身近なAIの代表例としても取り上げられるチャットボット。最近では企業がWebサイトや、LINEなどのアプリ上でチャットボットを導入する事例も増えています。今回はチャットボットのしくみや事例について紹介します。
チャットボットとは「AIで意図を読み取り、自動で応答してくれるプログラム」
チャットボットという言葉は、リアルタイムにテキストで会話する「チャット」と、ロボットの略である「ボット」を組み合わせた造語です。ユーザーからの問いかけに対して自動で応対してくれるプログラムのことを指します。
Webサイト上のお問合せや、乗換サービスでの最適な経路案内、ホテルの予約、社内ヘルプデスクなど、さまざまな用途で活用されています。
チャットボットのしくみを簡単に説明します。今回は「人口無能」とも呼ばれる、あらかじめシナリオを設定しておいて決められた対応をするタイプを例にします。
まずチャットボットがユーザーからの問いかけを受けて、「定型文か、フリーテキストか」を判別します。たとえばチャットボット側が表示する「どちらの問合せですか? →Aについて/Bについて」「〇×についてですか? →はい/いいえ」というのが定型文です。定型文を選んだ場合は、選択肢に対応したアクションやメッセージを返します。
ユーザーが自由に入力したフリーテキストの場合は、チャットボット側で文章の内容を判断します。自然言語解析技術を用いて「これは〇〇についての話題だ」と意図を判別し、〇〇についての問合せに対して返すべきメッセージを生成して返します。
自然言語解析ツールとしては、マイクロソフトが提供している LUIS (Language Understanding Intelligent Service) などがあります。
2016年には、LINEから「Messaging API」、Facebookからは「Facebook Messenger Platform」というチャットボット用のAPIが発表されました。これにより、LINEやFacebook上で動くチャットボットの機能を他の企業が使えるようになりました。
LINEチャットボットの活用事例「ロハコのマナミさん」
LINEは世代を問わず利用されているコミュニケーションアプリです。そのLINE上でチャットボットが利用できることは、ユーザーにとっても企業にとってもメリットがあります。
では、LINEチャットボットとはどのようなものなのでしょうか。例として、アスクルの個人向け通販サイト「LOHACO」で運用しているチャットボットの「マナミさん」を紹介します。
LOHACOでは、2014年からテキストベースのチャット形式で回答するチャットボッ トの「マナミさん」を導入しており、2016年からはLINEチャットボットも運用しています。
LINE上で友だち登録することで、お問合せができるようになります。
よくあるお問合せについてはタップメニューを用意して、ユーザーの選択に対する回答を返します。テキスト入力した場合には、AIで会話の意図を判別し、適切な回答を生成して返します。
従来のFAQでは、ユーザーが企業のFAQページから自分の質問と似た内容のQAを探し、該当するものがなかったら改めてメールなどで問合せをする必要がありました。
チャットボットのマナミさんを導入したことにより、ユーザーは自分の質問をチャットで気軽に問合せできるようになりました。マナミさんでは対応できない複雑な問合せには、LINEのトーク画面でそのままオペレータに引き継げるようなしくみも整え、スムーズに問合せ対応が進むようになっています。
同社リリースによると、お問合せ全体の約4割をマナミさんが担当しているそうです(→リリース)。
チャットボットの効果
チャットボット導入により、以下のような効果が期待できます。
ユーザー側 | 企業側 |
・24時間、365日対応してもらえる ・電話やメールよりも使い慣れたチャットで問合せできる |
・人員効率化、人員削減 |
さらにLINEチャットボットであれば、以下のような効果も期待できるでしょう。
ユーザー側 | 企業側 |
・トーク画面から履歴を確認でき探しやすい ・スタンプなどを交えた会話ができ、気軽に質問できる |
・友だち登録してもらえる ・コミュニケ―ションがある程度自動化できる |
まとめ
技術の進化に加え、プラットフォーム側がチャットボット機能を提供しはじめたことで、Webサイトやアプリ上でチャットボットの導入が増えてきています。ユーザーにとっては、いつでも気軽に利用できるというメリットが、企業にとっては、人件費削減といった効果が期待できます。
(研究調査部 中狭亜矢)