page2015 テーマは変わるニーズ。変わるビジネス。

掲載日:2014年12月1日

page2015 のテーマは、「変わるニーズ。変わるビジネス。」である。

ニーズが変わる。つまりマスからの脱却。それに対して提供する製品・サービスを非マス的なモノにしなければならないことを示している。もちろん変わるニーズはそのほかにもたくさんある。この2~3 年JAGAT では、ジョー・ウェブ博士の著作である『未来を破壊する』の内容について、こだわりを持って考えてきた。「未来を破壊する」というのは、決して印刷業の未来を破壊するわけではない。このまま何もしないと印刷業の未来は明るくないのだから、そういうことなら良くない未来を破壊して、良い未来を切り開きましょう、という趣旨の内容なのである。

JAGAT では現在の印刷業の問題点を挙げ、分析し、その解決方法などを模索してきた。そして2014 年10 月3 日に東京目白台の椿山荘で開催されたJAGAT 大会では、ジョー・ウェブ博士を招聘して「未来を破壊する」をより掘り下げて、かつ「近未来にすべきこと」について語っていただいた。非常に感銘を受ける講演で、大変示唆に富んだものであり、大成功といえる内容だった。この講演の内容こそ「変わるニーズ。変わるビジネス。」なのだが、page2015 では集大成として、「Post 未来を破壊する」として、より良い未来を創るための具体的なビジネスが提示できればと考えている。

製造業としての基盤を持ったサービス業へ

前回のpage2014 の基調カンファレンスでは印刷通販を取り上げ、大変多くの方に参加いただいたのだが、印刷業をコストや納期、効率で見たときには印刷通販が培ってきたノウハウには、注目すべき点が多々ある。品質についても、安定という観点では印刷通販の方が、一点一点印刷条件を調整していく、従来の丁寧なやり方より優れている場合も少なくないということを認めなければならない。印刷通販を使いこなすノウハウ、素直に学ぶべきこと、自社でビジネス化することなどを徹底討論した。

このようにカンファレンスでは、近未来の印刷業について、そのニーズから具体的なアクションまで示唆できればと考えている。効率を追求する路線の最先端を紹介するのはもちろんだが、効率を競い合うレッドオーシャンとは異なる、わが社独自技術にこだわったビジネスも数多く紹介したいと思っている。PODビジネスで大成功している米国のライトニングソース社などは、電子書籍ビジネスも積極的に展開しているのだが、単なるEPUBファイルを作成するだけなら、IT会社でもできる。しかし、本の好きな人というのは紙の本に対してのこだわりが強く、紙の本も欲しいという要望がどこの国でも強く残っている。

ライトニングソース社の場合、「ウチに任せてもらえばEPUBも提供できるけれども、紙の本も一冊から高品質で提供できますよ」というのが大きな差別化(売り)になっているのだ。「IT 会社では、このようなわけにはいきませんよ」ということである。いずれにしろライトニングソースのPOD は、マスからの脱却をいち早く模索した結果のビジネスである。

カンファレンスでは「基調講演カテゴリー」「グラフィックカテゴリー」「CM(クロスメディア)カテゴリー」「ビジネスカテゴリー」「PM(プリンティングマーケティング)カテゴリー」それぞれに「変わるニーズ。変わるビジネス。」を意識したものを企画している。

印刷業を製造業として追求して独自技術にこだわるか?徹底的に効率を追求するか?マーケティングまで総合的に考えてオムニチャネルの中でのメディアビジネスを模索するか?ということなのだが、製造業としても、サービス業としてもアイディア、マーケッターとしての企画力が印刷業として絶妙にバランスされたとき、初めて印刷ビジネスが成功すると思っている。よく印刷業は製造業なのですか?サービス業なのですか?と真面目に聞く人がいるが、二つそろってこそ価値があるわけで、どちらかが欠けていても印刷業の成功にはつながらない。この絶妙のバランスを各カンファレンスでは追求してみたい。例えばUV、速乾、紛体トナー、液体トナー、インクジェットをどう組み合わせてビジネス化するかが大きなポイントで、pageカンファレンスではこの辺の具体的なアクションを考えていきたい。

