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印刷業におけるクライアント層にあたるB to C領域での企業のマーケティング戦略がインターネットの普及・浸透が進むことによって大きな変化を遂げている。そのなかで印刷業が果たすべき新しい役割とは。【JAGAT大会・特集2】
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マスメディア全盛期には生産者と消費者の間には圧倒的な情報格差があった。現在インターネットの普及によって消費者が得る情報は爆発的に増えた。情報量が増えただけでなく非対称(一方通行)から双方向へと質的変化によって、生産者と消費者の関係が大きく変わった。その変化はかつて生産者と消費者の間で機能したマスメディアによる情報発信が崩壊したという意味でもある。伝えられる情報から調べる情報へと情報の主権交代が行われたことで、消費の考え方や消費行動自体が大きく変わっただけでなく生産者の情報発信も変化した。
3月までホンダでWebマーケティングを担当していた渡辺春樹氏(現ビービット)は、「想い」のないサイトは顧客との共感は生まれない。顧客と企業間の「共感と物語」が『ブランド』になる。ネット革命によって「顧客とメディア」の関係は二度と元には戻らない。ホンダサイトの目的は顧客リレーションコストの最適化である、という。マスメディアが不要であるとか、印刷メディアが不要であるということではなく、すべてを見える化して効果を議論することが大切である。今までは曖昧だった広告効果を明確にする必要があり、だからこそメガメディア時代のハブ機能としてサイト構築が重要であると考えている。
一方、地図のゼンリンは、進化するIT社会と成熟社会を背景に、「地域情報」、「安心・安全」をキーワードに自社の強みを生かしたビジネスモデルを考えている。新規事業を担当する秋本則政氏は2年前までマイクロソフトに在籍していた。IT業界では「最後に残ったビジネス領域は地域情報だ」と言われている。地域の活性化、地域主権がこれからの重要施策であることから、地域でのコミュニティー作りにゼンリンの「知・時空間情報」を生かしていくという。6月より、印刷(フリーペーパー)、携帯、HP、電子ブックというクロスメディアで地域情報の発信を始める。新たな顧客像をどのように捉えているのか注目したい。
JAGAT大会2010 分科会「マーケティング」のモデレータは生活者1万人アンケートを実施・分析し「大衆化するIT消費」をまとめ出版した野村総研、日戸浩之氏にお願いした。印刷業の主クライアント層にあたる、B to C領域での企業のマーケティング戦略がインターネットの普及・浸透が進むことによって、大きな変化を遂げている。その最新動向をご紹介し議論を深めるとともに、そこにおいて印刷業が果たすべき新しい役割、コミットする可能性などについてディスカッションしていく予定である。
事前打合せの様子。当日は、大きな変化がおきている消費者の流れのなかで印刷業が果たすべき役割について議論を進めていく。
消費の動きが社会を変える、そして消費変化に対応した企業のマーケティング戦略が必要になる。売れない時代にモノを売る手法、価値の提供「バリュー・プロポジション」とは何かを考察する。
日戸浩之氏 株式会社野村総合研究所 サービス事業コンサルティング部 上級コンサルタント
秋本則政氏 株式会社ゼンリン 執行役員 事業開発部長
渡辺春樹氏 株式会社ビ-ビット 広報宣伝部長
日時:2010年6月15日(火) 13:30-19:00
会場:東京コンファレンスセンター・品川
参加費:18,000円(消費税込)