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2010年2~3月に調査した印刷会社経営動向調査の最新レポートがまとまった。景気低迷とメディア変革期が同時に訪れ、印刷会社はかつてない局面の経営判断を求められている。印刷会社の経営と戦略、設備と投資スタンスを同時に調査する唯一の本レポートから最新動向を見る。
売上高は前年比5%を超える落ち込みで2年連続のマイナス、売上経常利益率は2年連続の2%台に低迷した。各社は経営の合理化を進めているが、経営の合理化より市場環境の悪化が早い。2006年来の原材料価格高騰による影響と古紙再生紙偽装の問題は一段落したが、たとえ用紙価格は戻っても、価格高騰の過程で他メディアへスイッチした印刷需要は簡単には戻らない。
「強化したい工程」の1、2位は「Web制作」と「DTP制作」だった。電子書籍と印刷メディアの棲み分けは現時点で不透明要素が多い。しかし印刷業は本来的に情報加工業であり、情報加工の担い手として電子書籍の実用段階化は印刷会社にとってチャンスである。コンテンツのデジタルデータ化、電子書籍化においても、印刷会社の持つDTP制作やWeb制作といった情報加工技術が強みになると見られている。
設備投資は様子見姿勢が強まり、設備投資額を「前期とほぼ同じ」にするとした印刷会社が過半数だ。従来型の枚葉機、輪転機の取得意向が高くないからといって、デジタル機の取得意向が特に高いわけでもない。依然として印刷が事業の軸だが、一方では必ずしも設備に依存しないクロスメディア対応やデジタルコンテンツ加工の体制を整備したいとの意向が垣間見える。
詳細な設問から構成される本調査に回答をいただいた170を越える印刷会社の方々に、心より御礼申し上げる。32回目となる本調査の調査結果及びその分析はレポート「JAGAT印刷産業経営動向調査2010 」にまとめ、6月中旬に回答企業に献本を送付した。ダイジェストは、2010年6月15日、7月15日発行のJAGAT会員限定誌「月刊JAGAT info」6・7月号に掲載する。また、希望者には有料で頒布する。
(JAGAT 日本印刷技術協会 研究調査部 藤井建人)
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【印刷産業経営力調査の概要】
概要:印刷会社170社から調査票を回収
内容:印刷会社の経営状況、戦略、設備
期間:2010年2月~3月
「JAGAT印刷産業経営動向調査2010」
体裁:A4版、104ページ
定価10,000円(税込)、JAGAT会員特別価格5,000円(税込)
発行:社団法人日本印刷技術協会 研究調査部
購入:申込書 に必要事項を記入してFAX送信ください。
【構成】
1.2009年度の印刷会社の経営動向
(1)経営動向の概況
・メディア変革期の印刷会社経営について
・印刷市場と印刷経営の考察
(2)経営動向指標
・貸借対照表、損益計算書
・生産性、収益性、安全性、人員構成等
・1人当り指標(売上高、加工高、人件費、機械装置額等)
2.印刷会社の業績と経営戦略
(1)業績と経営戦略の概況
・業績良好な印刷会社経営者の思考を探る
・業績良好な印刷会社の戦略
(2)経営戦略
・事業領域、戦略、事業分野、市場ポジション
・財務、顧客、生産、営業、マーケティング、人材と変革
3.印刷会社の設備動向
(1)設備動向の概況
・次年度の設備投資予定
・設備投資の傾向
・印刷機の保有、導入・廃棄意向、満足度
(2)設備保有状況、導入・廃棄意向、満足度
・製版・刷版
・印刷機付帯設備
・製本・後加工
(3)DTP環境
・PCの種類と台数
・アプリケーションの種類とバージョン
・データの入稿形態
4.参考データ
(1)セグメント別の経営指標
・データ:損益計算書・収益性指標・安全性指標・生産性指標等
・セグメント:2地域別(東京とその他地域)、従業員規模6段階別、業種業態6分類別、オフ輪の有無別)
(2)月次の各種前年比推移