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メディア産業の可能性は編集者の欲求を満たすために存在するのではなく、「情報によって繋がった人たち」の欲求を満たすために何をすべきかを考え、立体的にサービスを提供できるよう価値転換を図るところにカギがある。【JAGAT大会・特集3】
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経済活動には、商品としてのモノとその価値を伝えて的確に流通させる「情報」が必要である。その時代の情報環境がモノの流れを規定している。1990年代の世紀末からここ20年間の情報環境は劇的に変化した。それが今日のモノの流れ(ビジネスモデル)を根本から変えようとしている。
ことに情報のプロトコル自体が商品であるメディア産業(出版や新聞)にとって激震の日々である。「あなたの知っている「出版」は21世紀の「出版」を指さない」(『新世紀メディア論――新聞・雑誌が死ぬ前に』)という小林弘人氏の言葉がまさにそれを象徴している。
2000年を迎えるにあたって、月刊誌『LIFE』がミレニアム特集として世界各国の知識人にアンケートをとり、「過去、1000年間に起きた最大の出来事は何か」を問うた有名な話がある。 1位は誰もが知る「活版印刷術の発明」である。その特集を報じてから7年後の2007年4月20日号をもって同誌は再度の休刊になっている。
メディア産業のみならずすべての産業が自社の商品・サービスの価値をより高め差別化するために情報を発信する。インターネット上では「誰でもメディア」(同氏)になる。これはかつて経験をしたことのない状況である。デジタル化による参入障壁の低さは情報の潤沢化をもたらし「仁義なきメディア・ウォーズ」(同氏)を生み出している。サバイバルのためビジネスモデルの再構築が必要である。とはいうもののビジネスモデルは荒野で金鉱を発見するがごとく独力で掘り起こす以外には手段はない、と同氏は語る。印刷をはじめ多くのモノがコモディティ化によって規模を拡大したが、希少価値は失われた。
「メディア産業の可能性は、自らが編んだ情報を伝えたい」という編集者の欲求を満たすために存在するのではなく、そこから先の「情報によって繋がった人たち」の欲求を満たすために何をすべきかを考え、立体的にサービスを提供できるよう価値転換を図るところにカギがある」とやはり『新世紀メディア論』では述べられている。
JAGAT客員研究員の佐々木雅志氏をモデレータに、小林弘人氏を迎え、「誰でもメディア」時代の印刷の価値や生き方を探り、会場の皆さんとともに議論を深めたい。
クロスメディア時代にあった発想の転換とビジネス展開、人材育成、企業戦略。「誰でもメディア」―企業が直接メディアを組成する時代のコミュニティと信頼についてディスカッションする。
佐々木雅志氏 JAGAT客員研究員 brain.design
小林弘人氏 株式会社インフォバーン 代表取締役CEO
日時:2010年6月15日(火) 13:30-19:00
会場:東京コンファレンスセンター・品川
参加費:18,000円(消費税込)