調査結果を説明する時、文字と数字の羅列よりもグラフで示した方が分かりやすい。さらに、グラフを応用した印象的な図解を用いると、理解を助けるだけでなく、物事の関係や変化などを、よりリアルに伝えることができる。
円グラフ・棒グラフ・折れ線グラフは18世紀末から19世紀初頭にかけて、イギリスのウィリアム・プレイフェアによって発明されたと言われ、2世紀以上の歴史を持つ。数値の差異や変化を図形の面積・長さ・位置などで表現し、言語の壁を超えて伝わる優れた手法である。今やMicrosoft Excelによって、コンピューターさえ操作できれば誰もが手軽に作成できるのもありがたい。
しかし、幾何学形態は無味乾燥になりがちでもある。人々の多様な活動の姿や、物事の変化が、なかなかリアルには伝わらない。
複数のグラフやイラストレーションを組み合わせたり、グラフそのものをイラストレーション化したりと工夫することで、より直感的に、より共感できる図となる。
このように、物事を分かりやすい図で表す手法はインフォグラフィックスと呼ばれ、さまざまな媒体で活用されている。
JAGATが年1回発行している『印刷白書』の中で、印刷産業のデジタル化の流れを追う「DTP・デジタル年表」は、棒グラフと年表を合体させたインフォグラフィックスで示している。
▲『印刷白書2018』より
販促・広報用途の図は、一瞬で読者を惹きつける表現を
カタログやリーフレットなど、販促や広報用途の媒体に掲載するグラフは、一目でわかり、読者の興味を一瞬で惹きつける表現が求められる。
JAGATの「page2020」出展案内リーフレットでも、昨年度の開催実績を示すために、イラストを交えたグラフを掲載している。
参考:出展案内(PDF)
page2019来場者の業種を単純な円グラフで表した図と、出展案内に掲載した図版を比較する。
page2019来場者の業種(円グラフ)
page2019来場者の業種(イラスト化したグラフ)
来場者の約半数が印刷・同関連業、印刷関連のメーカー・ベンダーが約2割、それ以外に異業種の方々が来場しているが個々の割合は小さい。
ただし、異業種の合計は約3割になる。この方々は、印刷業界の顧客であり提携先でもあり、つまり印刷業界のパートナーである。異業種の方々に訴求できるチャンスもあることを感じてもらえれるよう、印刷・同関連業、印刷関連のメーカー・ベンダー、異業種を同列に、アイコン入りの円グラフで表現した。
次に職種についても比較する
page2019来場者の職種(円グラフ)
page2019来場者の業種(イラスト化したグラフ)
約3割が営業職という特徴はあるものの、そのほかの経営層、営業、制作、企画、開発などに目立った差異は見られない。それは、特定の職種に偏ることなく、幅広い層に関心を持たれていることとも言える。そこでアンケート結果上位6職種を、業種同様、アイコン入りの円グラフで表現した。
これらの図を通して、印刷・メディアビジネスに関わる多様な人々が一堂に会する、どの層からも期待を持たれているイベントだということが伝われば幸いである。
インフォグラフィックスの手法は限りない。文字や数字の集まりから、一つのストーリーを感じさせるようなグラフィックを作ることができればと思う。さらに効果的な表現を研究し、実践していきたい。
(研究調査部 石島 暁子)