本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
JAGATが実施している経営力調査によると、印刷会社では、この10年で雇用の減少、ないし流動化が進み、平均年齢は上がったが1人当たりの人件費は減少している。
この10年間で印刷会社にどのような変化が起きたのか、JAGATが毎年実施している経営力調査から雇用に関するデータを中心に読み取ってみる。経年変化を正しくとらえるために、1999年度と2009年度の両年度に回答があった73社のデータを用いている。
図1は従業員数の変化である。2009年度の回答結果に基づき、1人から49人、50人から99人、100人から299人、300人以上という4つの層に分けている。人数規模の変化は100人未満と100人以上とではっきりと傾向が分かれた。100人未満の企業は明らかに縮小傾向であり、100人以上の企業は微増となっている。ただし、増えてはいるものの実態は正社員から非正規従業員へのシフトでまかなわれていることがわかる。
(図をクリックすると拡大されます。)
図2は売上高の変化である。こちらも100人を境に傾向が分かれており、100人未満の企業の落ち込みが大きい。(図をクリックすると拡大されます。)
図3は経常利益の変化である。どの層も大幅な落ち込みであるが、300人以上は落ち込みの程度が比較的少ない。(図をクリックすると拡大されます。)
図4は1人当り売上高である。こちらも規模相関がクリアに出ていて、規模が小さいと変化が少なく、規模が大きくなると落ち込み幅が大きくなっている。小規模の企業は売上の減少と同期したスリム化が実施されていることがわかる。ただし、これから先も同じ事が続けられるかどうかは疑問である。300人以上の企業は非正規従業員のシフトが1人当り生産性には悪影響を与えたようだ。
図5は1人当り人件費の変化である。どの層も減少しているが、他の表に比べてばらつきは小さい。
図6と図7は製造部門と営業部門の社員の平均年齢の変化である。どちらも上昇傾向となっている。(図をクリックすると拡大されます。)
特に300人以上の企業でその傾向が強い。正規従業員から非正規従業員へのシフトを進めたものの、それだけではカバーしきれていない。その結果が、図8の労働分配率に表れており、300人以上の企業は、労働分配率が57.7%から60.9%へ3.2ポイント上昇している。
結論としては、この10年で雇用数は減少ないし流動化が進み、平均年齢は上がったが1人当りの人件費は減少したということになる。日本経済の一般論として、中間層の地盤沈下が格差拡大の要因のひとつという指摘をしばしば耳にするが、それが裏付けられた結果となった。ただし、今回ご紹介したデータは、非常に限定されたサンプルであることには充分にご留意いただきたい。
(研究調査部 花房 賢)
関連ページ JAGAT BOOK STORE
【印刷産業経営力調査の概要】
概要:印刷会社170社から調査票を回収
内容:印刷会社の経営状況、戦略、設備
期間:2010年2月~3月
「JAGAT印刷産業経営動向調査2010」
体裁:A4版、104ページ
定価10,000円(税込)、JAGAT会員特別価格5,000円(税込)
発行:社団法人日本印刷技術協会 研究調査部
購入:申込書 に必要事項を記入してFAX送信ください。
【構成】
1.2009年度の印刷会社の経営動向
(1)経営動向の概況
・メディア変革期の印刷会社経営について
・印刷市場と印刷経営の考察
(2)経営動向指標
・貸借対照表、損益計算書
・生産性、収益性、安全性、人員構成等
・1人当り指標(売上高、加工高、人件費、機械装置額等)
2.印刷会社の業績と経営戦略
(1)業績と経営戦略の概況
・業績良好な印刷会社経営者の思考を探る
・業績良好な印刷会社の戦略
(2)経営戦略
・事業領域、戦略、事業分野、市場ポジション
・財務、顧客、生産、営業、マーケティング、人材と変革
3.印刷会社の設備動向
(1)設備動向の概況
・次年度の設備投資予定
・設備投資の傾向
・印刷機の保有、導入・廃棄意向、満足度
(2)設備保有状況、導入・廃棄意向、満足度
・製版・刷版
・印刷機付帯設備
・製本・後加工
(3)DTP環境
・PCの種類と台数
・アプリケーションの種類とバージョン
・データの入稿形態
4.参考データ
(1)セグメント別の経営指標
・データ:損益計算書・収益性指標・安全性指標・生産性指標等
・セグメント:2地域別(東京とその他地域)、従業員規模6段階別、業種業態6分類別、オフ輪の有無別)
(2)月次の各種前年比推移