本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
単に紙媒体の情報をデジタル化するのではなく、デジタルブックならではの機能を付加しクライアントの要望にきめ細かく対応することで価値を高めている。[デジタルブック特集2]
セブンネットは折込事業からスタートした会社で、2004年よりデジタルブックのサービスを開始している。当社で扱っているのは、韓国Digitomi社で開発した「TrueEBook」という製品で、プラグインや専用アプリケーションなどのインストールが不要であるほか、高画質、高速表示などの特徴を備えている。
実際にはデジタルブック製品であれば、どの社の製品であっても基本的な機能に大きな差はないように思う。当社では、単に製品を販売するのではなく、クライアントの問題解決や要望を実現するソリューションとして「TrueEBook」を提供し、ビジネスに役立てていただいている。
新聞の折込チラシはそれぞれ配達エリアを持っており、限られた地域の新聞購読者にしか届けることができないが、デジタル化することで境界なく広く人々に情報を届けることができる。 「チラシプラス」というサービスは、チラシを紙媒体で折り込むのと同時にWeb上でも公開するものである。さらに通常のチラシは折り込んでしまえばおしまいだが、チラシプラスではリンクや動画などを埋め込むことができる。
例えば、首都圏を中心に展開しているスーパーマーケットチェーンのいなげやでは、デジタルチラシの中にmisbit.comへのリンクを貼り、本日の特売商品を使ったレシピを紹介している。つまりWeb上でチラシを見ている人は、特売情報だけでなく、その素材をどのように調理すればよいかという情報も同時に手に入れることができる。これは、仕組みとしてはシンプルであるが商品購入を後押しする一手として、現在特許を申請中である。
また、当社では半世紀にわたり培った折込広告のノウハウが強みである。例えば、「TrueEBook」のプラスアルファの技術として「オートスイッチャー」という機能がある。これは多店舗多版数展開をしている企業に向けたもので、チラシの対象店舗にだけ電子チラシを配信する技術である。これは同業他社ではやっていないサービスであると思う。折込業界では、配達エリア内で対象店舗のチラシに差し替えるといった業界ならではの仕組みがたくさんある。このような折込会社ならではの発想を生かした機能を「TrueEBook」に付けて展開しているのがわれわれのセールスポイントの一つである。
当社のサービススタイルとしては、基本的な「TrueEBook」の機能をベースに、クライアントごとに抱えている問題や要望を受け入れ、それぞれ異なる仕様の製品を納品することで、他社にはない付加価値を付けている。ある女性向け下着通信販売会社では、導入する際、あえてデジタルカタログ内に商品リンクを貼らない方法を採用した。通常は、デジタルカタログ内の商品写真や商品コードにECサイトへのリンクを貼る。リンクが貼られた部分はピンク色で表示され、どこがリンクであるかが分かるようになっている。
しかし同社では、ネット上で商品を購入する際にユーザーが写真を重視することを考慮し、カタログ内でピンク色のリンクが付いてしまうと、写真のクオリティを損ねてしまうため回避したいという要望があった。そこで、カタログの欄外であるスキンという部分にカートを配置した。カタログ上にはリンクを一切貼らず、カートボタンをクリックすると、ユーザーが現在開いているページと連動したECページが開くようになっている。このようなきめ細やかなカスタマイズをしていき、「TrueEBook」のバージョンを変えていくことで提案の域も広がっていく。
デジタルブックを導入するメリットとしては、コスト削減、データの2次利用、エコ対応などが挙げられるが、実際のところコスト削減を目的に「TrueEBook」を導入する企業は少ない。情報の有効活用、またはクロスメディア対応という視点で導入する企業がほとんどである。
当社では、「TrueEBook」を2種類のASPサービスとして提供している。パーソナル型サービスの「EasyMaker」では、制作環境のみを提供し、クライアント自身でデジタルブックを制作することでコストを抑えられる。プロフェッショナル型サービスでは、制作のすべてを当社が代行するほか、前述のような個別カスタマイズやページの一部差し替えなどにも対応している。どちらも基本性能は同じでパーソナル型のほうが安価であるにもかかわらず、パーソナル型は全体の1割にも満たない。ある程度の費用は掛かっても、細やかな対応ができるプロフェッショナル型が多く採用されていることからも、クライアントに求められているのはコスト削減以上に、Webという情報チャネルを有効活用するためのソリューションであるのかと思う。
また、現在PC以外のデバイスとしてデジタルテレビ上でチラシが閲覧できる「ミチャオ」というサービスを手掛けているほか、ケータイでの対応も着々と手掛けている。既に一部で導入している企業もある。ケータイは1人に1台あり、しかも手元30cm以内にある身近な媒体として無視できないものになっており、今後有効な露出媒体として捉えている。
(『プリンターズサークル』2008年10月号より)