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[若手印刷人リレーエッセイ] 組織風土を整備しなければ会社は変わらない」と考えISOWAの風土改革に社員とともに取り組んでいった。
「顧客に満足を提供するべき社員が会社に不満をもっている限り、絶対に顧客満足は実現できない」
これは、私が属する株式会社イソワ・フーパースィフト(以下、イソワ・フーパー)の親会社である株式会社ISOWA(以下ISOWA)の社長で、私の実兄でもある磯輪英之の風土改革に対する信念である。
イソワ・フーパーの親会社であるISOWAは段ボール製造機械の専業メーカーで、国内では三菱重工業とシェアを2分する国内メーカーである。
その中において、イソワ・フーパーは、オフ輪などのスプライサー(自動紙継ぎ装置)やテンションコントロール装置などの設計製造販売を行うメーカーであるとともに、その一部に段ボール製造機械のスプライサーの設計製造も行っており、ISOWAとのつながりは極めて深い関係にある。
イソワ・フーパーがISOWAとともに取り組む風土改革の源は、私の祖父である磯輪源一が設立をした磯輪鉄工所(現ISOWA)に、1985年当時異業種に身を置いていた兄の英之が入社し、その英之が「社内に不合理なことがいっぱいある」と感じていたところに起因する。
当時の仕事は時代の変化に対応した新しい仕組みを考えようとしないし、トラブルが発生しても問題の本質は追求されず改善の芽も出てこないといった旧態依然を脱していなかった。私も異業種の企業に勤務していたが、兄とほぼ同時期にイソワ・フーパーに入社し、磯輪鉄工所の流れをくむイソワ・フーパーも同じ体制であり、私自身も同じように感じたことは言うまでもない。
そのような中で、兄・英之は「何とか社風を変えたい」との一念から、種々の書物を読み、さまざまな活動に参加をしてはそれを社内に持ち込んで多種の取り組みを実行に移していた。そのような矢先、1冊の著書と出合った。この1冊の本を機に兄・英之は著者のセミナーに参加したりして、「自分が先頭に立って会社を引っ張っていれば会社は変わる」という思いの間違いに気づいた。「土地を耕さなければ種を植えても実らない。“土地”すなわち企業にとって土壌に相当する組織風土を整備しなければ会社は変わらない」と考え、ISOWAの風土改革に社員とともに取り組んでいった。
この時を境に兄・英之自身のマネジメントスタイルは“率先垂範型”から“対話型”に変わった。私の父でもある磯輪英一(ISOWA現顧問)が提唱していた「スピード」に「対話」を加えて「スピードと対話」を行動指針に、その取り組みはさまざまな形に変わり、「気楽にまじめな話ができる、世界一社風のいい会社」への成長に風土改革は発展をしている。
風土改革の最大のテーマは“社員が楽しく働ける会社作り”であった。それが冒頭の「顧客に満足を提供するべき社員が会社に不満をもっている限り、絶対に顧客満足は実現できない」であり、それを充足させるためにさまざまな活動や取り組みが始まった。
約8年を経過した中で現在では“社員満足”から“顧客満足”にその姿を変え、その中の取り組みの一つとして来客者に対してISOWAの会社内を部署ごとに紹介をして回る“ISOWA見学ツアー”が実施されている。この“ISOWA見学ツアー”は、顧客に限らず取引先や異業種勉強会の参加企業などにも実施をしている。
わがイソワ・フーパーもこの取り組みに賛同してISOWAとともに今年から“ISOWA見学ツアー”における部署紹介に参画をしている。自分の会社や部署を来訪者に説明するためには、「自己を知った上で、それをいかに表現するか、それはまさに自分たちが真に自己の会社に対して“満足”できているか」ということに尽きる。そのことに気づいたイソワ・フーパーの社員は少しずつではあるが意識の変化が見られるようになり、ISOWAとの交流も深まるとともにイソワ・フーパーの社員にも、日に日に会社を変えていこうとする気持ちが芽生え始めている。
わがイソワ・フーパーもISOWAに遅れながらも“社員満足”を向上させて「世界一社風のいい会社」作りを目指し、ひいては“顧客満足”向上につなげる元年となるべき取り組みを開始した。
磯輪 高志(いそわ・たかし)。1962年4月2日生まれ、愛知県名古屋市出身、日本大学文理学部卒。1987年入社、2002年総務/技術統括取締役ディレクターに就任、現在に至る。趣味は、ゴルフほかスポーツ、旅行。
株式会社イソワ・フーパースィフト
1972年設立、国内で唯一のオートスプライサー(自動紙継ぎ装置)の専業メーカーとして現在に至る。日本の印刷業界、段ボール業界で、約3000台の実績があり、近年、ラベル業界、軟包装業界への市場開拓を行っている。
〒486-0908 愛知県春日井市西屋町66
TEL 0568-33-6010 / FAX 0568-33-3824
『JAGAT info』2009年12月号