包装産業のトレンドを示したJAPAN PACK 2022(日本包装産業展)から、印刷関連の展示を中心に紹介する。
JAPAN PACK(日本包装産業展)は、一般社団法人日本包装機械工業会が主催する包装および関連産業の大型商談展示会で、2年に一度開催される。
JAPAN PACK 2022は、東京ビッグサイトでのリアル展示会が2022年2月15日から18日、オンライン展示会(JAPAN PACK Online 2022)が1月17日から2月25日と、初のハイブリッド開催となった。
リアル展示会の来場者数は10,587人、オンラインアクセス数は506,362。
リアル展示会は、コロナ禍の影響で来場者は少なかったが、会場の至るところで、出展社と来場者の間で熱心なやりとりがあり、関心の高さがうかがえた。
メインテーマは「ともにつくる 未来の包程式」。
展示テーマは、以下の5つを設定した。
「生産性の向上」 DX、リモート生産、物流の合理化など
「地球環境への課題」 脱炭素、資源循環など
「食糧に関する課題」 食品ロス削減や食のロングライフ化など
「安全安心の実現」 流通における品質保持、偽造防止、衛生管理など
「市場の拡大」 異分野の連携、BCP、EC市場など
印刷関連企業の出展も多く、特に環境課題、生産性の向上、意匠性に関する提案が見られた。
持続可能な社会を包装分野からつくる
包装ライフサイクル展示コーナー
大日本印刷株式会社が監修、凸版印刷株式会社が特別協賛、DIC株式会社、日本製紙株式会社をはじめ、関連企業が協賛・協力している。
「ともにつくる未来の包程式=0(ゼロ)」をテーマにパッケージのライフサイクル全体で環境負荷をゼロにすることを目指す提言を行った。
展示コーナーは「社会動向ゾーン」「ライフサイクル展示ゾーン」「ソリューション展示ゾーン」「協賛企業ゾーン」の4つのゾーンで構成。
事例としてバリア性などの機能を付与した紙製包材、リサイクルを容易にするモノマテリアル素材など、参加企業が開発した製品やサンプルが多数紹介されていた。
DNPとデザイナーによる再生材用途拡大のプロジェクト「Recycling Meets Design project」の成果も披露された。
協賛企業各社の環境負荷ゼロを目指す姿勢、取り組みがパネル展示された。
大阪シーリング印刷株式会社
各種ラベラー、フィルム装着機の実機展示とデモを行ったほか、ラベラーの稼働状況を遠隔モニタリングできる「LabeLinkSystem」を参考出展した。
環境配慮製品のサンプルも多数展示。キュットカードはブリスターパックの代替えとなる製品で、シュリンクフィルムを台紙に貼って固定する仕組み。金型不要、プラスチック削減、小ロット・低コストを実現する。ペーパーアテンションは、化粧品や洗剤などの商品パッケージに貼るアテンション(POPシール)をフィルムから紙に置き換えたもの。
株式会社光文堂
オートフィードダイカッター「KBD DigiNukky500」を、デジタル印刷のフィニッシングシステムとしてアピール。「KBD MOLLシステム」は、機器の組み合わせで製袋・グルーシステム・紙折といった加工工程を統合できる。自走式ストレッチフイルム包装機「KBD Motion Wrapping」は、製品を積んだパレットの周囲を回りながらラッピング材を巻きつけていく仕組みで、物流過程の省力化を実現する。
株式会社SCREEN GP ジャパン/株式会社SCREENグラフィックソリューションズ
「ESG経営を加速!」をテーマに、環境・社会・企業統治を実現するためのシステムとビジネス事例を紹介。軟包装向け水性インクジェットデジタル印刷機Truepress PAC 830F、紙包装向け連帳インクジェット印刷機Truepress Jet520NX、シール・ラベル向けのUVインクジェットデジタル印刷機Truepress Jet L350UV SAIシリーズなどによる製品サンプルを展示した。
デュプロ株式会社
物流・通販市場向けに、チラシのピッキングを自動化する「DMコレーターSiシリーズ」を紹介した。ジョブデータを元に、指定セットごとにチラシの組み合わせを変えて丁合する。フィルム包装機のデューラップ DW-A60に繋ぐことで、ラッピングまで行うことができる。
株式会社Too/株式会社ジーティービー
共同出展でパッケージ制作に最適なデジタル校正ソリューションを紹介した。Tooは食品メーカーなどを対象にしたオンライン校正ツール「Ziflow」、パッケージデザイン向け文字検版支援ソフトウェア「フォルトファインダー プロ」などの製品を紹介するほか、メーカーの導入事例も紹介した。
ジーティービーは刷りだし検査・インライン検査を効率化する「CorrectEye SIS」を紹介した。
日本製紙株式会社
「紙でできることは紙で」をキャッチフレーズに、機能性紙素材を展示した。紙製バリア素材「シールドプラス」は、紙に製紙用水系塗工技術を活用したバリア塗工層を付与している。酸素や水蒸気などの透過を防ぎ、内容物の商品価値低下を抑える効果が期待できる。
日本製図器工業(NSK)
パッケージとダンボール包装のデジタルソリューションを展示した。
オンデマンド製函機「Intelligent Box」は、ダンボールのカット・罫線加工を1パスで行い、小ロット・多品種・短納期に対応する。
超高速デジタルコンバーティングマシン「Kongsberg C」は、さまざまな素材、厚み、ワイドフォーマットに対応し、加工スピードや段取りなどを改善する。
消費と暮らしに豊かさをもたらす包装
本展は包装関連システム・資材の展示が圧倒的に多いが、販促の観点から、消費者の感性に訴える意匠性をアピールする展示も少なからず見られた。
カモ井加工紙株式会社
「紙と粘着でラッピングをもっと豊かに」をキャッチフレーズに、デザインマスキングテープのブランド「mt」の新アイテム「mt wrapping series」を出展。和紙製バッグシーラー「mt Sealer」、ラッピングのアクセントになる「丸シールロール」、裏面を水で濡らすと粘着性が出る「mt水貼りテープ」など、色彩豊かで洗練された7種類のラインナップを展示した。小売店に向け、テイクアウト商品のラッピングへの活用を狙う。
有限会社新潟総合紙器
貼り箱の受注生産で培った技術とデザイン力を生かし、オリジナルデザインのギフトボックス、重箱、バッグなどのサンプルを多数展示し、貼り箱の多彩さ、美しさをアピールした。
ホログラム・ワークス株式会社
ホログラム印刷・加工に特化したサービスをアピール。見る角度を変えると、絵柄が変わるアニメーション・ホログラムのサンプルを展示したほか、発注者が自らホログラムを用いた印刷物をデザインする際に役立つ、「ホログラムデータの作成ガイド」を配布した。
消費者の多様なニーズへの対応、働く環境の改善、持続可能な社会に向けての取り組みなど、本展で示された課題は今後もますます重要となっていき、それに対応したソリューションが生まれ、発展していくことだろう。
そのなかで、印刷関連企業が提案できることも、まだまだあるに違いない。
(JAGAT 研究調査部 石島 暁子)