本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
印刷とCGの関係はまだ腑に落ちない人も多いが、Googleストリートビューのように写真というビジネスの出口は、CGによって広がっていく。
聞くものでも見るものでも人が触れるコンテンツの制作はデジタルになってしまうことは誰もが納得しているはずなのに、印刷とCGの関係はまだ腑に落ちない人も多い。工業製品などはCADデータをもらってからデータのそぎ落としをして、レンダリングをして、実写と合成して、という工程の中では従来の製版技術がストレートに活きる部分が少なくて、新たに覚えなければならないところの方が多いからかもしれない。
今更であるがカラーフィルムからの製版技術だけで食べていける仕事は殆どない。それでオフセット印刷やデジタル印刷に進出する製版会社が多いわけだが、それは製版から見ると下流工程なので、画像に関しては新たに勉強する要素は少なく、従ってリスクも少ない。しかし印刷分野への進出は限りがあるので、印刷会社も含めて上流をどう攻めるかを考えなければならない時は来るだろう。
PAGEコンファレンスで何度か登場いただいたアマナのような写真分野の会社は製版よりも上流なので、そこが画像合成や画像レタッチの経験を経て、CG合成とかCG・CAD分野に入るのは納得しやすい。それにしても今までの写真撮影と全く技術的に異なるCGをビジネスに取り込んで成功させたし、他にも今までCGに関係なかったいろいろな分野での取組みが見られるようになった。むしろ印刷では大手中心でその他の印刷会社の取組みが非常に少ないのが不思議なくらいである。
今日では自分のビジネスにとって画像表現の向上が使命であると考える人は、これからのCG表現の可能性に期待をかけているので、多くの人がCGを勉強したり、CADのシステム自身もCGレンダリングの機能を充実させてきているので、技術的な意味での上流のビジネスのリスクは減っているのがCGの現状だろう。それでも敢えてCGを避けて通る印刷分野の人がいるのは、既存の画像レタッチのビジネスを少しでも延命させたいところに比重があるのかもしれない。しかしそれは蝋燭の炎が消えるのを待っているだけである。
Photoshopの新たな機能はCGと写真をつなぐようなところで発達してきたし、話題のGoogleのストリートビューも写真とCGの組み合わせで成り立っているもので、写真とCGを組み合わせて新たな分野を創り出すことが増えつつある。だから単に従来の写真原稿がCGに変わるかもしれないという限定的な取組みではなく、むしろ新たな応用分野の広がりになる技術であると考えるべきだろう。
今はまだストリートビューは「見えている」だけで値打ちがあるが、この先はこのような仮想と現実の組み合わさった画像は「作品」としても作られるだろうし、イベントや学習の場でもよく使われるものとなるだろう。CGのレンダリングもセカンドライフ的なノッペリとしたものから、リアルな光景に近いものが望まれるので、レベルの高い画像ビジネスとしての成長が見込まれる分野のひとつにはなりそうだ。つまり「写真」というビジネスの出口は、CGによって広がっていくと考えられる。
テキスト&グラフィックス研究会 会報 Text&Graphics 273号より
***
関連セミナー
『デジタル画像ビジネスの実際』-印刷会社における取り組みと今後の展望-
開催日時 2008年11月19(水)13:30-16:30