後に残らないのが人気の秘密、最近「消える系動画」が増えている

掲載日:2017年10月2日

印刷物は「かたちに残る」「保存性が高い」特性を持つメディアですが、最近ではそれとは真逆の「あえて保存しない」「時間が経つと消えてしまう」メディアが登場していることをご存知でしょうか?

これらは「消える系SNS」または「エフェメラルSNS」などと呼ばれるもので、新しいコミュニケーション手段として注目されています。

今回は、エフェメラル系SNSとはどのようなものかを紹介します。

「消えてしまう」からハードルが下がる

エフェメラルとは、英語で「一時的な、はかない」という意味です。エフェメラルSNSとは、投稿した内容が一定時間経過すると消えてしまう(=一時的にしか閲覧できない)ため、そのように呼ばれています。

従来のSNSは投稿が残るため、誰でも後から情報を検索できます。情報の蓄積という点では便利ですが、一方で、意識的に削除しない限りはずっと残ってしまいます。ずっと残ると思うと、気に入った写真じゃないと気になるし、気に入るまで修正や選別、加工に準備に時間がかかることもあります。ずっと残ってしまうと、何気なく投稿した内容が大きなトラブルに発展してしまう可能性だってありえます。

エフェメラルSNSの場合は投稿は一定期間しか残りません。そうなんです!後から情報を見ることはできませんが、その分投稿に対するハードルが低くなるというメリットがあるのです。日常の何気ない気づきや長く残しておくほどの内容でもない今の気持ちなども、消えてしまうという安心感から気負わず投稿することができます。また投稿に添える動画は、スマホを縦のまま撮影・視聴でき、撮影後の加工も簡単にできる手軽さがあり、利用を後押ししています。

また他のSNSが持つ「いいね」やコメント機能もないため相手の評価や反応をそれほど意識せずに済みます。最近ではこのようなサービスの人気が高まってきていることから、LINEやFacebookでもタイムラインに一定時間で消える投稿ができる機能を追加するなど、類似の機能を搭載するSNSも出てきました。

参考1:24時間で消えるタイムライン投稿機能を追加!最新版LINE 6.8.0が登場(LINE公式ブログ)

参考2:24時間でコンテンツが消える「Messenger Day」を日本でも提供開始 5,000種類以上のフレームやスタンプなどの装飾を選択可能(Facebookニュースルーム)

どんなアプリが使われているのか

代表的なエフェメラルSNSは、Snapchat、SNOW、Instagram Storiesです。

マイナビが2016年末に10代女性を対象に実施した調査では、8割以上が「SNOW」の利用経験があり、4割近くのユーザーが毎日1回以上エフェメラルSNSを利用していると回答しています。

参考:4割のティーンが毎日使う人気のエフェメラルSNSを調査(マイナビティーンズラボ)

ジャストシステムが2016年10月に20~40代男女を対象に実施した調査では、SNS利用者のうちエフェメラルSNSを利用しているのは1割弱でした。世代によって利用状況にかなり差が見られます。

参考:話題の“エフェメラルSNS”利用率1位は「SNOW」で、「Snapchat」を抜く(Marketing Research Camp)

それでは、エフェメラル系SNSのアプリを3つ、ざっくり紹介します。

SNOW(スノウ)

韓国企業のSnow Corporationが開発・運営するSNOWは、犬やうさぎの耳をつけたりできる画像加工アプリとしても人気。投稿した動画やメッセージは24時間後には見えなくなります。タイマー設定で1回に表示する秒数を設定することもできます。

SnapChat(スナップチャット)

SnapChatは2011年にスタートしたコミュニケーションアプリ。消える系SNSの代表です。撮影した写真や動画(スナップ)にフィルタで加工して相手に送ると、受けとった相手は最大10秒までしか見ることができません。24時間だけ公開する機能も備えています。日本でも「スナチャ」と呼ばれて人気があります。

Instagram Stories(インスタグラムストーリー)

Instagramが24時間後に投稿が消える機能「Instagram Stories」を開始したのは2016年。Instagramユーザーは別途アプリをインストールすることなく利用できることから後発ながら利用者が増えています。投稿は24時間後に消えます。

世界的にはインスタグラムストーリーが勢いがあり、開始1年で1日あたりの利用者数がスナップチャットを抜いたことが話題になりました。

参考:Instagram Stories、1周年を迎えてトップに立つ――チャットサービスのDAU数でSnapchatを超える(Tech Crunch)

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かつてスマホでの動画視聴が一般的になった頃、「動画元年」と呼びオンライン動画に注目が集まりました。現在はエフェメラルSNSの利用者増が示すように、視聴するだけではなくスマホで動画を撮影することが一般的になっています。元年からさらに一歩進んだ状態とも言えそうです。

企業側でも徐々にエフェメラルSNSを使った取り組みが始まっています。企業がプロモーションとしてInstagram Storiesで限定配信したコンテンツを、デジタル印刷でカードに印刷してノベルティとして配布するといった、印刷物と絡めた事例も出てくるかもしれません。

(JAGAT 研究調査部 中狭亜矢)