フリーペーパー

※被災した石川県『Fのさかな』クラウンドファンディングご支援を!(~2024年5月31日)
『Fのさかな』クラファンの取組みが中日新聞に取り上げられました。

|フリーペーパーとは
フリーペーパーとは、購読料以外の原資によって無代で継続刊行され、コンテンツが記事・読み物と広告からなる印刷媒体のことをいいます。発行形態が新聞タイプのものをフリーペーパー、雑誌タイプのものをフリーマガジンに分類することができますが、両方を合わせてフリーペーパーと総称することが一般的です。全国的な出版流通網に乗ることなく限定エリアで流通するので、マスメディアと比した意味ではローカルメディアに分類されることが多いでしょう。地域の企業が制作し、地域の記事と広告が掲載され、地域の読者が読む、文字通りの地域メディアです。雑誌コードの管理体系下になく、出版取次店を経由する流通もないので、創刊と休刊に際しての自由度の高い点が魅力の一つです。参入障壁が低いぶん、人知れず生まれて自然消滅していくフリーペーパーも多く、その実態を把握することは困難です。とはいえ、住民に愛されて通巻数百号を重ねる長寿のフリーペーパーもあり、見知らぬ土地で新たなフリーペーパーに出会った時の喜びは大きいものです。

 

|フリーペーパーのビジネスモデル
フリーペーパーは無料なので、発行を支える収入は購読料ではなく、広告費であることが一般的です。つまり、広告費で人件費・制作費・印刷費・配布費といった一連の支出をまかないます。この広告費は日本全体で1353億円の規模があります(日本の広告費2023,電通)。したがって誌面に占める広告の割合は有代誌より多く、記事3:広告7のような誌面構成になることが多いでしょう。配布方法はラック設置、新聞折込、職域配布など様々なチャネルから、読者、ニュース性、コスト等を勘案して最適な組合せを選びます。近年は広告費だけでなく、ウェブ運営、イベント企画、協賛金、通販、コンテンツの有料出版など収入源の多様化が進んでいます。

|フリーペーパーの研究
フリーペーパーの研究の歴史は浅いといえます。出版物の研究の対象は長らく有代誌でしたし、広告物の研究はマーケティング領域で行われてきました。つまり、出版物と広告物の融合体であるフリーペーパーは狭間で置き去りになってきたのです。フリーペーパーの研究は、1990年代後半に始まり、2000年代半ばにようやく本格化し始めたとみられます。フリーペーパーは配布エリア以外では無名なことが多いので、まずは、どこにどういったフリーペーパーがあるかを調べることから始める人が多いようです。記事の割合は有代誌より少ないことがほとんどですが、媒体として何らかの魅力がなければ広告費を獲得できません。そこでフリーペーパーを研究視点で見る時は、その誌紙の発行を支える強みが何であるかを意識することが一つのポイントになるでしょう。

|印刷会社のフリーペーパー
印刷会社は全国に実に約13156事業所があり(令和3年経済センサス,経済産業省)、フリーペーパーをはじめとした地域メディア発行の担い手としての一面も持っています。印刷会社は企画・制作・印刷が本業なので、印刷機や編集者などフリーペーパー事業に必要な経営資源を持つ点が発行には有利なのです。印刷会社のビジネスモデルの大半がBtoBなので、読者が地域住民のフリーペーパーを発行することはBtoCチャネルを開発することにもなり、地域企業として地域活性化をしなければ自社の発展にもつながらないとの思いも強く、自社で地域コンテンツを収集・編集する力を身に着けたいなど、広告収入以外に様々な目的を複合的に持たせたフリーペーパーを発行することで、有形無形のリターンを追求する場合が多いようです。

(JAGAT研究調査部 藤井建人)