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月刊『プリバリ印』7月号の巻頭インタビューで、「水や空気」のような文字作りをめざす書体デザイナー・鳥海修氏に、お話をうかがいました。
あまりに身近過ぎるため文字や活字を意識することはほとんどありませんが、文字は人の手によって作られたものであり、多くの人々の努力の結晶です。7月10日発売 月刊『プリバリ印』の特集は‘デジタル時代だからこそ、進化するタイポグラフィ’。巻頭インタビューでは「水や空気」のような文字作りをめざす書体デザイナー・鳥海修氏に、お話をうかがいました。 (※本文より抜粋)
―鳥海さんは美大を卒業して写研に就職されたわけですが、最初から書体デザイナー志望だったのですか。
僕が生まれたのは山形の片田舎で、山の上の小さな村です。小さい頃はとにかく自動車が大好きで、タクシーかバスの運転手になりたかった。そのうち整備士に憧れるようになって、工業高校の機械科に進みました。そしてカーデザインに興味を持ち始め、かっこいい自動車を作ってみたくなった。英語や数学、国語はダメでしたが、製図の授業とか専門教科の成績はよかったですね。
あるとき、『カースタイリング』(三栄書房)に掲載されていた作品が目について、デザイナーの経歴を見たら美大卒だった。それで突然「美大に行きたい!」と。美術のことなど何も知らないまま、武蔵野美術大学を受験したのですが、1次の学科で落ちて、実技試験を受けずに1浪時代に入りました。でも、何を勉強すればよいかわからない。裏山を歩いたり、日雇いのアルバイトをしたり、結局1年間何も勉強しませんでした。翌年は、実技も受けられる多摩美術大学を受験しました。試験の時間は6時間でしたが、僕は3時間くらいで描くことがなくなっちゃって。
「みんな何を描いてるんだろう」と思って、他の受験生の様子を見て回ったら、描き方が全然違う。「デッサンというのはこういうものだったのか。これじゃ受かるわけない」と思って、代々木ゼミナールのデザイン科に通うようになったんです。
デッサンについて、「感動が大事」とか言われますが、僕はテクニックさえ学べばいいという感じ。上手な同級生の描き方をコピーしているうちに、なんとなく描き方がわかってきた。あるとき、油絵や日本画、デザイン科合同のコンテストがあって、100人くらいの中で10番に入らなかったら諦めようと思ってました。結果は11番でしたが、先生が「自分は鳥海の作品を推す」と言ってくれた。それで、見る先生によってはもっと上位になる可能性もあるんだと考え直して通い続けたんです。
東京藝術大学と武蔵野美術大学、多摩美はプロダクトとグラフィックの両方を受けて、合格したのは多摩美のグラフィックだけ。でも、僕は広告は全然やりたくなかった。当時は公害問題の報道が盛んで、広告に携わることは公害を出す企業の片棒を担ぐことだというような気持ちがどこかにあったんですね。だから、入学したのはいいけれど何もやることがない。それがけっこう悲しかったですね。
― 書体のデザインに興味を持ったのは何がきっかけだったのですか。
たしか3 年生のとき、TBSのタイトルデザイナーで多摩美の講師でもあった篠原栄太先生が毎日新聞社のデザイン部に見学に連れていってくれたんです。写植の全盛時代ですから、授業でも写植の文字について勉強していたのですが、あまりピンときてなかった。ところが現場に行って、サインペンで字を書いてるのを見て、「このきれいなレタリングは何だ!?」と思ったわけです。「何を書いているんですか?」って聞いたら、「これは原字といって活字の元だ」と。「新聞の活字って人が作ってたのか!?」って、すごいショックを受けました。「世の中にこんな仕事があるんだ!」って、その瞬間にグラっときたんです。
グラフィックデザインの「俺のデザインってどうだ!」という感じではなくて、誰が作ったのかわからない文字が印刷され、人々が文字の存在を意識しないまま記事の内容を理解していく。そういう文字が、たまらなく素晴らしいものに思えたんです。
現場を案内してくれた小塚昌彦さんが帰り際に、「文字は日本人にとって水であり米である」とおっしゃいました。その言葉を聞いて、僕は故郷の山形の景色を思い浮かべた。嘘みたいだけど、その瞬間に「俺はこういう仕事だけをしたい」って思ったんです。多摩美に入って初めて目標を持ったという感じでしたね。
本誌では、鳥海氏が写研に入社し、字游工房を設立、ヒラノギ・オリジナル書体の游明朝体Rの開発に至った経緯や‘文字の設計に関わる仕事を志すには何がいちばん必要なのか’など文字に関する想いやエピソードを6ページにわたり紹介している。
是非、7月10日発売の月刊『プリバリ印』をチェックください。
印刷の価値を新たに創造する月刊誌『プリバリ印』7月号(7月10日発売)
http://www.jagat.jp/pv
■プリバリインタビュー
「原字」が人の手によって書かれているのを見た瞬間、グラっときたんですよ
書体デイナー、字游工房代表取締役 鳥海 修 氏
■特集
デジタル時代だからこそ、進化するタイポグラフィ
・時代を超え呼吸する文字たち 小宮山博史氏
・タイポグラフィの魅力について[たっぷり]語ろう
マシュー・カーター×シマダタモツ
葛西 薫×浅葉克己
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