2017年はスマホVRがアツい。VRプロモーションが注目される理由

掲載日:2017年5月31日

2016年は「VR元年」と呼ばれゲーム、エンターテイメント、プロモーションと広がり、その流れは2017年に入っても続いています。本記事ではスマホVRとVRプロモーションに注目して紹介します。【記事のレベル:★】

VR(バーチャルリアリティ)とは、何か。

「VR」とは、英語の”virtual reality”の略語で、直訳すると「仮想の(虚像の)現実」といった意味になります。
コンピュータ上に作られた空間の中に、あたかも自分が入り込んだような感覚を味わえるしくみのことです。

たとえば、CGで復元した古代の遺跡を上空から俯瞰したり、架空の建物内を歩き回ったり、自宅にいながら富士山の頂上で景色をぐるりと見渡したりできます。人工的に作られた世界を現実のように体験できるので、「人工現実感」という言い方をすることもあります。

AR(拡張現実)の場合は、現実の風景にプラスしてCGなど作られたコンテンツが重ねて見えますが、VRの場合は、CGや撮影された風景全体に自分が入りこみます。ヘッドマウントディスプレイ(頭につけるディスプレイ付きの装置、以下HMD)で視界を覆ってしまうことで、没入感(見えている空間にどっぷり入ってしまう感じ)を味わえるようになっています。

VRを体験するためには、3DCGや360度に撮影されたパノラマ写真・動画などのコンテンツと、それを視聴できるしくみ(YouTubeや専用アプリ、最近ではFacebookでも)、それとHMDや簡易VRゴーグルなどの視聴デバイスが必要になります。

スマホVRの拡がりとプロモーション用途への期待

数年前までVRは高価な技術でアミューズメント施設のような専用の機材があるところか、一部の人が使うものでした。最近ではVRを制作する側も視聴する側も環境が整い、ぐっとハードルが下がってきています。

制作側では、360度動画・写真を今までより手軽かつ安価に制作できるカメラが登場しました。リコーのTHETA(シータ)のように、360度動画・写真を撮影した後かんたんにパノラマ形式に出力できるカメラも人気です。

視聴する側も、専用のHMDを購入しなくてもスマホを使うことでVRコンテンツを視聴できるようになりました。スマホをセットするタイプの簡易VRゴーグルは、プラスチックや紙でてきています。紙製のものはAmazonや家電量販店などで1000円前後で購入できます。がんばればGoogleが提供している設計図と100均で買ったレンズを使って、自分でゴーグルを組み立てることだってできます。

企業でも「体験」を提供するツールとしてVRに注目し、ゴーグルが低価格で提供できるようになったこともありプロモーション用途での利用も増えています。

自治体のブランディングにも使われています。兵庫県の南あわじ市では、都会生活のなかで1人で食事する「孤食」を防ぐコンテンツとして「あわじ国バーチャン・リアリティ」を制作、公開しました。これは1人で食事をするときにゴーグルを装着し、VR動画を見ながら食事をすることで、故郷のおばあちゃんと一緒に食事をしているかのような体験ができるものです。

南あわじ市の食材を使った料理レシピも公開しており、レシピにある料理を作ってVR動画を見ると、よりリアルな体験ができるようになっています。同市にふるさと納税すると、特産品と一緒にオリジナルのVRビューワーが先着でもらえるキャンペーンも実施しました。

2017年もVR需要は増加、「どんな体験を提供するか」の設計がカギ

これらのプロモーションが実現できたのは、ゴーグルが安く提供できたから、という要因もあるでしょう。バーチャン・リアリティではハコスコという段ボール製のゴーグルが使われました。また最近では大村印刷のAuggle S、サンニチ印刷のナナイロスコープなど、低コストでVRゴーグルを製造・販売する印刷会社も出てきています。

安く、好きなデザインに印刷することができる紙製ゴーグルは企業PR・プロモーションと相性がよく、業種を問わず様々な企業で使われています。企業のリクルーティング目的で会社訪問VRとして使われたりもしています。

2017年に入っても引き続きVR需要(特にプロモーション)が高まりそうです。前述のバーチャン・リアリティが「1人で食事する人に、誰かと一緒に食事する」体験を提供して南あわじ市のPRを実現したように、「どんな体験を提供できるか」「それにより何を実現できるか」がVRプロモーションでカギとなります。そういう点では、ARでのプロモーションと共通点も多いかと思います。

(研究調査部 中狭亜矢)

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