新聞の価値は下がったのか? 記事No.#1604
掲載日: 2009年07月21日
新聞広告の減少が、年々大きくなってきた。アメリカあたりでは、紙媒体としての新聞の発行が危ぶまれるところまできているようだ。
バブル崩壊以降続いていた新聞広告の減少が、2005年からは定常化し、年々マイナス幅を拡大しつつ推移してきた。そして、昨年秋の大不況の影響を受けて2008年は前年比△12.5%という大幅な前年割れになった。2009年に入ってからの状況は、2月に前年比△31%と最大瞬間風速を記録し、1月~4月の4ヶ月の前年比平均は△24.0%になった。
新聞広告費は、1990年に1兆3592億円でピークを迎え、2000年には盛り返したものの、以降は毎年減少してきた。2008年の広告費は8276億円で、ピーク時の60.9%の規模にまで落ち込んだ。インターネットの6983億円、折込の6156億円に近いところまで落ちてきた。
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もちろん、これは広告費金額であるから、あくまでも広告媒体としての新聞のポジションだが、情報媒体としてのポジションはどうなのだろうか? 図1は、社団法人日本新聞協会による新聞発行部数合計と1世帯あたり部数の推移を示している。<BR>
図1で見るとおり、発行部数合計は2002年から減少に転じ、2005年からは4年連続の前年割れになっている。2000年という年はインターネット普及の影響がいろいろなところで感じられ始めた頃であり、2005年は携帯のインフラが整って、その上に本格的サービスが始まった時期である。<BR>
1998年に対する2008年の発行部数は△4.1%である。この間、日本の世帯数は13.4%も増加していた。それでも発行部数全体がマイナスになったのは、若い層を中心に、1世帯あたり部数が減少したからである。こちらは、1998年から2008年までで15.5%も減少している。
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ここで、部数の推移を少し細かく見てみよう。まず、一般紙、スポーツ紙という種類別に見ると(図2)、スポーツ紙は、2001年以降、一足先に継続的な減少に入っていることがわかる。
㈱ビデオリサーチによる生活者のメディア接触時間の推移に見られるように、1985年以降から内容を変えつつも進んだメディアの多様化によって、趣味娯楽への支出先が増えて、支出の配分が多様になったことが、一般紙に対してスポーツ紙の減少が大幅になった理由ではないだろうか?<BR>
一般紙を見ると、2004年まではほぼ横ばいで推移しており、情報誌としての一般紙の評価は変っていなかった。しかし、2005年以降の減少は、ネットの普及による情報の爆発的増加の影響を受けてのものであろう。
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しかし、発行形態別の推移を見ると(図3)、結局、夕刊購読の減少が全体の足を引っ張っていることが明らかである。逆に朝刊の発行は増加している。夕刊は、娯楽・文化欄の記事が多いことが朝刊との内容の大きな違いであろう。先の種類別の傾向と夕刊の減少、朝刊の増加を考えると、ニュースソースが多様になる中で、信頼できる水準の内容を幅広い範囲にわたって一覧できる情報媒体としての新聞の価値が下がったとはいえないのではないだろうか?広告減少による新聞社の経営と情報媒体としての価値は分けて考えなければならないのではないか?
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ネット、携帯という媒体が、従来にない新たな世界、可能性を開いたのは事実である。しかし、若い人ほど、それらの媒体一辺倒になって狭い世界に閉じこもりがちになることは問題ではないか?幅広い視野やいろいろな価値観を知るために、マス媒体、プッシュ媒体の存在はやはり重要であろう。
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