本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
いま、世界中が創造産業の将来性に注目し、創造産業に関する調査が行われている。
英国の文化・メディア・スポーツ省が1998年に創造産業を定義、公表して以降世界各国が注目し始めたという。「創造産業(クリエイティブ産業)とは、芸術、映画、ゲーム、服飾デザイン、広告など知的財産権を持った生産物の生産に関わる産業である」(Wikipediaより)。
先進国では経済の成熟化にともない、育成すべき新たな産業分野を見出すことの必要性がひとつの背景にあるようだ。また、製造業の地位低下への対処や、自国製品への付加価値追加などは国からの補助で政策的に取り組まれている。印刷業界でも話題になった感性価値創造もこの一貫ということではないだろうか。
図は「ニッセイ基礎研Report
2009年8月号」による日本の創造産業の現状と推移である。2006年時点で、日本国内の創造産業の事業所数は25万件、従業員数は219万人で、全産
業に占める割合はそれぞれ4.4%、4.0%になっている。創造産業を生産高で見ると、小売業や工業に比べてはるかに規模は小さいが、福祉や農林水産業に
比べると数倍になっている。
2001年から2006年までの推移でみると、事業所数は全産業と同程度の落ち込みになっているが、従業者数は全産業が1.3ポイントのマイナスに対して
創造産業は2.7ポイントのプラスで、他の多くの産業で従業員数が減少する中、創造産業は拡大していることがわかる。上記レポートは、特に「映画・映像・
写真」に含まれる「その他の情報政策に付帯するサービス」と「音声情報制作」〈音楽に含まれる〉、「インターネット付随サービス」〈コンピュータ・ソフト
ウェアに含む〉の伸びが大きいとしている。
同レポートはによると、日本の創造産業振興政策においては、従来からコンテンツ産業というカテゴリーのもとでアニメ、漫画、コンピュータゲームといった部
分にのみ焦点が当てられていたという。しかし、創造産業全体を視野に入れてみると、建築設計やファッション分野では日本は既に世界をリードする存在であ
り、最近では吉岡徳仁のように世界から注目される若手デザイナーも少なくない。「ソフトパワーという観点からは日本食の魅力や、もてなしにも創造産業的な
要素を見出すことが可能だろう」という。見方によっては大きな広がりを持つ産業になる可能性がある。
「ニッセイ基礎研Report
2009年8月号」では、政令指定都市における創造産業についても触れているが、日本全体の創造産業の36.2%、従業員数で59.5%の創造産業が政令
指定都市にあるという。そして、特に東京への集中度がダントツに高い。図で創造産業の内容を見てみると都市型産業、文化産業が多数を占めているから、これ
は当然であろう。「創造産業」を「文化産業」との関係で見ると、「創造産業は文化を生産する部門」(Wikipediaより)となる。
上記のレポートは、日本が国を挙げて創造産業を支援する可能性を示すものであり、その分野には印刷産業が関われる分野も多く存在する。
今後、その動きには注目しておきたい。