本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
YouTubeのような動画の投稿サイトの登場で、個人の作ったさまざまな動画が世界中で見ることができるようになった。インターネット上のトラフィックのかなりの部分を動画情報が占め、繰り返し閲覧される動画は100万回のオーダーのアクセスがあり、最近ではTV放送でもYouTube話題動画がとりあげられることもしばしばである。投稿される動画はTVやビデオからの無断コピーやコラージュ・パロディなどで問題となり削除されるものもあるが、逆に良質なものはサイトの管理者が権利者との仲介をして、許諾を得て閲覧ができるように取り計らう場合もある。
こういった一定のルールの確立を背景に、企業が自社広告を個人に作らせるコンテストをするキャンペーンも行われるようになった。一方で個人でも画像・映像作りに腕に覚えのある人は、広告風作品を投稿して、評価を得ようという動きもある。そういった活動を経てビデオ制作の受注ができるケースも増えてきた。こういった世界を勝手広告と呼び、そのようなコンテストや作品の紹介Blogなども登場している。そこには企業・団体の実名をいれたものもあり、Z会、ヤマト運輸、日本赤十字などの作品は、かなり知れ渡っている。
広告風作品であり広告主とは何の関係もない勝手広告は従来の広告の定義からは外れるが、これらを次世代広告を考えて活動しているサイトでは、次のようなルールを決めている。
・誹謗中傷しない
・音楽など著作権を侵害しない
・広告主と関係ない趣旨を明記
従来バイラルマーケティングといわれていた分野が映像化しつつあるともいえる。
勝手広告も広告の1ジャンルとみなせるのだろうが、そうだとすると従来の広告の定義は破綻し始めている。アメリカはマーケティングや広告では非常に進んだ国で、関連した協会や学校がいろいろあって、多くの研究者もいる。Wikiによると国際的に見た広告の定義は、「広告とは、非人的メッセージの中に明示された広告主が所定の人々を対象にし、広告目的を達成するために行なう商品・サービスさらにはアイデア(考え方、方針、意見などを意味する)についての情報伝播活動であり、その情報は広告主の管理可能な広告媒体を通じて広告市場に流されるものである。」というものである。
以上のを要約すると「広告」といえる条件は、
①管理可能な広告媒体を使う。
②非人的メッセージ。
③広告主が明示されている。
の3つになるようだ。管理可能とはパブリシティを除外することで、新聞記事やテレビ番組が自主的に取り上げたものは管理不可能とみなしているためである。非人的とは実演販売のような人間が登場して行うものではなく、広告媒体を使うことを意味している。広告主の明示という点でもパブリシティを除外することにつながる。看板、雑誌の記事広告やテレビショッピングチャンネルは、スペースや時間枠を買いとって確保しているし、広告主が明示されているので、広告に数えられる。
しかし生活者から見ると媒体広告だけが広告とは思っていない。広告の延長上にあるもの、つまり広義の広告というか、広告を包含する上位概念である「プロモーション」全般が購買行動に影響を与えている。「プロモーション」の上位にはマーケティングコミュニケーションがあり、「プロモーション」は企業から生活者へ情報が一方向であるのに対して、「コミュニケーション」は企業と生活者の相互の情報伝達が行われる。
つまり今日のケータイやWebの発達で急激に変化したのは、通信の延長にあるmailとか、Blog、SNSなど個人的なやり取りであり、プロモーションで考えるとCGMとかアフィリエイトのようなところである。これらが広告の定義の範囲外となっているのは、かつての広告がマスメディア中心であったためで、今のコミュニケーションの変化によって企業はマーケティング全体を再考するようになったので、従来の狭義の広告にだけ金をかける時代ではなくなったのが、広告業界の低迷につながっているといえるのではないか。