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[若手印刷人 リレーエッセイ] 常に創業者の苦労を忘れず、企業を守り抜く「守成」の精神を持ち、共存する従業員を大切にし、未来への目標を持った会社作りを信念として邁進してまいります。
弊社の創業は「1971年(昭和46年)」に端を発し、それは即ち、丁度日本の「高度経済成長期」に即すが故に、印刷業界自体も依頼が急増する真っただ中にありました。
創業者は、その印刷業界の一工程である「刷版」に着目し、同士とともに「3人」で創業したと聞いております。
当時の刷版は、感光素材である「版」そのものの研究から始まり、試行錯誤の後ようやく「オリジナル」な製品の完成に至るまでに、気の遠くなるような作業の繰り返しがあったそうです。
時代の流れとともに、印刷業界も「スピード」が要求され、それまで「手作り」であった版も、「PS版」という既製品がメーカーから供給され始めたことによって、工程の簡略化が進み、弊社の量産化に革新的な成果をもたらす結果となりました。
時代はなおも「効率化」、しいては「デジタル化」をも要求し、その結果「印刷データ」を直接「版」に具現化する「CTP(Computer To Plateの略)刷版」が主流になりつつあります。
弊社では従来の「フィルム刷版」と「CTP刷版」の両方を展開し、多種多様な印刷物に対応しております。
一方、弊社が現在に至るまで築き上げてきたシステムに、「24時間365日体制」というスタンスがあります。つまり、いつでもお客様と向き合うということです。弊社のお客様は大半が印刷会社ということもあり、日・祝日やたとえ夜中であろうとも、印刷物は世の中に情報を伝える大切な媒体の一つであると認識し、そこに携わる工程として必要とされるには、お客様の要望を最大限にお聞きし、満足していただく事が重要であると思います。
また、万一刷版に対するトラブルが原因で、お客様の印刷機を止める事態に陥った場合、どうすれば迅速に対応できるかを考慮しますと、到底「眠ることはできない」という結論に達しました。
弊社がお客様より信頼を得てきた要因の一つとして、この「24時間365日フル稼働」という体制があったからだと言えますし、それを支えてきた社員の、日々の努力があったからこそだと感謝しております。
「企業寿命は30年」と言われますが、弊社もその時期に、デジタル化に伴うCTP刷版部門を立ち上げました。スタートは順調のように見えましたが、程なく、従来からの刷版部門担当人材と、CTP刷版担当人材との間で派閥を生じ、「分社化して、独立採算制にすべきだ」との声も上がってきました。製版業界がすさまじい勢いでデジタル化を推進していく中で、従来の分野が衰退していくのは、確かに正当な考え方かも知れません。
しかし、今日こうしてCTP部門を立ち上げることができたのも、そもそもは従来のお客様という財産を築き上げてきたからで、目先の利益を追求するあまり、それまで培ってきた財産放棄はすべきではないという結論に達し、アナログ・デジタルの共存を全員の意図とする決心をしました。
私が社業を通じて「志」としていることは、己の役割を感じ取るということです。
つまり、自分の携わる会社や組織として一番大事なことは、みんなが同じ方向を見て、同じ意図を持ち続けるということです。それができれば、ある程度結果は見えます。
その為には、時として個々の自己主張を押し殺し、他の意見を生かす場面も必要となります。組織として一つの目標に向かう為に、主力部門のメンバーは、先頭に立って活性化させることが仕事であり、従来部門・古参メンバーは、これまで培ってきた知識・経験・道徳心を伝え、主力部門を盛り上げながら、可能な限り現状を学び、出番に備えることが仕事です。日向の部門もあれば、日陰の部門(縁の下の力持ち)もあります。それぞれの部門に携わる人々の共存意識を高めてこそ、組織としてうまく回ることができ、成長があるといっても過言ではありません。主力でないと諦めてしまえば、我々の存在の意味がなくなってしまいます。組織の為にすべきことは、自分の立ち位置・自分の役割を各々が感じ取り、経営者・従業員のへだたりなく、共存意識を持ち続けること。
それが、組織を成功に導く道であると思います。
私は週末になると、よく海釣りに出かけますが、そのための情報収集は欠かせません。
自分が釣りたい魚は、どの時間帯のどのポイントにいるのか、どんな仕掛けが良いのか等、インターネットや、知り合いの漁師さん等から情報を入手してピンポイントで攻めます。
しかし、実際は情報どおりの結果が得られないこともしばしばあります。
潮の動きが止まってしまっていた場合です。海釣りというのは、潮の動き次第で釣果に大きな影響を及ぼしますが、動きが止まっているからと言ってあきらめてしまえば、釣果に期待はできません。そんな時こそ、粘り強く誘いを掛け続けていると、潮の動き出す瞬間や変化を感じ取ることができ、魚を釣り上げることができて、何とも言えない喜びと達成感を味わうことができます。このような例も踏まえて、仕事においても「変化を感じ取る」為の行動が大事であると思われます。
この会社を継いでまだ1年と、まだまだ未熟な私ですが、その使命として、常に創業者の苦労を忘れず、企業を守り抜く「守成」の精神を持ち、共存する従業員を大切にし、未来への目標を持った会社作りを信念として邁進してまいります。