印刷ビジネスの半歩~0.7 歩先を考えるのがpageカンファレンスだが、現在大事なスキルやノウハウを伝授するのがpage セミナーである。お馴染みの名講義も多いのだが、その名講義も時代に沿って内容もリファインされている。DTP のトラブルも初期のバグ的な内容から、ヒューマンスキル的な問題に移行し、クロスメディア的な問題に発展している。印刷技術にしてもデジタル印刷になると、印刷自体のノウハウよりもどのような印刷物にするか?デジタル印刷の特徴を生かしたバリアブル印刷・One to oneプリンティングをどう活用するか?に置かれてくる。これこそがデジタル印刷ビジネスの成功ポイントなのだが、そんなことをおさらいするのによい機会だと思う。ブランディングやクロスメディアに関しての企画力も、このデジタル印刷の特性を踏まえるなら必ず効果を上げるだろう。

印刷通販で行われているギャンギングでは、遅ればせながら日本でもVLFが動き始めた。日本の印刷業界にVLFが適しているかどうかは、ここで結論付けるには早計だが、デジタル印刷と対比しながら、アナログ印刷 vs. デジタル印刷のどちらにメリットがあるのかを冷静に考えていかねばならない。つまり小ロットの発注で、単にペラものを300 部印刷するならギャンギングは絶大なメリットがあるが、カタログを300 部ずつ小分けに納品(いっぺんに納品するのではなく、無くなってから納品)するということで、細かい変更も対応していくことになるとデジタル印刷に軍配が上がるはずである。いずれにしろ「まとめて1 万部印刷してしまいましょう」というニーズは、もはや通用しないということである。基本知識をセミナーで学習し、ビジネスへのアイデア・応用力をカンファレンスで得ていただいたら、効率よく実戦対応できるはずである。

ソリューションこそデジタル印刷で

page がほかの展示会と異なるのは、単なる製品展示だけではなく、明確なテーマを持って展示会とカンファ
レンス・セミナーが連携して、pageに来れば必ず「何か」が見つかるという点である。そのような思いを強く持ってカンファレンス・セミナー・イベントを企画してきたのだが、正直、こちらの思い入れほどに、皆さんには響かなかったということもあったのは事実である。先ほどから話題に上げているデジタル印刷などはその代表だった。それはコストが高過ぎてアナログ印刷で工夫した方がコスト安になってしまうからである。しかし、ついにインクジェットをはじめとして、オフセット品質のデジタル印刷機が実用化時代を迎えようとしている。従来の印刷が持っていた問題点を解決するソリューションこそデジタル印刷だと胸を張って言えるようになったのだ。個人的にも米国のライトニングソース社を見て、デジタル印刷がこれからの印刷業のメインストリームになることを実感した。「page2015 に来ればデジタル印刷が解る」が合言葉である。

デジタル印刷の品質は紙に負うところが大きい。そのためにわざわざオフセット用紙にプレコーティングなどを行ってインキの拡散を予防し、インキが付きやすく(定着しやすく)しているのだ。活版からオフセットへ印刷方式が変わるときにも同じようなことがあったのだが、今や印刷用紙のほとんどはオフセット用紙に変わってしまった。そして今、オフセット用紙へのこだわりで、インクジェット用紙を嫌がる傾向があるが、デジタル印刷の生産効率とコストを考えると、やはりロールタイプのインクジェットが一つの結論(最終目標というより、踊り場的な目標)として挙げられる。ここで大きなファクターが紙であり、インクジェットはもとより、液体トナーも紙の影響を大きく受けることは周知のことである。したがって欧米では数多くのデジタル印刷用紙が普及している。page2015では、初めての試みとしてデジタル印刷用紙やインキなどのマテリアルを集めて、コーナー化してみたいと考えている。市場には品質の良い用紙も流通し出しているのも事実で、pageがその流れを加速させるためにも少しでも後押ししたいと考えている。正直今は企画途中なので、最終的にどういう形になるか定かではないが、デジタル印刷用紙やインキを集めたデジタルマテリアルコーナーというのは皆さんにとって大きな関心事だろう。

また、伸びる印刷分野としてのパッケージもパッケージ/ シール・ラベルとして一つのゾーンを企画中である。

パッケージは設備を買ったからさあやろうというほど簡単ではないが、一般商業印刷業者にとっても興
味ある分野に違いない。さらにJAGAT ではこの数年地域活性テーマを取り上げてきたが、今回はその成果として印刷会社が取り組んでいるフリーペーパー(マガジン)を全国から集めて、展示、その後の展開まで後押しできたらと考えている。こちらが考えていないようなコラボレーション事業に発展するかもしれないし、全国の印刷会社連携につながれば幸いである。このように、印刷業界に求められているニーズが変わり、それに応えたビジネスが求められている。それを体感し、早めに手を打つためにもpage2015に積極的に参加いただきたい。

(『JAGAT info』2014年11月号)