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新聞社のメディア戦略と新聞印刷はどのように変わるのだろうか。世界的に新聞の部数が伸び悩み、日本の新聞総発行部数も長期低落傾向にあり、2008年は51,491千部で1世帯当り部数は0.98と初めて1部を割り込んだ。
欧米の新聞社の広告モデルの破綻
それでも日本の新聞社は欧米に較べれば落ち込み幅は小さく安定的で、広告収入への傾斜を強めていた欧米の新聞社は、景気後退で各社が一斉に広告費支出を引き締めると、その経営基盤はもろく崩れた。
単なる電子化にも限界
電子新聞に進出しても、その収入は紙の新聞に較べれば桁違いに小さいようで、従来の業容を支える収入源としては頼りない。景気後退によって広告収入は期待できない。インターネットに慣れた読者からの購読料収入も期待しづらい。
どこに収入源を求めるか
そこで、新聞社は(1)媒体価値・収益向上、(2)ダウンサイジング・コスト削減、(3)アライアンス・共有化といった取り組みを掲げて新たな新聞ビジネスモデルの再構築を目指している。海外では週の何日かはPDF電子新聞とし、週の何日かは紙の新聞とするような本紙発行削減の例もある。
新聞印刷にできること
韓国では紙面サイズをコンパクト化してブランケット判とタブロイド判の中間のベルリナー判に移行して好評を博した新聞社もある。また、輪転機のコンパクト化や電子リーダー配信、デジタル印刷機の実用化に伴う他品種小ロットのバリアブル印刷、一つの機械で多品種を刷るハイブリッド印刷などの取り組みも進んでいる。
増える新聞社の積極的な協業事例
たとえば、朝日新聞社は昨秋からテレビ朝日、KDDIとの協業、CBSのインターネットサイトCNET Japanの買収、携帯ソリューション事業の文藝春秋社への提供などの施策を矢継ぎ早に打ち出し、次々と新たなコンテンツ事業を打ち出している。
新聞業界の変化と印刷会社
2009年3月期の上場印刷会社の決算短信では、竹田印刷とセキが具体的に新聞印刷事業への進出、稼働に言及しており、新聞業界の変化は今後も印刷業界に影響を及ぼし続けると思われる。新聞メディア業界で起きていることは、メディア、広告、印刷、それぞれに起きていることの象徴のように捉えて考える必要があるだろう。
7/31のセミナーでは、変わる新聞業界とその動向及び事例について、日本印刷技術協会の客員研究員でもある井上氏と、朝日新聞社の佐藤氏に聞く。
関連セミナー
2009年7月31日(金) 14:00-16:00
1.デジタル時代の新聞メディア動向
2.朝日新聞の”コンテンツ事業戦略”