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箔押しやエンボス、型抜きなどをうまく組み合わせ見栄え良くデザインされた印刷物がある。しかし、それが後加工の現場にとって容易に加工できるのか否か、できても多くの手間が掛かり、それ相応の請求ができないなど、頭を抱えることがよくある。
デザイン上の制約に基づく問題が後加工の分野ではけっこう多い。デザイナーや営業マンが関連知識を持つことは大事だが、それ以上に人為的なコミュニケーションの問題が大きいようだ。
通常、印刷物の作業指示書が表面加工・製本にも回ってくる。印刷から製本の間の表面加工工程でのスジ入れや折りなどの単純な加工も含めた情報が記載されているのは、備考などの目立たないところに少し入っていることが多い。これからMIS を始めネットワーク化されたシステムが構築されていくと、作業指示書の中の加工に関する情報伝達には十分な注意が必要だ。
企画段階でデザインする場合、デザインが先で後から形が付いてくる場合と、最終的な完成物からさかのぼってデザインする場合の大きく2 つのパターンがある。まず、パッケージに関しては後者で、形になっているものからさかのぼってデザインする。しかし、書籍の表紙などはデザインが先にくることが多い。最終的にどんな形の本になるかは、デザインの時点では考えられていてもその比重がパッケージに比べて少ない。
パッケージは最終完成物からさかのぼっていってデザインされていくのでトラブルは起こりにくいが、書籍などについてはパッケージに比べてトラブルが起こりやすい。
例えば、書籍にはタイトルがある。そのタイトルをどう印刷・加工するのか。帯やケース、カバーなどの有無はまずデザインがあってからの話になる。企画の段階でしっかりしたコンセプトが決まっていないと、当初のアイデアと最終的な仕上がりとの間にギャップができて、無理なデザインになってしまうということがある。特に製本で大変なのは、カバーと帯にまたがっている絵柄が合っていないといけないことなどが典型的な例だ。
加工業者にとって印刷会社や製本会社が直接やり取りする相手になる。最近では単純な加工よりも複数の加工が絡んでくるほうが多いので、ものによっては発注元、出版社もしくはデザイナーも含めて打ち合わせる場合もある。
例えば「PP 貼りがあって箔押しがあって、窓開けもある。この順番をどうするのか」などということがいつも話題になる。もちろん、順番は加工の内容によって決まってくる。しかし、順序が違うとデザイナーが考えていた穴の開け方などの問題が出てくる。そこのところをどう解決していくかということが課題になる。
さらに、印刷と加工で言う「乾いた」はその捉え方が違う。印刷ではパレットを動かせる状態が「乾いた」という。しかし、加工の業者に入った時にインクのにおいがしたり、触ってみて何となくしっとりする状態では、「乾いていない」と加工業者としては判断する。こうしたことも1 日放っておくことで解決することだ。
これらのことは、根本的には企画段階でのコミュニケーションの問題だ。こうした制作上の専門的な相談に応じられるのは印刷会社の生産管理だ。クライアントから「こういうものを作りたい」という企画が出た時点で、営業マンやデザイナーからどんな加工が必要なのか作業上の問題点などをフィードバックすることでトラブル防止につながる。
(「JAGAT info」2009年10月号より)
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