本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
印刷の知識にはきりがないほど印刷の世界は多様なのであるが、大掴みの見積もりは発注者も理解しておくことがコミュニケーション上は不可欠である。
月刊プリバリ印〔イン〕 で印刷発注者にアンケートをした折に「印刷見積書がよくわからない」、「印刷見積もりについてもっと知りたい」といった回答が多い傾向があったことを受けて、印刷発注者を対象にセミナーを開催、トーク 代表取締役 山本徳太郎氏にお話を伺った。
印刷を発注される方々にとっては必ずしも印刷知識があるわけではないので、日ごろの印刷見積もりのやりとりで疑問を持った方も多い。こうした問題意識は、昨今のコンプライアンスやオープンな取引の意識の高まりなどにも関係していると思われるので、受発注双方に印刷見積もりの共通認識を持っていただく必要がある。
印刷の製造方法や材料が異なれば、同じ外見の印刷物でも当然金額に差異が生じるのは当然だ。しかしこのことに合理的な理解がされないと、不信につながらないとも限らないため、印刷物の作られ方の概略を受発注双方が互いに理解し合う必要がある。印刷受注サイドからは、印刷見積もりの構造は製造工程と関連していることを明らかにして、見積もり時には製造工程を確認しながら関連する費用の確認をしていただくようにしなければならない。
製造工程を大まかに区切ると企画、デザイン・編集、DTP、刷版、印刷、製本・加工、配送などになる。それに対応する費用項目は、企画、デザイン・編集費、DTP制作費、刷版費、印刷費、製本・加工費、運賃といった費用項目が対応しているのが一般的だ。
見積もりには、「一式型」「フリー型」「明細型」の3種類がありそれぞれに特徴がある。「一式型」は、価格だけ判断したい場合に使われるが、内訳の実態が掴めないという点がある。「フリー型」では工程ごとの内容がほぼ明瞭だが、計算根拠が明細型よりやや劣る。「明細型」については、工程ごとの内容が明瞭で、計算根拠が把握可能である。これらはどれがよいというものでもなく、目的によって使い分けられるべきものである。
月刊プリバリ印のようなものを作っている場合は、創刊時は明細型で細かく検討するが、月々の差が本文や広告ページ数の変化程度ならフリー型でもよい。細かい仕様のない印刷物は一式型でも用は足りる。レギュラーの印刷物でも一部の構成を変えるときには製造工程の内訳を検討する場合も生じる。その場合は明細型とかフリー型になるだろう。
内訳の検討とは、例えば企画・デザイン工程における企画料は、見本となる素材や制作意図がはっきりしている場合などは発生しない。デザイン料やコピー料、撮影料、イラスト料など定量的に図ることのできない質的要素は、一律化できないのが一般的である。指定のデザイナーやカメラマンによってその金額は異なるからである。DTP編集料については、編集作業が必要とされた場合に限られるのが一般的である。もっとも編集という言葉は曖昧なので、編集を依頼する場合は要注意である。
出力料についても、印刷物の品質要求の度合いによって異なる。つまり、商品カタログなど品質要求が高い印刷物は、高品位の色校正が必要なためその費用がかかる。刷版と印刷工程においては、最終仕上寸法が同一でも製造に使う判型(印刷機の版のサイズ)によって見積もりが異なることもポイントである。印刷工程における料金項目には、判型と面数(同じコンテンツを何面付けで印刷するかを示す)によって、通し数(印刷する枚数を指す)が異なってくることに注意する。
印刷用紙は、費用項目として大きく、紙質によって印刷の再現性が左右されるので印刷見積もりの中では大変大きな要素である。加工については、製本形式(折り方や綴じ方)によって、見積もりが左右され、製本方法の検討は重要である。印刷物の運賃についても、印刷物を納品する場所や指定の運送距離によって金額が決定される。
印刷の知識にはきりがないほど、印刷の世界は多様なのであるが、ここであげたような大掴みの見積もりは発注者も理解しておくことが、受発注のコミュニケーションには不可欠である。
(7/2プリバリ印〔イン〕セミナー「ここに注目!!失敗しない印刷見積もり依頼」)