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今後生き残るには、オフセット印刷とデジタル印刷を使い分けるハイブリッド印刷と、印刷付帯サービスへの取り組みが鍵になる。
アメリカの印刷産業出荷額は2000年から15~17兆円規模で推移してきた(1ドル100円換算)。2003年から2007年がプラス成長であった点が日本とは大きく異なる。
人口増加国と減少国の違い、人口規模の違いが日米の印刷市場規模と推移の違いに反映されている。少子高齢化の日本と、いまなお人口増を続ける国の違いである。また、日米の人口比1:2.35を踏まえておくと、日本の印刷産業出荷額6~7兆円と比べたイメージがしやすい。
ところが、アメリカも2008年は4.5%減と大きく落ち込んだ。日本は工業統計の速報によると4.0%減なので日本以上の落ち込みであり、従来の継続的なプラス成長が大幅なマイナス成長に転じたインパクトは相当なものであったろう。2009年がさらなる落ち込みになったことは間違いない。
PIA(アメリカ印刷工業会)は「Beyond the Horizon」や「Expanding the Market Space」をとおして、アメリカ印刷産業が成長し続けることは望みにくいとし、特化多様化戦略の必要性を説いている。
PIAの中位予測を見ると、アメリカ経済が年率2.2~2.7%で堅調に推移し続けた場合でも、印刷産業は10年後の2020年に2008年より7%縮小して15.5兆円規模になっている。
「特化」と「多様化」は反対の意味なのでわかりにくい。要するにPIAは、「製品に特化し、特化した製品に付随するサービスを多様化して充実しなさい」と、競争優位の確立に向けたワンストップサービスへの取り組みを促しているのである。
生き残るには、オフセット印刷とデジタル印刷を使い分けるハイブリッド印刷と、印刷付帯サービスへの取り組みが鍵になるという。デジタル印刷受注の内訳は、約4分の1が新規顧客から、約4分の1が従来型オフセット印刷から、約半分が既存顧客からの新規受注で構成されるとしている。今後10年はオフセット印刷を犠牲にデジタル印刷が伸びるシナリオが見込まれている。
ただし、アメリカは版替え時間に日本の倍以上要ししているとの見方もあり、無版印刷としてのデジタル印刷の優位性が日本以上に強調されているようだ。従って、工場生産性の低いアメリカでのデジタル印刷普及状況が、生産性の高い日本にそのまま当てはまらないことには留意したい。
高い利益率をもたらす付帯サービスについて調べたところ、50%以上が「フルフィルメント/在庫管理」「グラフィックデザイン」「Web to Print」「顧客用のWeb制作」を挙げた。
2008年から2020年に掛けて、産業規模は7%縮小、事業所は30%減、従業員数は12%減になる。2020年に生き残っている印刷会社は、今より大きく、生産性に優れた印刷会社になっている。
オフセット印刷は1%以下の伸び率しか期待できないので、デジタル印刷で7%以上、付帯サービスで4%以上など、新規領域に成長性を見つけることが必要になる。
幾多のライバル企業から競争優位や差別化を学んだ印刷会社が生き残る。「○○したらどうなるか」「それでどうなるの」と、自問自答して未来を探検し、将来像を描く必要性が高まっている。
(「JAGAT info」2010年3月号)