GOOD DESIGN Marunouchiで開催された「勇者はUXデザインから生まれる? 人生の大切なことをゲームから学ぶ展」の概要を紹介し、ビデオゲームとデザインの関係を考える。
公益財団法人日本デザイン振興会(以下、JDP)が運営する展示施設GOOD DESIGN Marunouchiで「勇者はUXデザインから生まれる? 人生の大切なことをゲームから学ぶ展」が3月15日〜4月14日まで開催された。
JDPは2021年から、デザインの可能性を新たな視点から示す企画展の公募を行い、そこで選出した企画に沿った展覧会を開催してきた。
*参考記事:漫画はどのようにデザインされてきたか
3回目となる今回は、広告制作会社のたきコーポレーションが応募した、ビデオゲームをテーマとする企画が選出された。なお、ここで用いるビデオゲームは英語表現であり、日本ではテレビゲームという呼称の方がなじみがあるかもしれない。
日本のコンピューターゲーム史
日本のコンピューターゲーム史はゲームセンターの普及から始まった。特に、1978年にタイトーの「スペースインベーダー」がヒットしたことが知られているが、やがて縦型の筐体のアーケードゲーム機が広まっていった。
そして、1983年に任天堂から「ファミリーコンピュータ」が発売されたのを契機に家庭用ゲーム機が普及した。ソフトについても「ドラゴンクエスト」(1986年)「ファイナルファンタジー」(1987年)など、物語性を持ったタイトルが登場した。
また画面表示も、当初の8ビット表示から1990年頃には16ビット表示によるリアルな描写が可能になった。そのためプレイヤーの没入感が高まり、ゲームが単なる娯楽だけではなく、感動を味わいながら、人生の学びを得られるものへと変化していった。
こうして育った子供たちが大人になり、さらにその子供たちもゲームに親しむようになったことで、ゲームは市民権を得ていった。
本展は、このようなゲームの発展史を踏まえたうえで、ゲームをUX(ユーザーエクスペリエンス) デザインの観点から再評価するものである。
ゲームの面白さ・奥深さ・有用性を伝える展示構成
展示のメインは、本展のために開発した学びにつながるオリジナルゲームであり、会期中無料でプレイできた。
そのほかに、企画チームが行った「ゲームから学んだ人生の大切なこと調査」の結果発表、UXデザインの専門家へのインタビュー、各分野の著名人のゲームと学びに関する寄稿文などを紹介するコーナーを設けた。オリジナルゲームは80年代から90年代のゲームセンターに設置されていたアーケードゲームを想起させる筐体に収められ、来場者が気軽に触れるようにした。
画面のデザインも当時に合わせて8ビットのドット絵を用いた。ゲーム初心者でも抵抗なくプレイできるよう、ストーリーとインターフェースはシンプルにしたうえで、要所要所で遊び方のヒントを表示するなどの配慮が行われた。しかし、ゲームの攻略は意外に難しく、隠しコマンドを設置するなど飽きさせない工夫もあった。こうした設計によって、来場者にゲームの面白さ・奥深さ・有用性に気付く機会を提供することを目指した。
ゲームは8タイトルあり、それぞれ成長・勝利・仲間・困難・お金・挑戦・時間・考え方というテーマに基づいて作られた。以下では、その概要を紹介する。
会場では幅広い層の人々が楽しむ光景が見られ、会期中の来場者数は約1万7千人であったという。
本展は、UXデザインの概念をゲームという身近なツールを用いて、広く一般の人々に広める貴重な機会であったといえる。
勇者はUXデザインから生まれる? 人生の大切なことをゲームから学ぶ展
会期:2024年3月15日(金)~4月14日(日)
会場:GOOD DESIGN Marunouchi
主 催:公益財団法人日本デザイン振興会・株式会社たきコーポレーション
公式ウェブサイト →
(JAGAT 石島 暁子)
※会員誌『JAGAT info』 2024年5月号より一部改稿