日本語組版とつきあう その47
中とびらの利用
書籍の場合、本文の内容を大きく区切るものとして“中とびら”がある。内容区分が5段階や6段階に及ぶ場合にも、中とびらは、そのレベルを示す方法として利用できる。
中とびらは本文と同じ用紙(共紙、ともがみ)とする例が多い。辞典などでは、特に付録や索引などの位置を明示するために本文とは別の紙(別紙、べつがみ)を使うこともある。
中とびらは、本文の1編1編の前に区切りとして、その部分の標題を掲げる。見出しの標題を中とびらに掲げない場合などでは、本文の冒頭に書名だけを中とびらとして掲げることもある。
なお、中とびらは、裏面を白ページ(裏白、うらじろ)とするのが原則である。
半とびらの利用
中とびらを簡略にした形として、本文中において、表面には見出しを掲げるが、裏面から本文を始めるという形がある(裏白としない)。“半とびら”とよばれている。中とびらよりは、やや区切りの比重が小さくなる。
なお、“半とびら”という用語は、JIS Z 8125(印刷用語―デジタル印刷)に“中扉”とともに“半扉”として採用されている。
中とびらのノンブル
中とびらや半とびらには、柱は掲げないことはもちろん、ノンブルも一般に表示しないのが、現在の習慣となっている。しかし、活字組版で書籍を製作した際には、ノンブルを掲げる例もあった。
印刷用の版を作成する際には、ページの付合せが必要である。この作業を面付(めんつけ)というが、この面付の方法に違いがあった。
現在のデジタル印刷では、面付はデータ上で行う。ところが、活字組版では、組版はページ単位で作成され、さらに、この原版(げんぱん)から複製される鉛版(えんばん)も、一般にページ単位で作成される。このページ単位で作成した原版または鉛版を印刷機の上で、製本した際にページがつながるように組付けている。
この組付の作業や製本作業で、ノンブルは重要な役割をもっており、ページの順序を示すとともに、各ページの刷り位置、折り位置が決めらていた。そこで、特別の場合を除いて、どのページにもノンブルをつけるようにしたほうがよい、と考えられていた。(こうしたことから、ノンブルは一定の位置に置かれることに意味があり、ページにより勝手に位置をかえることは避けるべきこととされていたのである。なお、デジタル印刷であってもページ順の確認や読者のために、特に理由がないかぎり、ノンブルの位置を変える、あるいは表示しない、といったことは望ましくない。)
今日では、前述したようにデータ上で面付が行われているので、中とびらや半とびらにノンブルを表示する必要はないであろう。
裏白の処理
なにも表示するものがない白ページには、柱もノンブルも表示する必要はない。しかし、この白ページにノンブルを掲げた本を見掛けることがある。ノンブルの処理はDTPなどでは自動処理であるので、つい白ページにも表示されてしまう場合がある。注意が必要である。
中とびら・半とびらの次ページの処理
中とびら・半とびらの直後に配置される本文の冒頭には見出しが配置されることが多い。見出しが配置される場合は、見出しの配置のルールに従えばよい。
しかし、中とびら・半とびらの直後に配置される本文の冒頭に見出しがつかない場合がある。この場合、特に縦組の本では、本文のはじまりを数行あけている例がある。一般に2行くらい空けているが、文芸書などでは、4行ないし5行あけている例もある(図1に冒頭を2行空けた例、図2に空けていない例を示す)。本文の冒頭であることを示すためである。
今日の本では、このような処理をしない例が増えている。
書籍は、そのものだけで流通していく。そこで内容の理解を助けるために、書籍そのもので何らかの説明を加えるか、形で示していくことが大切である。その意味で、中とびら・半とびらなどの直後に配置される本文の冒頭に見出しが配置されない場合は、数行空けて、ここが始まりであることを示すアクセントをつけたほうがよいであろう。
(図1)
(図2)