本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
時限クーポン配信サービス「イマナラ!」は、たとえば「10分以内に来てくれたら50%オフにします」というクーポンを配信して集客をするサービスである。同サービスの特長について、サービスを運営しているロケーションバリューの砂川大氏にお話を伺った。
販促の中でのモバイルクーポンの位置付けが高まっている。その一番大きな要素はマクドナルドがたくさんモバイルクーポンを販促に使ったことである。一方、クーポンを使ってもお客様は定着化しないのではないかと言われる。確かにそういう面もあるが、やはり出会いということが大事で、実際に行ってみて良い店だなと思えばクーポンがなくてもまた来るのである。つまり、お店の魅力次第であり、我々は新規の出会いをお手伝いしているわけである。
そこで、クーポンが集客にどれくらいの効果を発揮するのかが重要になってくる。調査によると半数がクーポンによって店選びをしているという。特にファーストフードは多く影響されている。また、割引率と消費行動を見ると、乗数効果的に効果が見込めることが分かっている。割引率が高いことが、集客効果にとても良い影響を与えている。
しかし、クーポンには問題点もある。まずバラマキ型クーポンでは集客できていない可能性があるということである。そもそもは集客ツールなので、お客さんが違う場所でクーポンを見つけて、これはいいなと思ってその場所に行くのが本来のあるべき姿である。しかし携帯クーポンが普及した結果、「店を選んで、行って、席について、注文をして、品物が来るまでにクーポンを探す」という人が多いのが実情である。そうなるとクーポンが集客になっていない。
つまり、クーポンなしで来ている人達に、わざわざお金をあげている状況になっているわけである。「これではバカバカしくてやってられない」という方がたくさんいるのが現実である。
2つ目は、時間の制限をしないと繁忙期にお客さんが集中してしまう可能性があることである。
例えば、金曜日の夜は販促しなくても席は埋まる。にもかかわらず、そこにクーポンが使われてしまうと売上を痛める状態になる。席数は決まっているので満席なら新たな客を断り、埋まっている席全部の人がクーポンを使うとなると、ディスカウント率が20%なら売上はザックリ20%減るわけである。これでは意味がない。
3つ目は、バラマキ型だと利用率が管理できず収益が悪化するということである。ある大手ハンバーガーチェーンでは、半分の人がクーポンを使う予想だった。ところが予想以上の人が使ってしまい、その結果、客単価が下がって赤字に転落したという事例がある。これは印刷型でもWeb掲載型でも同じだが、クーポンの管理ができないということに起因する。Web掲載型のクーポンは印刷が自由なので、何枚でも印刷できるからである。
これらの問題点を「イマナラ!」では解決することができる。
まず、集客になっていないという点は、近くにいる人に対して優位になるクーポンを提供することで集客能力を高めることができる。
客が繁忙期に集中することについては、「イマナラ!」は時限クーポンなので必要な時だけ発行できるため、空間在庫をリアルタイムで埋められる。
また、バラマキ型で収益が悪化していることについては、システムで随時発行枚数を管理することで解決できる。
「イマナラ!」は業務システムなので、本部、店長が権限管理をした上でシステムを提供している。つまり、この日のこの時間にこの店舗で何のクーポンを何枚発行するという入力ができるようになっている。
例えば、10枚発行したクーポンが、カウンターが付いているので、使われていくと9枚、8枚と減っていくのが分かる。そのため、これ以上いらないというところで中止できる。必要以上にクーポンを使わせないように管理できる。
割引率を上げると利益率が下がるのではと心配するクライアントも多いが、実は必ずしもそうとはいえない。「現状1テーブル3回転の場合」、4回転できるレストランと仮定して計算してみる。客単価が2千500円、1テーブルに4人座れると、売上が1万円。食材が3千円、場代、光熱費、人件費の固定費を4千円とする。そして、4回転目が入らなくて固定費だけがかかる。
売上3万円で利益が5千円なので、そのテーブルの利益率は16.6%となる。
これを一般的な「20%全体値下げ戦略」で席を埋めると、確かに4回転目は席が埋まる。
2千円の単価になって売上は8千円、4回転になるので売上は3万2千円に伸びる。しかし、利益は4千円に減り、利益率は12.5%に減ってしまう。
では「4回転目のみを50%引きにした場合」はどうなるか。4回転目は単価を1千250円にして席を埋めると、結果として3万5千円に売上が伸びて尚かつ利益が7千円になり、利益率は20%に向上する。
このように、からくりとしては非常に単純な話だが現実には価格差別化という議論がなかなか浸透していない。
わが社は掲載メディアではないので、「クーポンを載せてください」「分かりました、1カ月載せます!」というサービスではない。申し込みをいただいたクライアントにシステムを提供し、好きなときにクーポンを発行してもらうサービスなので、費用対効果を最大化させることができる。クーポンはもちろん携帯からも発行でき、以前に発行したものをコピーすることもできるため、2分くらいで発行できる。
日本において、広告と言われる部分は7兆円あるとされている。しかしこの不況で広告業界の収入は減っている。
一方で、この7兆円とは別に5兆円規模の流通対策費、販促費が存在している。あまり世の中に出てこないのはそれを中間業者として媒介することができないからである。販促流通費はリベートやキックバックとして動いている。
コンビニでこの棚を作ってくれたら安く出すというキックバックの部分がまさに流通対策費である。
なかなか介在しにくく、購買されるというアクションが起こって初めて払うものなので、認知媒体が上手くできなかった。わが社はそれを「イマナラ!」でやりたいと考えている。
(クロスメディア研究会会報「VEHICLE」より一部抜粋)