「続きはWebで」は消えるのか~テレビCMでハッシュタグのなぜ

掲載日:2017年9月6日

キーワードを検索させ自社サイトへ送客させる手法に代わりハッシュタグからSNSへ送客する手法を目にするようになりました。増えるハッシュタグ付きキャンペーンの効果とはなんでしょうか。【記事のレベル:★】

テレビで見かける「#○○」

ある土曜日の夜、テレビを見ていたら花王ビオレのCMの最後に「#お風呂からひとつになろう」というキーワードが表示されていました。これはTwitterとInstagramで行っている写真投稿キャンペーン用のハッシュタグでした。

ハッシュタグというのは半角の「#」とキーワードを組み合わせたもので、TwitterやInstagram、FacebookなどのSNSで情報をカテゴリ分けする目的で使います。SNSの検索ボックスにハッシュタグを入れたり、表示されているハッシュタグをクリックすると同じタグが付いた投稿を抽出できます。

SNSで情報を見つける時に欠かせないものなので、テレビで「#○○」を見た人は、「あ、これはSNSで使うものだな」とわかります。ハッシュタグで表示することで、特に説明がなくてもSNSへの誘導が期待できるのです。

同じような目的で以前からある(今でも見ます)のが、テレビや電車の中吊りなどで見つける「〇〇で検索」というもの。検索エンジンの入力ボックスを模したデザインのなかに企業が意図したキーワードが書かれていて、見た人は「あ、Webで検索すればいいのね」とわかります。人目に触れやすいテレビやポスターからGoogle検索経由で自社サイトへ誘導する手法として広がりました。さきほどの「テレビでハッシュタグ」も同様で、より多くの人が目にするメディアからソーシャルメディアへ誘導する手法です。

増えるハッシュタグ付きキャンペーン

テレビ以外でも、ハッシュタグをつけて投稿をしてもらうキャンペーンをたくさん見かけます。2017年9月時点でも、森永のアイスクリーム、パルム(「#俺の(私の)パルム」を付けて投稿)不二家の「ミルキー(「#ミルキーソング」をつけて動画を投稿)など、特定のハッシュタグを付けたうえでSNSに写真を投稿してもらうキャンペーンがいくつも見つかります。

投稿キャンペーンが増えた理由は2つ考えられます。まず、SNSは多くの人が長い時間利用するメディアに成長したため、多くの人の目に触れる可能性が高いことです。ネット利用時間調査によると、スマホ利用者は1日に約30分、SNSを見たり書いたりしています。10代、20代ではさらに多く、1日のネット利用の半分近くをSNSに費やしています(総務省「情報通信白書2017」)。

次に、ユーザーにハッシュタグを付けて投稿してもらうことで、企業側は、自社が指定したタグが付いた投稿を蓄積することができます。ハッシュタグがついた投稿は、キャンペーン期間中はもちろん、期間終了後も残るため、商品に関心を持った人がタグから投稿を見つけることができます。企業のSNS担当者が投稿する数よりもはるかに数が多く、しかもユーザーによるバラエティにあふれた投稿です。

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「〇〇で検索」「続きはWebで」などでは、検索エンジン経由で自社サイトやキャンペーンページに送客されます。今の時代は、企業発(の宣伝)ではなく、友人や自分と似た立場の人が発信する(おすすめや実体験の)情報をより信頼する傾向があります。例えば、身近なソーシャルメディアのリアルなコメントほどユーザーの心にダイレクトに響きやすいです。

また最近ではGoogle検索ではなくSNSでハッシュタグを用いて情報を見つける人が増えています。かつて「Google検索で見つからない情報は世の中にないのと同じだ」という言われ方がありましたが、「SNSで見つからない情報は世の中にないのと同じ」という世界が来ないとも限りません。

SNSで情報発信することが大事なのは大企業も小さな企業も変わりません。むしろコストをかけられない小さなお店や企業ほどSNSの恩恵は大きいと言えます。

(JAGAT 研究調査部 中狭亜矢)