6月22日に木村博之氏を講師に迎えて開催した「情報を分かりやすい図で伝えるデザイン手法―インフォグラフィックス・ワークショップ」の概略をレポートする。
視覚表現を通じて情報を分かりやすく伝える手法であるインフォグラフィックスは、大量にあふれるデータから物事を把握するために、またグローバル化、多様化時代のコミュニケーションを進めるために、今後ますます重要になっていく。
JAGATとしても、この分野を追求していきたいと考えている。
その一環として、2017年9月に印刷総合研究会「デザインで情報を可視化する〜インフォグラフィックスの動向」、2018年2月のpage2018ではワークショップ「インフォグラフィックスの基礎と活用法」、そして今回、特別ワークショップ「情報を分かりやすい図で伝えるデザイン手法―インフォグラフィックス・ワークショップ」を開催した。
講師を務めるのは、page2018ワークショップに引き続き、日本におけるインフォグラフィックスの第一人者、株式会社チューブグラフィックスの木村博之氏だ。
以下、本セッションの概要をまとめた。
座学「インフォグラフィックスの基礎と活用法」
木村氏が提唱する、インフォグラフィックスの4つのポイント
「コンセプト」「軸」「スパイス」「捨てる」を中心に講義が行われた。
参考:「インフォグラフィックスの基礎と活用法(page2018ワークショップ)」レポート
木村氏が過去に作成した事例や、街で見つけたインフォグラフィックスを題材に、参加者の発言も交えながら講義が進められた。
グループアイスブレイク「タワーをつくる」
A4用紙20枚、ハサミ、セロハンテープを使ってタワーを組み立てるワークショップ。支えがなくても自立し、高さが1mを超えることが目標だ。
まずは各自が設計図を書き、その後グループ内でプレゼンし合う。最も良いと思われる案を選び、グループメンバーが協力して実際に組み立てる。
出来上がったところで、各グループごとに作成のポイントをプレゼンし、振り返りをする。
このワークショップのポイントは
1)自分のアイデアを伝えること
2)作った結果を振り返ること
頑丈で高いタワーを作るに越したことはないけれども、上記2つに比べると主要な要素ではない。
それよりも、
各自の頭の中に思い浮かべた3Dのタワーを紙の上に2Dで置き換えること。
そして、言葉を使って他人にしっかり伝えられること。
作った後、どこがうまくいったのか、あるいはなぜ失敗したのかを振り返ること。
そういうプロセスが大切なのだという。
グループワーク
「自分の仕事や研究を小学生にもわかるように絵と言葉で説明する」
自分の子供や親戚の子供に「どんな仕事してるの?」と聞かれた時の気持ちになって、図解する。
個人ワーク(A4用紙にインフォグラフィックス作成)
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グループ内で個人プレゼン
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代表作選出
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模造紙に、メンバーが分担してインフォグラフィックスを作成
同時にプレゼンのシナリオも作る
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各グループ発表・質疑応答
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講師講評
写真左上:講師の木村博之氏
右上:個人ワーク風景。木村氏がアドバイスを入れる
左下:グループごとに個人ワークのプレゼンを行い、話し合いで一押し案を決める
右下:分担してグループワークのインフォグラフィックスを完成させる。同時にプレゼンのシナリオも考える
運営担当から
ワークショップの良いところは、限られた時間の中で自分がどれだけの知恵と力を出せるのかを検証できること。
そしてグループワークを通じてプレゼンテーションの訓練ができること、他人の意見を理解する姿勢を学べること。
さらに、社外の方々や講師とのつながりができること。
ワークショップを通じて参加者同士が打ち解け、終了後も情報交換する光景が見られた。特に今回のテーマ「自分の仕事を説明する」は、参加者の相互理解を進める上で最適だったといえる。
木村氏との名刺交換も活発に行われ、学びへの意欲が感じられた。
このセッションで大切なのは、優れた結果を残すことより、取り組む過程でどれだけ多くの気づきを得るか、ものごとを見る視点をどれだけ広げられるかだろう。
参加者それぞれが今回の学びを現場で役立ていただければ幸いである。
JAGATの運営スタッフも、参加者のアイデアや表現力、真剣に取り組む姿に学ばされた。
今回の成果をもとに、今後もインフォグラフィックスをテーマとした、さまざまな形のセミナーを企画していく予定である。
(JAGAT 研究調査部 石島 暁子)