本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
日本では90年比で25%の温室効果ガス(以下GHG)の削減を掲げ、低炭素社会への取り組みは全産業がかかわらなければならないということは周知の通りである。そうした中で印刷産業がGHG削減へどう取り組んでいったらいいか考えていかなければならない。
製紙工程でのCO2排出が大
環境負荷からみた業種の類型でみると印刷産業は廃棄物多量発生型とされている。印刷産業は紙くずを大量に発生させる。背景に資源問題が絡むことから製紙業界との連鎖関係にある。一連の製紙工程の中で、乾燥の段階でかなりエネルギーを使っている。紙1トン製造するのに約1トンのCO2を排出しているといわれている。そのため印刷物を1トン作れば紙の分だけで1トンのCO2を排出していることになる。
印刷産業も含めて世間一般で最近注目されている取り組みがカーボンフットプリントだ。あるメーカーの環境活動報告書によると印刷物製造に関するCO2排出の割合は紙が85%、CTP版8.4%、印刷工程5%、インキ2.2%、製本1%となっている。ほとんどが紙ということだ。そうなると印刷会社としてもサイズを小さくする、紙を薄くするなどの動きがでてくる可能性もある。
生産設備の改良
温室効果ガスの排出量比率を工程別・用途別に見てもオフ輪機と枚葉機で全体の70~80%以上を占める。印刷機は各メーカーの努力によりさまざまな改良がなされて、印刷機に使用されるモーターも改善されている。これにより電力が8%、騒音が3デシベルくらい減るといわれている。またロータの部分に永久磁石を使用してモーターの小型化をはかり同時に効率をよくしてエネルギーを約20%削減できるものもある。これにより準備時間が短縮され、ヤレ率も低減されることからこのメリットは大きい。
オフ輪のドライヤーも熱を出す。省エネの方法のひとつとして、フレッシュエアーを送るブロアの配置場所をドライヤーの少し上に置き、燃焼用の空気は暖かい空気を利用し、冷却用の空気は冷たい空気を利用することにより省エネ・CO2削減につなげる。
空調設備はメンテナンスをすれば消費電力や寿命も違う。生産性を上げることを目的として夜も空調を付けっぱなしにして温湿度を常時安定させている会社もある。ここで重要なことは温度ではなく湿度だ。湿度は相対湿度なので、夜は機械が稼動しないことから温度変化も少ないので湿度も日中ほど動かない。そのため空調を付けっぱなしでも消費電気力はそれほどかからない。このことは当初、水なし平版を導入している会社で始めた。その後、効果があるということで水を使う会社でも採り入れているところがある。
製本分野での取り組み
製本機は20~30年前と機械の構造上大きな変化は無い。その中で去年のJGASの中で小型のモーターを搭載し、丁合いで使用しない鞍は止められるという環境対応型の機械も出た。それだけでも従来のものに比べると30~40%の使用電力量が下がるといわれる。
加工分野では環境対応マークや用紙の指定等に対するユーザーの要望は商印や包装分野で進んでいる。これに対し出版分野ではユーザーからのそうした要望は少ないが、PUR接着剤が普及しつつある。PURは用紙リサイクル適正がいいと同時に環境負荷の面で、EVA系の溶解温度180℃であるがPURでは120℃が溶解温度なので熱量が抑えられるというメリットがある。しかし、出版の消費サイクルと納期対応からいくと全商品に展開できるレベルではない。全体の比率としてどこまで伸びるのかは今のところわからない。(伊藤 禎昭)