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近年のメディア環境の激変とはどのような変化だろう。
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近年のメディア環境の激変とはどのような変化だろう。「平成20 年版情報通信白書」では、世代別のメディア利用頻度の変化と利用頻度減少の理由、その代わりに利用するメディアについて詳しく調べている。
ここ2 ~ 3 年間の利用頻度の変化では、パソコンと携帯電話の伸長が著しく、テレビと新聞はほぼ横ばいだ(図1 )。雑誌・書籍の利用頻度が低下しており、ラジオは最も低下幅が大きい。ただし高齢者層では携帯電話の利用頻度に変化はないなど、世代間のメディアに対する態度の違いは大きい。
近未来のメディア動向を左右するであろう若年層においては、テレビ・ラジオ離れ、パソコンと携帯電話重視、新聞と雑誌・書籍には中立的な傾向を指摘できる。ただし、雑誌は既に10 年連続の販売部数低下を記録しており、この世代は紙メディアへの依存がもともと小さいので変化も小さいと考えられる。
メディア利用頻度の減少理由を見ると、テレビ・ラジオ離れの理由が分かる(図2 )。テレビとラジオでは「そのメディア自身への興味がなくなったから」が最多回答で、ほかに比べて群を抜いている。同書はこの傾向を「メディア自身への興味を失うというメディア自体の絶対的な評価が下がっている」と分析している。
新聞と雑誌・書籍、ラジオでは「代わりに他のメディアを利用するようになったから」が最多回答で、代替メディアに70%以上がパソコンへのシフトを挙げている(図3 )。そのほかに、雑誌・書籍からテレビ、ラジオからテレビ。テレビと新聞から携帯電話へのシフトも一定の割合を占める。新聞、雑誌・書籍などの紙メディアはほとんど代替利用メディアに挙がらない。
生活者は情報洪水の中にあり、与えられた情報から選ぶ時間がなく、必要な情報だけを能動的に取りにいく姿勢を強めており、情報の福袋的な紙メディアでは情報収集効率が低い。また、生活者はテレビとパソコン、携帯電話などの画面を同時に立ち上げてスイッチしながら使いこなす「マルチスクリーン環境」を好み始めているが、紙メディアはここに入り込めていない。生き残る紙メディアの条件とは、ほかのメディアで代替の利かないコンテンツを持つことになるだろう。それは的確にセグメントされた読者へ差別化された高質な情報を届ける紙誌面作りである。