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百貨店の新聞折込といえばカラーのタブロイド新聞風のページものであったと記憶していたのに、昨今ではB4ペラのチラシのようなものが多くなってい る。以前西友がチラシを毎週から隔週に変えたというニュースがあったが、それは資本を入れた米ウォルマートの影響かもしれない。ウォルマートでは近年、日常的にはチラシ配布を行わず、ハロウィンやクリスマスなどトピックスがある時に限っているという。アメリカでは安売りをする会社はコストを抑えているというポーズをとることも重要だということだろう。
かつては印刷媒体の価値を量で計る時代があった。スーパーが競い合ってチラシを頻繁に入れるとか、選挙戦でも紙の爆弾といわれるほどチラシを手渡していたとか、漫画雑誌の厚さを製本の限界まで増やしていくとか、何百ページの情報誌などがあり、アメリカでも新聞の日曜版が見切れないほどの分量になっていった。そ のような物量で価値があるように見せられた時代が嘘のように昨今の情報誌は薄くなったが、機能的にはそれほど変わっていない。
近年にフリーペーパーが乱立するような状態になったのは、情報とそのターゲット読者との関係を細かく組みなおすための移行期であったともいえる。つ まり関東一円の不動産情報を集中させるよりも、沿線別とか、独身者・富裕層など層を別にする、小さな単位にするという方が消費者にフィットするようになる。また 逆に、自分がこれから引越して行く先の町など自分の生活圏を越える情報が必要になると、ネットで検索できるため全ての情報を印刷物として取り 揃えなくてもよくなったということもある。
生活者にとっては用済みで廃棄する印刷物が減ることは歓迎されるので、新聞や電話帳は自ら配布したルートで回収をするようになった。通販カタロ グでもそうしているものがある。この印刷物の往復のコストを考えると、配布規模を大きくして中央で統制するよりも、ローカル主体で制作配布を行ったほうが よくなる。ITコストが下がってくると制作もビジネスも大システムでなくても割があうようになるので、次第に情報の発生や配布は分散化・極ローカル化し ていく過程に、フリーペーパーもあるといえる。その先には商業印刷物のオンデマンド印刷もあるだろう。
例えば昨今はネットスーパーも立ち上がりつつあり、お米や飲料など持ち運びにくいものは配達してもらえるが、この顧客は会員制となっているため、 過去の購買履歴が参照でき、配達時にお勧めやもうすぐなくなりそうなもののリマインダーをプリントして一緒に納品することが可能になる。
極ローカル、超ローカルというのは過去の物量が価値という考え方では取り組みたくないテーマであろうが、そこを支えるビジネスの上に物量のある仕事も受注できると狙う会社もある。またローカルな仕事を広域に行ってある程度のビジネスの規模を狙っている会社もある。また印刷・プリントだけでなくWeb・ケータイなどコミュニケーションを一体にして、運用やキャンペーンを含めたビジネスを狙うところもある。
PhotoAlbumも同じようなもので、その制作自体をみると小さいビジネスだが、経営としてどう狙うかは色々なスタンスがあり、 PhotoAlbumビジネスを一言では言い表せない。つまり小さいもので大きく稼ぐための仕事の束ね方はいろいろありうるので、一見すると同じような小 さなビジネスをしているようでも、ビジネスのコンセプトは個々に大きく異なるようになる。これは制作製造設備や手段の側が決まると自動的にその経営方法が ある程度決まったような過去の製造業モデルとは違う時代に入ったということである。
印刷の役割がコミュニケーションにあることは不変であるが、質と量に関する考え方を新たにして、それぞれが新たなビジネスモデルを考えていかなければならない。
(テクノトレンド)