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※通常の照明ではCMYK画像だけが見え、ブラックライトを照射すると発光インクが表れるのが、トリックプリントである。
「トリックプリント」とは、発光インク(RGB)をインクジェット出力した特殊プリントのことである。白地の紙にこの発光インクのみをプリントすると、通常の照明では何も見えず、ブラックライト(UV)を照射すると、インクが発光しフルカラーの画像が浮び上ってくる。
さらに、通常インク(CMYK)と発光インク(RGB)を重ねてプリントすると、通常の照明ではCMYK画像だけが見え、ブラックライトを照射すると発光インクが表れ、全く違った印象のインパクトの強い画像の表現が可能となる。
たとえば、店頭やショールーム、イベント会場におけるポスターやパンフレットなど、あらゆる印刷物において強い演出効果を得ることができる。低コストでエコを兼ね備えたサイネージであるとも言える。
株式会社SO-KEN、代表取締役の浅尾孝司氏にトリックプリントの仕組みとビジネス展開にについて話を伺った。
■SO-KENの取組み
SO-KENは、ブラックライトから放出される近紫外線に反応して発光するインクの企画開発に取り組んでいる。赤、青、緑のRGB三原色が、最初は粉の状態で存在している。この顔料をベースに、例えばインクジェットインクにするとか、オフセットインクにするとか、シルクインクにする。
また、演出をサポートする専用照明の開発にも取り組んでいる。発光するにしても、実際はどう見せるかが重要で、商業施設などで利用するためには照明器具を装備する必要がある。
例えば、導光板であれば、サイドに紫外線の光源を仕込んでバックライトで出す方法がある。バックライト方式で、バックからブラックライトと蛍光灯を光らせて演出するものもある。
また、フロントライト方式といって、ショーウィンドウをある程度覆って、中で光の演出をするという形もある。
トリックインクについては、インクジェット印刷用インク、オフセット印刷用インキ、シルク印刷用インキ、マーカー用インク等がある。CMYKよりも色域は非常に広いので、繊細な印刷が可能になり、今後はさまざまな用途で活用が広がるだろう。
■トリックプリントの仕組みと特徴
トリックプリントは、通常のCMYKインクと発光インクを同時にプリントする特殊プリントのことである。
CMYKのもともとある画像にRGBの発光インクの画像を加え、あたかも1枚の静止画が変化する、動きだすという効果を与え、ストーリー性をもたらす。
ただし、トリックプリントには必ず専用照明が必要になる。専用照明がないと特殊な演出効果をもたらすことはできない。
トリックプリントの仕組みとして、蛍光灯、右側がブラックライトである。
蛍光灯で印刷物を照らした場合、通常のCMYKインクはよく見える。ただし、トリックインクは、この状態では全く見えない。透明ではないが、乳白色、白っぽい色をしている。
蛍光灯を消してブラックライトに切り替える。ブラックライトの光は非常に暗い。真っ暗な部屋で印刷物を見ても見えないが、ブラックライトは真っ暗ではなく、うっすらと紫の光があるので、見えないわけではない。うっすらとしか見えないが、逆にトリックインクは煌々と光るので、フルカラーで見える。この原理を活かして、あたかもCMYKの印刷物が変化するように見せる。これがトリックプリントの仕組みである。
従来、ブラックライトアートというのは暗い場所でしか見ることができなかったが、特殊な装置と光源を仕掛けることによって、明るい場所でも確認できる。
■トリックプリントで広がる印刷ビジネス
例えばカードゲームやグリーティングカードなどがある。光源もセットにして右のボタンを押せば左のどこかに隠れた映像が出る。そういった仕掛けもできる。
オフセットでできたらおもしろいと思うのはDMである。DMを大量に印刷して配る。光源はどうするのかというと、これもアイデア1つで、DMを配ってあるところに人を集める。
例えば「この店の何階にこのDMを持って来て下さい」というと、お客さんは、さっきまで真っ白のハガキをその場所に持っていったら画像が出てきた、文字が出てきた、特典が出てきたなど、そういった使い方もできる。
ポスター、アート分野の可能性は大きい。やはり紙が発光するというのは不思議な感覚である。紙媒体が変化するというところを強調しつつ、販促活動できるような分野があれば、非常に浸透が早いのではないかと考えている。
照明をどうするかと言う課題があるが、思いつく限りの照明は極力、商品化を進めている。まだまだ用途も開発発展途上ではある。
交通広告や店舗POPなどでは、明るい場所でも演出を可能にする。
これは専用照明ありきで、ニーズに合わせたカスタマイズができる。CMYKとRGBの二重印刷で変化をもたらすことができ、場所を取らない、明るい場所でも演出できる。
変化する広告媒体ということで注目を浴びるのではないかと思っている。
単に画像が切り替わるだけではおもしろくないが、変化する過程がおもしろい。ゆっくり時間を追って画像が切り替わる、この変化がおもしろい。
液晶でぱっぱっと変わるよりも、広告媒体というのは1つメッセージを残しながら、訴えかけたいものを押しながら変化させる。
最近、より光らせてより注目を集めるという電飾看板は非常に多いが、ただ光らせるだけではなく、ストーリー性とメッセージ性があるのが特徴である。これがないと、ただ光っていては、視線を集めることはできても、その先につながらないと思う。
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近年、デジタル化が進歩し、かなり普及してきた。紙媒体の印刷も、変化、進化が問われていると考えている。クライアントに向けて、他の印刷と差別化を図り、より訴求効果の高い媒体として活用していただきたい。印刷業界の活性化と話題作りに是非と考えている。
(テキスト&グラフィックス研究会 会報No.291より)