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「パッケージメディアの減少=リアル回帰」とも呼べるトレンド変化は印刷物にも波及してくる可能性がある。
2009年の広告市場は統計開始以来の状況にあえいだ。マス4媒体は軒並み2桁の大幅減だったし、2000年代のメディア産業をリードしてきたインターネットすらも成長性を失った。
広告不況は世界的で、世界中でクライアントの宣伝広告費予算が引き締められた。調査会社ゼニス・オプティメディアによると、2009年の世界の広告費は2008年の47兆円規模から42兆円規模に急激に縮小した(1ドル=95円換算)。
一番ひどいのが北米で、西欧が続いた。アジア・パシフィックが北米と西欧より悪くなかったのは中国など新興国が比較的堅調だったためで、日本はほかの先進国同様に不振を極めている。
同社による2010~2012年までの毎年の世界の広告費見通しは、新興国がけん引する形で1%増、4%増、5%増となっている。3年連続でプラス成長しても46兆円規模と、リーマンショック前の2007~2008年水準には戻らない。
多くの各種メディアが大幅に落ち込む中、堅調に推移したのが映画とコンサートの動員だ。映画は興行収入2000億円台に到達したし、コンサートは1000億円台を維持して伸び続けている。
生活者は、手触り感のあるもの、臨場感を味わえるもの、体験を共有できるものへの出費は惜しまない傾向にある。かつてはCDアルバムを売るためにライブツアーを企画したが、現在はライブツアーを売るためのプロモーションとしてCDアルバムをリリースするような手法に変わってきた。
こうした「パッケージメディアの減少=リアル回帰」とも呼べるトレンド変化は、CDと同様にパッケージメディアである印刷物にも波及してくる可能性がある。
地デジ移行の2011年7月24日まで500日を切った。2009年8月時点で既に全体の6割が何らかの地デジ対応を済ませたというが、2009年12月のテレビの販売台数は史上最多の約350万台と驚異的な水準だった。
引き続き、地デジ対応需要による市場の活性化が予想される。また、次の段階では、家庭における2台目以降のサイズの小さいサブテレビの地デジ対応需要も増えてくるだろう。
電通の調査では地デジ対応予定のない人が約3%いる。地デジ切り替えを機にテレビを見なくなる3%がどこに流れるか、この層にどのようにアプローチして彼らを取り込むかも一つの商機として注目されている。
世界の電子書籍リーダー市場では、2008年に100万台、2009年に500万台売られたと見られ、うち200万台がamazonのKindleだったと見られる。2010年に1200万台、2011年に1500万台に伸びると推計されている。
トップシェアのamazonにソニーが続き、ここにAppleがどう挑むかの構図である。また、2010年の世界のeBook市場におけるコンテンツ卸売額は約450億円を超えると見られる。
日本でもさまざまな実証実験が立ち上がりつつある。日本市場はやや異質で、携帯電話向けが多く、コンテンツはコミック、文芸小説が多い。2008年時点で日本の電子出版のシェアは全出版市場の2%超になり、無視できない規模になってきた。
(「JAGAT info」2010年4月号)
■関連セミナー:2010年5月31日開催 「印刷メディアは電子書籍とどう向き合う べきか」