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ハード型からソフト型への転換は難しい。営業スタイルから変えないと自社の得意製品をプッシュするいっぽうでは顧客ニーズを拾えないからだ。
広告市場の方向性が大きく変わろうとしている。メディアが多様化し、ターゲットが細分化し、マーケットは個別化し、従来の広告手法が通じにくくなった。経済の先行き不透明感を背景に広告費をシビアに見る企業が増え、広告主はメディア特性や効果の分かりやすい広告を選ぶ姿勢を強めている。
最先端企業としてのGoogleはその動向が広告市場の方向性を多分に示すので、広告業界を始めとした各界からの注目を集めるが、現在のGoogleの重点領域は3つに絞って見ることができる。 (1)オフライン領域のコンテンツ化、(2)アド・マーケットプレイスの強化、(3)Out-Of-Home領域への布石である。
(1)は書籍などのデジタルデータ化で、当面の最重要課題と捉えている。(2)は広告主と媒体社をオンラインで仲介する広告配信プラットフォームだ。(3)は屋外広告の分野である。
つまり、Googleは広告収入を得るためのオンライン検索情報の増加、オンライン広告販売システムの構築、屋外も含めた生活者の動線に沿った広告展開を重視している。広告は、生活者をより便利にしながら、より生活者の身近な場所に近づいていくだろう。
特に情報通信分野で2001年前後から語られてきたさまざまな「融合」は、ネットワーク社会の進展に伴って実現段階を迎えつつあり、広告市場に影響を及ぼし続けている。
ケータイへのGPS機能搭載が進んだ結果、ユーザーの位置情報把握が容易になり、より生活者の生活動線に密着した広告展開ビジネスが期待されている。
インターネットやフリーペーパーなどの無料メディアは、広告費を原資に運営されるモデルが多い。こうして広告費が生活者との接点に近い場所に投下されるようになると、広告と販促はやがて融合が予想される。
広告が消費の現場に近づくに従い、広告ビジネスはSPビジネスに近づくことも予想される。広告会社や印刷会社は、従来の告知型から売り場での売り上げ貢献型へ、制作物販売型から販売支援型へ、ハード型からソフト型への転換が求められることになる。
船井総研の佐久間俊一氏によれば、7兆円規模とされる広告市場でSP市場は3兆円弱規模を占めると見られるが、SP業界では広告業界のような大手寡占化が進んでいない。
従って、ワンストップサービスを目指すような印刷会社にも多分に参入余地が残っている。しかも、例えばSP業務を通じて流通小売店に認められると、メーカーを紹介してもらえるので成長が早くなるという。メーカーは「売り場を知った」会社を使って小売店の販売支援をしたいからだ。
とは言え、前述のようなハード型からソフト型への転換は意外に難しい。営業スタイルから変えないと、自社の得意製品をプッシュする一方では顧客ニーズを拾えないからだ。
参入には、SPプロジェクトチームを発足させ、理想のプロモーションサイクルを作り、売り場をよく見て勉強する。プロモーションサイクルには納品後に必ず顧客との次回へ向けた反省会を含めるなどのコツがあり、売りっ放しにしないことが大切という。
(プリンティング・マーケティング研究会9月9日セミナー「広告業界の現在と展望」より)