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世界有数の自動車メーカーからサプライチェーンの一環として印刷物を供給するよう求められ、JDFの導入によってそれを可能としたドイツの印刷会社の事例を紹介する。
JDFを策定している国際標準化団体であるCIP4では、毎年、工程自動化技術の優れた導入事例を表彰している。この賞はCIPPIアワードと呼ばれ、過去日本企業も何社か受賞しており、2009年度は(株)真興社が「工程自動化による効率化実現事例」の最優秀賞を受賞している。
今回、紹介するのはCIPPIアワードの「工程自動化による製品品質と顧客対応改善」の最優秀賞を受賞したドイツのC.Maurer社という印刷会社の事例である。世界有数の自動車メーカーからサプライチェーンの一環として印刷物を供給するよう求められ、JDFの導入によってそれを可能とした。
C.Maurer社は従業員が100名程度の中堅印刷会社で、扱っている印刷物の種類は、カタログ、パンフレット、書籍、マニュアル、ポスター、投資家情報などであり、業務範囲はデザイン、組版、包装と配送、そしてクロスメディア展開も行っており、コンサルティング、データベースパブリッシング、データベースプログラミングのサービスも提供している。
この事例では、もう1社Star Publishing社という企業が重要な役割で関わっている。Star Publishing社の中核ビジネスは、あらゆるメディア告知(マス広告素材、店頭広告素材、マルチメディア)におけるコンサルティング、マネジメント、製作を行うことである。自社の業態を“メディア代理店”と呼んでいる。
メディア製作分野における経験豊かなパートナーとして、製作工程を最適化し、コストと不良品発生率の削減を行う。同社は既存システムとの最適な互換性を保障するとともに、品質管理改善の手順とサービスパートナー(外注企業)へのトレーニングを確実に実行する。また、Webのポータルサイトとメディア製作に特化して開発されたマネジメントソリューションを用いて、最初の素案づくりから最後の配送まで、すべての段階においてコーディネーションとモニタリングを行う。
この自動車メーカーは、自動車の最終組立て工程にあわせて、完璧なサプライチェーンマネジメントの実行を要求した。在庫量を最小限にするために、すべての構成要素(部品)はジャストインタイムで製造ラインに届けられなければならない。部品の欠落は生産ラインの停止に直結するので、それぞれの資材調達(ロジスティックス)にかかるプレッシャーはとてつもなく大きい。
C.Maurer社が印刷を請け負っている取扱説明書は、自動車が工場から出荷されるときに必ず付属していなければならない。取扱説明書がないということは、メーカーにとっては、製造した製品の重要なパーツが欠けることを意味し、自動車の出荷は不可能となる。
たくさんの車種モデルそれぞれの取扱説明書が定期的に更新され、毎年6,000種類以上の版が作られる。各々の印刷部数は減少傾向にあるが、印刷ジョブのトータル点数は増加傾向にある。印刷メディアを適切にコントロールするために、この自動車メーカーはメディア代理店であるStar Publishing社と契約している。
自動社メーカーとStar Publishing社間では、SLA(サービス・レベル・アグリーメント)契約というものを結んでいる。その契約にはサービス内容、優先事項、責任範囲、請負金額、品質保証についての同意項目が記されている。SLAでは、供給能力、サービス品質、作業工程と納期、支払条件その他諸々のサービス項目のレベルが規定されている。例えば、自動車メーカーとStar Publishing社間のSLAでは、生産の納期が次のように規定されている。デジタル印刷の場合は発注後4日間、オフセット印刷の場合は発注後10日間となっている。
Star Publishingの使命は、C.Maurer社のような契約先の印刷会社に対して、SLAを厳守させることである。そして、そのサービスパートナーに対して、ワークフロー全体を改善するための継続的な努力を求め続けることである。自動車メーカーとStar Publishing社は、JDF技術を工程の可視性、信頼性、そして品質の向上、強化の手段として認めた。自動化を推進し、印刷物の品質を落とすことなく競争力のある価格設定を成し遂げるためには、より効率的なワークフローが不可欠であり、それはJDFのような印刷業界標準の適用によってのみ達成することができるという。
PAGE2010コンファレンスJDF/MISデイ(2010年2月4日)の事例に見るJDF活用法 では、本事例の詳細と「工程自動化による効率化実現事例」の最優秀賞を受賞している(株)真興社の取組みを紹介します。