人が集まるメディアに配信」へのシフト
今までは、ソーシャルメディアに情報の一部と元記事へのリンクを載せて、自社サイトへ誘導するという使い方が多く見られました。例えば高級旅館・ホテル宿泊サイトのrelux(リラックス)では、Facebookページに力を入れていて、そこから自社サイトへ誘導することに成功しています。Facebook経由のアクセスは60%以上だという話でした。(→関連記事)
一方、分散型メディアの場合は、NowThis のように自社サイト上でコンテンツを掲載することを重視していません。みんなは普段スマホでFacebookやInstagramをチェックしているので、そこに情報を載せればいいじゃないか、というわけです。
私たちにとっても、わざわざリンクを辿ってあちこち企業の公式サイトに飛ばなくても、ソーシャルメディア上で記事や動画を楽しめるので便利です。
人気料理動画サービス「DELISH KITCHEN」
最近では国内でも分散型と呼ばれるメディアが登場し始めています。代表としてよく名前が挙がるのが、 ベンチャー企業のエブリーが運営する料理動画サービスの「DELISH KITCHEN(デリッシュキッチン)」です。
公式サイト上でコンテンツの配信はしていません。”DELISH KITCHEN” というキーワードで検索する公式サイトではなく、YouTube、Facebook、Instagramといったソーシャルメディア上のページが上位に表示されます。
DELISH KITCHENでは、1日に4本ほど、短時間の料理動画をソーシャルメディア上に配信します。社内の料理研究家がレシピを日々開発し、自社のキッチンで調理と撮影もこなします。収益源は、クライアントとコラボレーションした動画を提供するブランドコンテンツです。
スマホからのアクセスが大多数を占めていて、サービスを開始後1年に満たないながら月間動画再生数は4000万回超、 Facebookページはファン数100万以上を獲得しています。
********
「人が集まるところに届ける」という、今までとは逆転の発想ともいえる分散型メディアは、ソーシャルメディア上で全部見れるので友人にシェアしやすく、さらにそこから多くの人に広げることができるのも強みです。
スマホ時代でソーシャルメディアに費やす時間がとても増えているからこそ生まれ、今の時代に合ったサービスとしてキュレーションメディアのように大きく広がるかもしれません。
(JAGAT 研究調査部 中狭亜矢)
関連イベント
動画マーケティングのポイントとビジネス事例~動画学習「スクー」、レシピ動画「DELISH KITCHEN」
2016年08月30日(火) 14:00-16:30【印刷総合研究会クロスメディア部会】